6月にドイツ・エルマウでG7サミットが開催されました。そして10月にはインドネシア・バリ島でG20サミットが開催されます。世界のパワーバランスが絶え間なく変化する中、一部先進国で構成されるG7の果たすべき責務が改めて問われる一方、世界各国の相互依存がますます深まる国際関係を背景に、より多様な経済規模、そして複雑な対立関係を持ちながらもひとつのまとまりとなったG20の存在意義が高まっています。また、ロシアによるウクライナ侵攻に関連して、今年のサミットでは様々な討議の難航が予想されています。本特集ページでは、G7/G20のサミットまでのプロセスに様々な形で関わるIGES研究員が、G7/G20の気候・環境分野のハイライトと優先課題を特定し、深掘りします。
新着情報
2022年のG7サミットは、6月26日~28日に議長国ドイツのドイツ・エルマウで開催されました。G7、すなわちGroup of 7は、日本、アメリカ、イギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、フランスの先進7カ国に加えて欧州連合(EU)から構成され、首脳級のサミットのほかに、特定の分野に関する大臣会合を毎年開催しています。今回のG7では大臣会合については観光大臣、労働・教育大臣、外務・開発大臣、経済・財務大臣、気候・エネルギー・環境大臣、文化大臣、イノベーション・研究大臣、保健大臣、農業大臣、貿易大臣が集まる会議がそれぞれ開催されました。
気候・エネルギートラックの統合
昨年に引き続き、今回のG7の大臣会合では、気候・エネルギー・環境問題が、共通のトラック(G7 Climate and Environment Track)として扱われました。その理由として、気候変動と生物多様性の危機は密接に関連しており、協調した解決策が必要であることが強調されました。 なお、サミットの主な成果文書には、会合の経過および結果を記した「首脳コミュニケ」、一連の大臣会合の成果物には「大臣会合コミュニケ」などがあります。
高まるエンゲージメント・グループの役割
G7には、サミットと大臣会合の他にも、G7 政府から独立した様々な分野のステークホルダーが提言等をとりまとめる仕組みであるエンゲージメント・グループが存在します。T7 (Think 7:世界中のシンクタンクで構成)、Y7 (Youth 7:ユース)、W7 (Women 7:女性)、S7 (Science 7:科学者)、L7 (Labour 7:労働組合)、C7 (Civil Society 7:市民社会)、B7 (Business 7:経済団体)の7つが公式のエンゲージメント・グループとして組織されており、各グループの提言(コミュニケや声明など)は、多くの形でサミット・大臣会合のコミュニケに反映されています(G7/G20におけるエンゲージメント・グループの役割について詳しくはこちら)。気候変動の緩和や、持続可能な開発目標(SDGs)の達成等、社会にダイナミックな変化を起こす上で、政府から独立した様々な分野のエンゲージメント・グループの役割が高まっています。2022年のG7では、議長国ドイツが重視する上記7つのエンゲージメント・グループとG7との対話がありました。その他にも、例えば「都市」は、今年のG7の5つのテーマ(1. Sustainable planet, 2. Economic stability and transformation, 3. Healthy lives, 4. Investment in a better future, 5. Stronger together)に深い関連があります。近年、SDGsの目標達成や、脱炭素など、直面する課題に取り組むために「都市」が果たす重要な役割が広く認識されるようになっていることから、非公式のグループとしてU7/U20(Urban 7/Urban 20)が立ち上がり、G7/G20に対して横断的な提言を行っていこうとする動きも見られます。U7は、ドイツ政府の支援の下、イクレイ(ICLEI)―持続可能な都市と地域をめざす自治体協議会などが取りまとめを行っており、日本からは指定都市長会が参加しました。
緊急会合とエネルギー安全保障
ウクライナ情勢を受け、ビデオや対面で頻繁に開催されているG7首脳会合は、上記のいわゆる「サミット」とは異なり、議長国ドイツの呼びかけによる「緊急会合」にあたります。エネルギー安全保障が脅かされたことでガスの代替エネルギーとしての石炭・石油の需要が高まり、世界が気候変動対策目標から後退するのではないかという懸念が深まる中、3月10日にはG7臨時エネルギー大臣会合も開催されました。会合では、エネルギー安全保障の観点からエネルギー自給率を向上させることを重要課題とし、クリーンエネルギーへの移行をこれまで以上に加速する決意が示されました。また、「グラスゴー気候合意」における世界平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5度以内に抑える努力を追求することが改めて確認されるなど、国際情勢を反映したG7の機動力に注目が集まりました。
