パリ協定では、2℃目標について「世界全体の平均気温の上昇を工業化以前と比べて2℃より十分低く保つ」と規定し、COP26で採択されたグラスゴー気候合意では、1.5℃目標達成に向けた「努力を追求する決意」が示されました。このパリ協定の長期目標を達成するために世界各国は、排出量の削減目標(NDC)を設定し、対策に取り組んでいますが、国や地域ごとの温室効果ガスの収支を正確に集計することは難しく、科学的・客観的な評価が求められています。特に日本を含むアジア地域では、観測データとモデルを使って速やかに評価を行う体制の構築が遅れていました。
本ウェビナーでは、世界の温室効果ガス(主にCO2、CH4、N2O)の排出量と吸収量を包括的に分析して、報告書としてとりまとめている日本のプロジェクトの取り組みを紹介しました。はじめに3人の講演者から、さまざまな観測データとモデルを組み合わせ、温室効果ガスの収支を高精度かつ速やかに把握するための最新の研究とその成果を解説しました。続いてパネルディスカッションでは、今後必要性を増す世界の温室効果ガスの排出量監視に向けた取り組みや、パリ協定の長期目標の達成度を確認する国際的な取り組み(グローバル・ストックテイク*)への貢献、などについて議論しました。
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◇講演者 伊藤昭彦
国立環境研究所 地球システム領域 物質循環モデリング・解析研究室長
陸域生態系の物質循環(特に温室効果ガス収支)、気候変動影響、生態系による気候変動緩和を専門とし、陸域生態系モデルを用いた CO2 、CH4 、N2O 収支のモデル計算、土地利用変化や気候変動シナリオを用いた影響評価や対策評価に従事。
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◇講演者 遠嶋康徳
国立環境研究所 地球システム領域 動態化学研究室長
大気中の温室効果ガスの観測が専門で、モニタリングステーションにおけるCH4やN2Oの観測を行う。また、O2の観測に基づく炭素循環研究にも従事。
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◇講演者 丹羽洋介
国立環境研究所 地球システム領域 物質循環モデリング・解析研究室 主任研究員
大気輸送モデルや逆解析システムの開発、および温室効果気体の動態、収支に関する研究を行っている。民間航空機を用いた大気観測プロジェクトCONTRAILにも従事。
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◇パネリスト 梅宮知佐
IGES 気候変動とエネルギー/生物多様性と森林 主任研究員
早稲田大学人間科学博士号取得。国立環境研究所、カセサート大学森林学部(タイ)等勤務後、2013年よりIGES勤務。パリ協定の実施と国際協力に関する研究、東南アジア諸国を中心に能力構築プログラムの実施に携わる。
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◇開会挨拶 三枝信子
国立環境研究所 地球システム領域長
専門分野:気象学(大気境界層)、陸域炭素循環モニタリング、陸域-大気相互作用
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◇モデレーター 白井知子
国立環境研究所 地球システム領域 地球環境データ統合解析推進室長/GCPつくば国際オフィス代表
東京大学理学系大学院博士課程修了後、宇宙航空研究開発機構、米カリフォルニア大学アーバイン校を経て、現職。大気化学研究のほか、地球環境データベースを運用、オープンサイエンスを推進している。
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イベントの詳細
オンライン
国立研究開発法人国立環境研究所
地球システム領域 地球環境研究センター
GCPつくば国際オフィス
Email: [email protected]
発表資料
プログラム
動画はこちらから | |||
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13:30 - 13:35
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開会挨拶
三枝信子
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国立環境研究所 地球システム領域長
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13:35-13:55 |
講演
伊藤昭彦
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国立環境研究所 地球システム領域 物質循環モデリング・解析研究室長
「温室効果ガス収支の包括的な監視に向けて」
大気中の温室効果ガス濃度は、人為的な排出だけでなく自然変動による影響を受けるため、地表での放出源や吸収源と対応させて評価することが重要です。近年では、世界全体や国地域に加え、社会経済活動の中心である都市の温室効果ガス排出量や化石燃料採掘地点からの放出量など、より空間的に詳細な評価が求められています。また二酸化炭素だけでなくメタンや一酸化二窒素など多数の温室効果ガス、さらに大気質に関係する短寿命ガスについても収支を把握する必要性が高まっています。これらのニーズに応えるため、温室効果ガス収支を包括的に監視する体制作りが世界的に喫緊の課題になっています。本講演では、私たちが環境省・環境研究総合推進費「温室効果ガス収支のマルチスケール監視とモデル高度化に関する統合的研究」で実施している、日本の研究活動の概要をご紹介します。 |
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13:55-14:15 |
講演
遠嶋康徳
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国立環境研究所 地球システム領域 動態化学研究室長
「大気観測に基づく温室効果ガスの動態解明 ~都市大気からバックグランド大気まで~」
国立環境研究所は、アジア・太平洋域における温室効果ガスの時空間分布を明らかにするために、航空機や貨物船、地上ステーション等を利用した大気観測を実施しています。最近では温室効果ガス排出量の半分以上を占める都市部からの排出を把握するための観測も開始しました。こうして得られたデータは、地域・国レベルから都市レベルでの排出量を評価するための解析システムの基礎データとなります。また、温室効果ガスの起源についての情報を与えるような同位体組成や酸素濃度等の観測も継続しています。さらに、各種濃度間の変動比を解析することで、風上の領域からの排出量の相対的な変化を推定する研究も進められています。発表では、波照間におけるCO2に対するCH4の変動比に基づく、中国からのCO2放出量の準リアルタイム推定法についても紹介します。 |
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14:15-14:35
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講演
丹羽洋介
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国立環境研究所 地球システム領域 物質循環モデリング・解析研究室 主任研究員
「大気シミュレーションを用いた温室効果ガス放出・吸収量の推定」
物質の大気中での輸送をシミュレーションする「大気輸送モデル」は、温室効果ガスの動態を解析する上で有力なツールです。国立環境研究所では、この大気輸送モデルと様々な大気観測による濃度データを使って、温室効果ガスの放出・吸収の分布や時間的な変動を推定する「逆解析」と呼ばれる解析を行っています。発表では、この逆解析の手法を簡単に解説するとともに、逆解析によって見えてくる自然界におけるCO2放出・吸収の分布や変化について、人間活動によるCO2放出と比較しながら、ご説明したいと思います。また、環境省・環境研究総合推進費「大気観測に基づくマルチスケールのGHG収支評価」のもとで行っている高解像度シミュレーションによる東京大都市圏にける大気CO2変動の解析についてもご紹介します。 |
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14:35-15:00
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パネルディスカッション
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パネリスト
梅宮知佐
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地球環境戦略研究機関 気候変動とエネルギー/生物多様性と森林領域 主任研究員
話題提供「最良の科学によるパリ協定・グローバル・ストックテイクへの貢献とは?」
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