研究者の視点
補助機関会合(SB56)速報 UNFCCC事務局長 Espinosa氏の記者会見のポイントと質疑応答
補助機関会合の初日、6月6日に開催された、UNFCCC事務局長 Espinosa氏の記者会見のポイントと質疑応答をまとめました。
- COP26から世界の状況は全く変わった。1.5℃達成への道のりは未だ遠く困難である。世界のエネルギー市場の混乱、クリーンエネルギーへの投資、そして食糧危機も発生。加えて、開発途上国の経済のグリーン化に取り組むために必要な財源の一部が、他の目的に使われる危険性があることも分かっている。
- COP26、国際社会は、パリ協定実施のためのガイドラインの大枠を最終化したが、COP27でも前進を止めてはならない。緩和、適応、実施手段、資金だけでなく、能力開発、技術移転、損失と損害を含めたバランスのとれた成果を出さなくてはならない。とりわけ未解決の資金については、調達に関して特に難しい時期であることを強く認識しており、世界が団結していることを示す必要がある。
- NDCに関する5年サイクルは、1.5度の目標に向けて前進するには十分ではないという事実が認識されたことはグラスゴーの成果であった。これまでのところ、UNFCCCは、数件のNDCの更新を受け取ったのみである。各国はそれぞれのNDCの見直しを行う必要がある。
- グラスゴーでは、最も脆弱な途上国の主要な懸念事項の一つとして、適応の重要性が明確に取り上げられ、適応に関する新たな世界目標を定めるためのプロセスを開始することが決定。SB56ではその対話を開始する。サンティアゴ・ネットワークは、損失と損害の問題について途上国に技術的な助言などを提供することを目的としたネットワークで、これを完全に稼働させる必要がある。
- SB56のセッションで議論されるもう一つの重要な点は、グローバル・ストックテイク(GST)の準備。GSTは気候変動への取り組みの現状について、各国および利害関係者に詳細な情報を提供するもの。
質疑応答では、「損失と被害」への意欲を確認する質問が目立ちました。
COP27では適応、損失と被害が主な課題となるが、SBIプレナリーでは、LMDC(Like-Minded Developing Countriesが議題を提案し、先進国と途上国との間で緩和と適応が同じものとして取り扱われていないと議論された経緯があった。なぜ損失と被害は具体的な提案がなされるまで議題にならなかったのか。
エスピノーザ事務局長:締約国主導のプロセスであり、検討のために用意された暫定議題は、様々なマンデートなどを分析し、作成したものである。議題に含まれていないからと言って、無視したわけではない。最も関心の高い問題に集中的に取り組むことができるよう、会議を合理化・強化していく。
緩和と適応のバランスについて多くの途上国が懸念しているが。
エスピノーザ事務局長:時間の使い方にもよるが、提示されるべき重要な問題について、どれだけ議論を深めることができるかによる。各国が生産的な議論を行うよう心がけている。
ウクライナ戦争が交渉に影響を与えるか?
エスピノーザ事務局長:ウクライナの戦争の影響を懸念している。例えばエネルギー市場におけるオプション、食糧安全保障の危機等の問題がある。しかし非常に困難な状況でも、紛争の解決策や平和的解決策を模索し、気候変動に関するアジェンダを実現するための努力を続ける必要がある。
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