武内理事長 ご挨拶

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理事長 武内 和彦
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ポストコロナ時代の持続可能な変革を目指して
-創造的復興と協調的前進-

地球環境戦略研究機関(IGES)は、この20年間の歴史の中で、持続可能な開発が直面する様々な課題に対して、タイムリーで革新的な解決策を提供するために、アジア太平洋地域の政府や様々なステークホルダーと幅広い協働を進めてきました。IGESの国際的な研究チームは、気候変動、持続可能な生産と消費、生物多様性、持続可能な都市、サステイナビリティ・ガバナンスなどのテーマに焦点をあてた提言を行っています。また、定量分析や実践的研究など、多様な手法を用いてこれらの分野の研究を行っています。

2020年の新型コロナウイルスの出現によって、IGESの活動の重要性と緊急性はより高まっています。私たちは、パンデミックによる損失に深い懸念を抱いており、その起源と意味合いが環境と密接に関連していることに留意しています。すなわち、新型コロナウイルスに代表される人獣共通感染症発生の背景として、人間活動が野生生物の領域に近づきすぎたことが指摘されています。また、世界的な感染拡大は、人とモノの急速な移動をもたらすグローバル化の負の側面を明らかにしました。
このような人間と野生生物の接近と加速するグローバル化の影響は、残念ながら新型コロナウイルスに限ったことではありません。気候変動や生物多様性の損失など、他の多くの地球環境問題も同様の理由で深刻化しています。したがって、この危機からの復興においては、持続可能な開発のための社会変革に取り組むことが、これまで以上に重要であると考えています。

この変革を実現するために、私たちIGESでは「地域循環共生圏」(CES:Circulating and Ecological Sphere)の概念を推進しています。「地域循環共生圏」は、適切な地理的スケールで資源管理を行うことの重要性を強調しています。この概念はまた、農村と都市の相乗的な繋がりに支えられる分散型社会を提案しており、そこでは異なるスケールで資源管理を行うための循環パターンが取り入れられます。さらに、この資源循環パターンを実現する取組の一環として、脱炭素社会、循環型社会、自然共生社会という3つのビジョンを統合することを目指しています。

「地域循環共生圏」は、日本の第五次環境基本計画の根幹をなすものであり、国内でSDGsをローカル化するための枠組みとして活用されています。私たちはまた、「地域循環共生圏」がアジア太平洋地域をはじめ、世界各地で地域発展のモデルとなることを期待しています。そのためにIGESは引き続き政策研究を行い、持続可能な開発への道筋を明らかにするための政策提言を分野横断的に、そして様々なステークホルダーとともに行っていきます。新型コロナウイルス後の未来を見据え、アジア太平洋地域における創造的復興と協調的前進に貢献していく所存です。

 

2020年6月
公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)
理事長 武内 和彦