ショルツ連立政権のリーダーシップ
このような合意形成をリードするドイツのショルツ連立政権は、政権発足当初から国内の石炭火力フェーズアウトを2030年に前倒しするとともに、再生可能エネルギーを急ピッチで拡大し、イノベーションを推進することをドイツ経済の成長ドライバーと位置づけています。ウクライナ情勢を踏まえてエネルギー安全保障やエネルギー自給への要請が高まる中、今般のエネルギー危機を再生可能エネルギー中心の脱炭素エネルギーシステムへの移行への契機と位置づけ、気候変動対策への具体的な行動をさらに加速させることができるか、ドイツの手腕が注目されました。 2023年の議長国を務める日本は、その手綱を強めることはあっても弱めてはなりません。2022年は日本がドイツからリーダーシップを受け継ぐための重要な足がかりとなりました。
2022年は「国連人間環境会議」から50年
2022年はCOVID-19パンデミックに関連し多くの会議や交渉が延期されたことによって、環境問題に関わるハイレベルな交渉項目が積み上がっています。これに加えて、2022年は、ストックホルムでの国連人間環境会議から50年、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)採択から30年、国連持続可能な開発会議(リオ+20)から10年という重要な記念の年でもあります。これらの国際会議と連動して、環境ガバナンスのあり方が議論のされました。
気候クラブの動向は
ショルツ首相はG7の最優先議題として、パリ協定の実施を推進するにあたり、G7を起点に広く脱炭素への団結を呼びかけることを主眼とした「気候クラブ」の設立を表明しました。「気候クラブ」の動向は、G7に政策提言を行うエンゲージメント・グループのT7(Think 7)で提出され、ドラフト段階から公開されているポリシー・ブリーフで追うこともできます。T7は「気候と環境」や「グローバル・ヘルス」といった複数のタスクフォースで構成されており、それぞれのタスクフォースで作成されるポリシー・ブリーフは「T7コミュニケ」にまとめられ発表されます。
山場は気候・エネルギー・環境大臣会合(5月25~27日)
5月25日~27日に開催予定の気候・エネルギー・環境大臣会合は、G7プロセスにおける環境関連の大きな山場のひとつです。資源効率性に関する共通の活動の推進を目指す「ボローニャロードマップ」が2022年に終わりを迎えることもあり、その後継づくりに注目が集まりました。
2023年のG7議長国は日本
また、3月に開催された第5回国連環境総会(UNEA-5.2)では、日本、ペルー、ルワンダおよびインドの提案に基づき、プラスチック汚染対策に関する法的拘束力のある国際約束に向け、政府間交渉委員会(INC)の設立が決定されたばかりです。アジア地域は汚染のホットスポット、かつ海洋プラスチックごみの主要な流出源でもあります。2023年のG7ではアジア唯一のG7メンバー国かつ議長国を務める日本が、この分野でリードしていくことが期待されています。
2022年のG20サミットは、11月15日~16日に議長国インドネシアのバリ島で開催される予定です。G20はGroup of 20の略で、G7メンバーとEUの他、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコから構成されています。
G20と気候・環境課題
G20は、1997年のアジア通貨危機を受けて1999年にG20財務大臣・中央銀行総裁会議を開催したことをきっかけに誕生し、2008年のリーマン・ショックを契機とした経済・金融危機への対応として、財務大臣・中央銀行総裁会議が首脳級に格上げされました。近年は、世界共通の問題である気候・エネルギー、デジタル変革、テロ対策、移民・難民問題等、幅広い議題への対応のため複数の関連大臣会合が開催されています。例えば、日本は2019年にG20議長国として「持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」を開催しました。これは、G20としてエネルギー大臣と環境大臣が初めて一堂に会する機会となり、次の議長国にも引き継がれました。 G7と同様、「サミット」と呼ばれる首脳級の主な成果物には、会合の経過および結果を記した「首脳コミュニケ」、一連の大臣会合の成果文書には「大臣会合コミュニケ」などがあります。
