武内理事長 ご挨拶

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理事長 武内 和彦
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公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)は、日本政府のイニシアチブと神奈川県の支援により1998年に設立されました。以来四半世紀にわたり、多様なステークホルダーとの協働による「知の共創」に重きを置きながら、自然との共生に基づく持続可能でレジリエントな社会への変革を先導する「チェンジ・エージェント」として、実践的な研究活動を行っています。

2021年度からは、第8期統合的戦略研究計画(ISRP8)のもと、気候変動とエネルギー、持続可能な消費と生産、生物多様性と森林、適応と水環境の4つの研究領域、ビジネス、都市、ファイナンス分野を対象とした3つのタスクフォース、そして新設したサステイナビリティ統合センターを中心に、幅広い専門分野にまたがる戦略的な政策研究を国内外の各拠点において実施し、実効性ある政策提言を積極的に発信しています。また、パリ協定の市場メカニズム推進を支援する「パリ協定6条実施パートナーシップセンター」の事務局をIGES内に設置し、2023年度より本格稼働を開始しています。

現在世界は、深刻化する気候変動、生物多様性の損失、環境汚染のトリプル・クライシス(三重の危機)、そしてロシアのウクライナ侵攻等を背景とした食料・エネルギー安全保障問題等、様々な地球規模課題に直面しています。国際社会では、パリ協定、昆明・モントリオール生物多様性枠組、持続可能な開発目標(SDGs)といった世界目標のもと、それぞれにおいて野心的な取り組みが進められているところですが、そうした中で、相互に連関する環境・社会・経済の諸課題を俯瞰的にとらえ、科学・政策・社会を結び付け、包摂的に取り組む統合的アプローチの重要性が高まっています。IGESでは、持続可能な開発に関連する世界的・地域的・国内課題を対象に各研究ユニットが協働して研究を進める共通の重点分野を設定し、統合的アプローチを重視した課題解決型研究に取り組んでいるところです。そして、気候変動対策とSDGsのシナジーの推進、脱炭素社会・資源循環型社会・自然共生社会への移行を追求する「地域循環共生圏」の具現化、顕在化するプラスチック汚染への対応など、国内外で進展する統合的アプローチの実践において積極的な関与・貢献を行っています。

2024年度はISRP8の最終年度にあたります。機動力の高い研究活動を一層進め、所期の研究成果を着実に収めるとともに、次期4年間の研究計画であるISRP9の策定を進めていきます。様々な地球規模課題に直面し、またそれらを取り巻く状況も刻々と変化する中で、環境シンクタンクとしてのコア・コンピタンスを活かしつつ、より包摂的かつ統合的な視点から、アジア太平洋地域そして世界のニーズに応える「サステナビリティ・シンクタンク」としての新たな役割について議論を深めていく所存です。

 

2024年10月
公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)
理事長 武内 和彦