ネット・ゼロ:1.5℃目標に向けて

2020年10月、当時の菅義偉首相は所信表明演説の中で、2050年までのカーボンニュートラル実現を目指すと宣言しました。その後2021年に発表された「グリーン成長戦略日本」には、2050年までにカーボンニュートラルを達成するための道筋が描かれています。日本は今、ネット・ゼロの目標達成に向けて社会が円滑に移行できるよう、主要セクターによる変革的な技術構想に着手しています。アジア・エネルギー転換イニシアティブ(AETI)やアジア開発銀行のエネルギー転換メカニズムを通じて、日本はアジア新興国・途上国における再生可能エネルギーへの転換支援やネット・ゼロへの転換のための資金援助などを行っています。

国外でも、2019年から2020年にかけ、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、中国など多くの国が、2050年ないしは60年までの温室効果ガス(GHG)あるいは二酸化炭素(CO2)の排出量正味ゼロ(ネット・ゼロ)達成を宣言しました。国際的にもネット・ゼロに注目が集まる中、こうした野心的な目標達成に向けた国家間での技術協力の余地と可能性はより大きくなっています。重要な分野で技術的な進歩を遂げている日本は、2050年までのカーボンニュートラル達成に向けて、二国間だけでなく地域間協力においても主導的な役割を果たすことが期待されます。

IGESではこうした中、2020年6月に「ネット・ゼロという世界 2050年日本」を出版し、世界に先駆けて2050年、ネット・ゼロを達成した世界を定量的・定性的に描き出すことを試みました。その後この研究での経験をもとに、対象をアジア、そして世界に広げると同時に、ネット・ゼロ目標に向けて世界を加速させるためには、いつまでにどのような政策変更が必要なのか、変革に求められるものは何かを探求しています。新興国における現実的なエネルギー移行シナリオの考案、変革的な戦略の展開、技術協力のための革新的なモデルの開発などは、カーボンニュートラル達成のための、実用的な洞察を提供できるIGESの研究分野の中核をなすものの一つです。このページでは、そうしたネット・ゼロに関するIGESの研究・活動を紹介していきます。

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