高まるエンゲージメント・グループの役割
G20においても、各国団体の代表によって構成されるステークホルダーが提言等をとりまとめるエンゲージメント・グループが組織されています。本年のG20では、以下の10のエンゲージメント・グループが活動を行い、その成果物としてコミュニケが発表されます。Y20 (Youth 20:ユース)、W20 (Women 20:女性)、S20 (Science 20:科学者)、L20 (Labour 20:労働組合)、C20 (Civil 20:市民社会)、B20 (Business 20:経済団体)、U20(Urban 20:都市)、T20(Think 20:シンクタンク)、P20(Parliament 20:国会議長会議)、 SAI20 (Supreme Audit Institutions 20: 会計検査院)
(G7/G20におけるエンゲージメント・グループの役割について詳しくはこちら)
模索されるG20とG7の協働
G20 とG7との協働は長らく模索されてきました。2021年のG20議長国イタリアがエネルギー・気候合同大臣会合の成果として、G20 初となる「G20 エネルギー・気候共同コミュニケ」をまとめ、COP26 直前に設定されたG20 首脳級会合でCOP26への気運が醸成されたのは、COP26に向けたG20 とG7の協働の成功例といえます。( 2021 年 G20 エネルギー・気候合同大臣会合の結果についてさらに詳しく知りたい方はこちら)
2022年3月に開催されたグローバル・ソリューションズ・サミット2022は、エンゲージメント・グループのひとつであるT20(Think 20:シンクタンク)からの政策提言をもとに開催され、G7とG20の橋渡しを主眼として、G7/G20の議長国の優先事項が共有されました。T20のそれぞれのタスクフォースから提出されるポリシー・ブリーフをもとにまとめられた提言がT20コミュニケとして9月に開催されるT20本会合で公表される予定です。このT20コミュニケはG20の「首脳コミュニケ」にも何らかの形で反映されることが予想されます。
議長国インドネシアの掲げる優先事項
ASEAN唯一のG20メンバーである2022年議長国のインドネシアは、昨年のCOP26で2060年のカーボンニュートラル実現を宣言、炭素税を2022年7月頃に導入する見通しを発表するなど、脱炭素の施策を着実に進めています。Recover Together, Recover StrongerをG20のテーマに、パンデミックからの世界経済の回復のための3つの優先事項(ワクチンの公平分配をはじめとする世界の保健医療体制の構築、デジタルトランスフォーメーション、再生可能エネルギーへの転換)を掲げており、議長国インドネシアがG20の世界経済に貢献する役割と、そのフレームを活用した途上国への支援を重視していることが伺えます。これらの優先事項に関するG7とG20の間の連携の重要性は多くの機会で強調されており、G7議長国であるドイツは3月に開催された「グローバル・ソリューションズ・サミット2022」において、パンデミックの影響から未だ立ち直れない世界経済を回復させるためにG20と連携していくとともに、G7として、パンデミックの予防と制御等、世界の保健医療体制の改善において一層先駆的な役割を果たすことを表明しています。
ウクライナ侵攻とG20
G20のメンバーであるロシアは、2014年の一方的なクリミア併合に伴い、G8の枠組みから排除され、現在のG7の形となった経緯があります。今般のウクライナ情勢を受けて見られるG20からロシアを排除しようとする動きに対しては、議長国インドネシアをはじめ一部の国が慎重な姿勢を示しています。亀裂が生じつつあるG20メンバー国間の討議を議長国がどのようにまとめていくのか。これらの議論の行方は来年G7/G20の議長国をそれぞれ担う日本とインドのアジェンダ設定に大きな影響を及ぼす可能性があります。
G20 環境分野の優先課題
議長国インドネシアは、土地の劣化、生物多様性の損失、海洋ごみ、水、持続可能な消費と資源効率、持続可能な金融、海洋保護という7つの優先課題に焦点を当てています。今年は2022年12月5日からカナダ・モントリオールで開催される生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)第二部で、ポスト2020生物多様性枠組の採択が予定されています。その内容を占う上で、G20でどこまで踏み込んだ文言に合意ができるのかが注目されます。生物多様性とともに、議長国インドネシアが掲げている優先課題はそれぞれ「統合的アプローチ」の実践を要するものでこれを推し進めることが期待されています。
