2022年11月にエジプト シャルム・エル・シェイクで国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)が開催されました。
本特集ページでは、COP27に先立ち行われる気候変動に関する一連の交渉や重要イベントの情報などを中心に、COP27の焦点をIGES研究員が解説しています。IGESの関連出版物や、COP27開催期間中のサイドイベント情報も随時更新していきます。
新着情報
COP27直前ウェビナーシリーズ
国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)が2022年11にエジプト シャルム・エル・シェイクで開催されました。昨年グラスゴーで開かれたCOP26はパリ協定のルールブックを完成させ、工業化前からの気温上昇を1.5℃以内に抑える努力を追求する決意を示しました。それが2022年が「誓約」(プレッジ)から「実施」(コミットメント)に移行した年と言われる所以です。一方、気候変動政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書は、これまでに約束されている全てのNDCを足し合わせても、今世紀中の地球の気温上昇を産業革命前と比べて1.5度に抑えることには到底及ばないことを指摘しています*。予想される温室効果ガスの排出量とパリ協定の目標を達成するために2030年までに削減すべき排出量との差**、「排出ギャップ」を埋めるための具体的な行動が強く求められました。
アフリカで開催されるCOP27の議長国となったエジプトは、途上国の立場や懸念を強く反映し、その他5つの優先課題を掲げました。それらは、1)「適応」を着実に実現していくこと、2)「損失と損害」への具体的な行動を起こすこと、3)「資金」の流れを現実のものとすること、4)円滑で「公正な移行」(ジャスト・トランジション)を進めること。2022年はCOVID-19の危機に加えて、ロシアによるウクライナ侵攻という人道上の危機と広範囲に渡る環境破壊やエネルギー安全保障などの複数の課題を抱えました。仮にどのような状況下にあったとしても、5)「気候行動を絶えず前進」させていくことを強調しました。このような背景を踏まえて「COP27直前ウェビナーシリーズ」はIGESの研究員が全5回に渡って、「適応・損失と損害」、「資金」、「グローバルストックテイク」、「緩和:脱炭素化に向けた動向」そして「炭素市場」のテーマに関わる論点を整理しました。またCOP27直後には「COP27結果速報ウェビナー」を開催しました。
*IPCC AR6 WGI報告書 政策決定者向け要約(SPM)
**予想される温室効果ガスの排出量とパリ協定の目標を達成するために2030年までに削減すべき排出量との差(IPCC第6次評価報告 5つの例示的シナリオに基づく)
COP27直前ウェビナーシリーズ 第1回「COP27の焦点 適応・損失と損害」
COP27直前ウェビナーシリーズ 第2回「COP27の焦点 変わりゆく資金フロー」
COP27直前ウェビナーシリーズ 第3回「COP27の焦点 グローバル・ストックテイク(GST)とは」
COP27直前ウェビナーシリーズ 第4回「COP27の焦点 脱炭素化に向けた最新動向」
COP27直前ウェビナーシリーズ 第5回「COP27の焦点 パリ協定6条のルールメイキングの最新動向」
COP27結果速報ウェビナー
関連出版物
2022年11月、エジプト・シャルムエルシェイクで開催された気候変動枠組条約(UNFCCC)第27回締約国会議(COP27)において、第1回グローバル・ストックテイク(GST)の第2回技術的対話と交渉会合が開催された。
2022年6月に実施された第1回技術的対話ではパリ協定の実施におけるギャップや課題が多く特定された。第2回技術的対話ではこうしたギャップや課題はどのように埋められるかが議論の焦点であった。交渉会合では2023年のCOP28で実施される「成果物の検討」フェーズに向けた準備に関する議論に注目が集り、2023年に2回の追加会合を実施することが合意された。
IGESはGST成功の鍵の1つとして非政府アクターのGSTへの関与の重要性を強調してきた...
適応に関する世界全体の目標(Global Goal on Adaptation: GGA)とは、2015年に採択されたパリ協定において定められた気候変動適応に関するグローバルな目標であり、温暖化を2度未満に抑えるという目標(緩和目標)に並ぶ、パリ協定の支柱の一つである。2021年の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において併催されたパリ協定締約国会合(CMA3)では、GGAに関するさらなる協議のため、「GGAに関するグラスゴー・シャルムエルシェイク作業プログラム」(通称 GlaSS)の設置が合意された。GlaSSはその名の通り、英国・グラスゴーで開催されたCOP26とエジプト・シャルムエルシェイクで開催されるCOP27を繋ぐ2か年の作業プログラムであり、年に4回...
2021年11月に開催された国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第26回締約国会議(COP26)において、パリ協定の世界全体の進捗状況を評価する仕組みであるグローバル・ストックテイク(Global Stocktake:GST)が開始された。これを受けて2022年3月以降、UNFCCC事務局は4つの統合報告書を公開した。これらの統合報告書は、国連気候変動政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書等の様々な情報源と共に、GSTの技術的評価に情報を提供している。
本稿では4つの統合報告書のうち、『適応に関する取り組み、経験、優先事項の現状に関する統合報告書』(UNFCCC, 2022 )のポイントを解説する 。同報告書は、 (1)...
2022年6月、ドイツ・ボンで開催された国連気候変動枠条約(UNFCCC)第56回補助機関会合(SB56)において、まだ一部手探りの状態ではあったが、第1回グローバルストックテイク(GST)の第1回技術的対話が実施された。パリ協定の下で実施される各国の行動・支援は、世界全体で見て長期目標の達成に足りているのか。足りない場合、いかに各国の目標引き上げにつなげられるか。この重要な問いに答えるべく1回目の技術的対話が予定の通り実施されたことは歓迎すべきである。
第1回技術的対話を終えて、GST本来の目的である次の各国が定める目標(NDC)の更新・強化への情報提供を実現するためには、課題も明らかになった。 また、公式なGSTプロセスをきっかけとして...
IGES関連プロジェクト
観測とシミュレーションで読み解く「温室効果ガス収支」ー"最良の科学"に向けてー
Enhanced Transparency
グローバル・ストックテイク(GST)
2021年11月に英国・グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で、ついにパリ協定のルールブックが完成しました。「行動」の段階に入った2022年以降、各国は合意されたルールに則り、パリ協定の目標達成に向けてさらに野心的な行動を取ることが求められます。そこで注目されるのが、この目標の世界全体の進捗状況を評価する仕組み、「グローバル・ストックテイク(Global Stocktake: GST)」です。2021年11月から2023年11月にかけて実施される第1回GST
ネット・ゼロ:1.5℃目標に向けて
2020年10月、当時の菅義偉首相は所信表明演説の中で、2050年までのカーボンニュートラル実現を目指すと宣言しました。その後2021年に発表された「グリーン成長戦略日本」には、2050年までにカーボンニュートラルを達成するための道筋が描かれています。日本は今、ネット・ゼロの目標達成に向けて社会が円滑に移行できるよう、主要セクターによる変革的な技術構想に着手しています。アジア・エネルギー転換イニシアティブ(AETI)やアジア開発銀行のエネルギー転換メカニズムを通じて、日本はアジア新興国・途上国に