製品の共同利用と消費者受容性: 持続可能な消費に向けての課題

KRC-2005-No.3
ディスカッションペーパー
製品の共同利用と消費者受容性: 持続可能な消費に向けての課題

持続可能な社会の実現のためには、ファクター4、10レベルの環境負荷低減が必要であるとされる。そのようなドラスティックな改善を実現するコンセプトとして、製品サービスシステム(Product service systems;PSS)に代表されるシステムイノベーションに関するコンセプトが近年注目を浴びている。本稿では、それらシステムイノベーションコンセプトによって提言されている有望な取り組みの一つとして、製品の共同利用に注目し、その環境負荷低減メカニズムおよび実際の負荷低減効果について既存の研究をもとに検証した。結果、製品の共同利用を通じて、50%以上の環境負荷低減が可能であり、持続可能な消費に向けた有望なアプローチであることが示された。一方、製品の共同利用は、「特定のニーズを満たすために必要とされる製品数量を削減できる」、「消費者側に製品を効率的に使おうとするインセンティブが働く」等、複数の環境負荷低減メカニズムを有することも明らかになったが、それら複数の環境負荷低減メカニズムによって達成されるトータルでの負荷低減効果について包括的に評価している研究は見当たらない。製品共同利用の効果を適切に理解するため、複合的な環境負荷低減効果を包括的に評価する必要があるだろう。 また、製品共同利用の普及を目指すにあたっての障害とされる消費者受容性の問題点についても、その具体的内容について検証した。結果、(1) 製品の利用に際する自由度の低下、(2) 余計な手間がかかることによる利便性の低下、(3) コスト面での不満、(4) 品質への不安・不満、そして(5) 製品を他人と利用することに対する不安、抵抗感、が製品の共同利用に伴って生じる一般的な消費者受容性の問題点であることが明らかとなった。製品の共同利用の普及には、これら消費者受容性の問題点を解決しうる対策を講じることが必要であろう。

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