資源効率ー関連情報
気候、持続可能性分野
COP 26の成果に基づき、気候変動緩和・適応策の課題を強化するための議論が進行中です。特に海洋問題と気候変動の関連性、および資源の動員(資金、研究、技術、能力開発)が重要視されています。 今年のG7では議長国ドイツが優先課題とした広く「気候クラブ」について気候・エネルギー・環境大臣会合コミュニケ、外相コミュニケ、7か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明などのコミュニケでパラグラフが設けられました。G20諸国で「気候クラブ」に関してどのような議論がなされるのか。
議長国インドネシアはパンデミックからの世界経済の回復、Recover Together, Recover StrongerをG20のテーマとして掲げていますが、世界が戦争やエネルギー危機の難局に直面している今、発展段階にある国々の経済の回復や気候・環境課題は報道の中に埋もれがちです。今回のG20はG7と比較して焦点が絞りにくくなっているのも一つの特徴といえます。裏を返せば、安定を重視しながら異なる視点や発展段階にある国々の間で、コンセンサスを得るために忍耐強く議論が進めているインドネシアの姿勢を見てとることができるのではないでしょうか。
研究者の視点
![]() 小野田 真二 サステイナビリティ 統合センター リサーチマネージャー |
共同宣言が出せなかったG20 2023年G7議長国日本は共同宣言が出せなかったG20 今後の国際動向を占う意味では、ポスト2020生物多様性枠組(GBF)に関連する文言も注目されます。議長総括では、生物多様性枠組条約(CBD) COP15.2におけるGBFの最終化・採択の奨励が記載されていますが、その主要な目標として検討されている「30by30」(サーティ・バイ・サーティ)については、昨年のイタリア・ナポリでのG20環境コミュニケと全く同じ文言が使用されました。このことは、今回の交渉に進展が見られなかったことを表しており、今年12月のCBD COP15.2でも大きな対立点となる可能性があります。 2023年G7議長国日本のリーダーシップ |
![]() 粟生木 千佳 持続可能な消費と生産領域 主任研究員/副ディレクター |
G20議長総括 環境・気候大臣合同会合:資源効率性と循環経済が、気候変動・生物多様性などにかかわる負の環境影響の対処に重要であることが強調されるインドネシアで開催された環境・気候大臣合同会合のG20議長総括が公表され、資源効率性と循環経済が大きく取り上げられました。資源効率性と循環経済が気候変動・生物多様性などにかかわる負の環境影響の対処に重要であることが強調され、グローバルトピックとしての位置づけが高まりました。加えて、持続可能な消費と生産の達成(SDG12)に、資源効率性と循環性を高めることが重要であることも改めて確認されました。 その実施手段としては、各国の拡大生産者責任(EPR)制度や、その他の市場ベースの手段、自主的制度、規制、持続可能な公共調達、能力開発、技術的側面、ライフサイクル視点を考慮した新しい循環ビジネスモデルの実施等について、今後も情報を共有していくことで合意しています。なお、本年のG20資源効率性対話の際に、指標や優良事例などについて共有するページがG20資源効率性対話ポータルに開設されたことが発表されました。 プラスチック汚染に関する国際約束に関する議論では、プラスチックのライフサイクル全体を考慮した包括的なアプローチを重視し、拘束力のある手段と自発的な取り組みの両方を検討するG20としての認識が示されました。11月に開催予定の第一回政府間交渉委員会(INC)での議論でさらに深められるものと考えます。 |
![]() 田村 堅太郎 気候変動とエネルギー領域 プログラムディレクター |
来年のG7に向けて日本は今年のサミットで合意した内容をもとに、どれだけ進捗を見せられるか2021年6月のG7首脳会合では、「排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援を、2021年中に終了すること」に合意しました。それを受け、日本政府は、昨年G7で合意したことのアクションとして、バングラデシュで進めていた石炭火力発電所建設(ODAによる「マタバリ超々臨界圧石炭火力発電計画フェーズ2」)への支援計画を中止すると6月22日に発表しました。 G7での1.5°Cの達成に向けたコミットメントが単なる約束にとどまらず、具体的なアクションが重要であることを示したものになります。 2022年6月28日に終了したG7首脳級会合では、2035年までに電力部門の完全(fully)または大部分の脱炭素化達成を約束することに合意しました。これはG7気候・エネルギー・環境大臣会合で合意された「電力システムの脱炭素化については、2035年までに電力部門の大部分(predominantly)を脱炭素化するという目標」よりもさらに踏み込んだ内容となります。 本合意を受け、日本は来年のG7議長国としての手腕を発揮することが求められるとともに、実行に向けたアクションプランが必要とされます。国内の石炭火力の脱炭素化に向けて、現在策定中のクリーンエネルギー戦略をより積極的なものとし、それにあわせてエネルギー基本計画の改定を前倒し、より野心的なポジションをとることが必要です。 |
![]() 高橋 健太郎 気候変動とエネルギー領域 副ディレクター |
G7気候・エネルギー・環境大臣会合コミュニケ が公表されました5月25日~27日にG7プロセスにおける環境関連の大きな山場のひとつだった、気候・エネルギー・環境大臣会合が開催され、その成果であるコミュニケが公表されました。国内の排出削減対策が講じられていない石炭火力発電の段階的廃止を進める、という目標が改めて確認されるとともに、電力システムの脱炭素化については、2035年までに電力部門の大部分(predominantly)を脱炭素化するという目標が示されています。その他、コミュニケではCOP26で立ち上がった様々なセクターのイニシアチブに関する参照が目立ちました。これらの宣言がG7を高めるベースになったと考えられ、この傾向は今後の決定的な 10年に向けて個別産業分野に議論が落ちていくことを示しています。G7を起点に広く脱炭素への団結を呼びかけることを主眼とした「気候クラブ」については、本コミュニケの他、外相コミュニケ、7か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明などでもパラグラフが設けられ、今後の首脳会合での発表に期待します。 |
エンゲージメント・グループ
Urban7市長宣言 戦争のある世界では人々は未来を築くことはできない マルチレベル・ガバナンス(重層的な統治)への移行
G7各国の都市連合で構成され、G7に政策提言を行うことを目的として2021年に立ち上あげられたUrban7 (U7)は、5月3日に開かれた第2回Urban7市長サミットにおいて2022年Urban7市長宣言を発表しました。
宣言の中でU7が求めたのは視点の変化です。「国の政策立案者は都市を政策およびプログラムの一部と捉えている。だが、都市が持つ公益のための変革をもたらす力を活用するには、世界 の政治システムが真のマルチレベル・ガバナンスへと進化しなければならない。そうしたシステムにおいては、都市は単に施策を実行に移す行政機関ではなく、国と対等な立場で政策プログラムを策定および決定する政治レベルの存在となる。都市間の国際協力あるいは都市による国際的意思決定メカニズムへの参画を意味する都市外交は、G7および世界に存在する多国間システムが掲げる目標の実現に関して大きな可能性を秘めている。」とし、世界での持続可能な発展は平和と民主主義なくして実現し得ないというメッセージをこの市長宣言は発しました。さらに、ウクライナ戦争については、U7は「G7各国の政府と共にウクライナにおける都市インフラおよび市民社会の持続可能な再建に向けて惜しみない支援を行う用意がある。」ことを強調しました。
![]() 松下 和夫 IGESシニアフェロー |
「新しい地政学におけるG7の役割と次期G7議長国日本の課題」 Think7サミットでIGESシニアフェロー松下和夫が発表5月23日、24日にベルリンで開催された*Think7サミットには、G7各国の科学機関やシンクタンクの代表者が参加。ウクライナ戦争を踏まえた、気候・環境対策、コロナ禍からのより良い持続可能な社会への回復、グローバルヘルスなどに関する政策提言が発表されました。 公開討論会「新しい地政学におけるG7の役割」では、IGESシニアフェローで京都大学名誉教授、そしてThink20 タスクフォース3:気候変動と環境 共同議長の松下和夫が「新しい地政学におけるG7の役割と次期G7議長国日本の課題」と題して発表しました。 松下和夫は、COVID-19と気候危機が今日の世界が直面する最も緊急な脅威であること、ロシアのウクライナ侵攻は化石燃料と原子力に世界が依存する危険性を明らかにしたことを取り上げ、G7メンバー国は、世界をより持続可能で強靭、かつ包括的な社会へと変化させるために、率先して行動しなければならないことを強調しました。 *Think7はG7に政策提言を行うエンゲージメント・グループ。2023年のThink7サミットは日本がホストします。 |