気候安全保障へのイントロダクション
これまでに経験したことがないような熱波、洪水、山火事や海面上昇など、気候変動による影響は、食料や水などをはじめとする人間の生存に不可欠な要素に大きな影響をおよぼし、すでに世界各地で現実のものとなっています。
このような地球環境の悪化を食い止めるため、持続可能な社会を実現するための脱炭素社会への移行(トランジション)が急速に進むと期待されています。この点、トランジションは、旧来の社会システムを根底から転換させることを必要とします。しかし、気候変動のリスクやそれへの対応がもたらす社会の転換もまた、適切に取り組まれなければ、エネルギーや重要鉱物の新たな資源争奪戦、移民等の受け入れ課題などによって、社会の不安定化や分断、紛争を生みかねないものです。
このような認識を背景に、安全保障という国家および国際社会の枢要な目的の達成に、気候変動は今や無視できないほどの影響をもたらしているという議論が行われるようになりました。気候変動のこうした側面に関心を寄せる領域として、「気候安全保障」が近年注目を集めています。
気候変動は、非常に多岐にわたる問題に直接・間接的な影響をもたらしており、これまで気候変動とは関連がないとされていた分野でも、その影響が議論の対象とされるようになっています。こうした流れの中、気候変動が、安全保障の概念や枠組みにどのような変化をもたらすのかについて関心が高まってきたと言えるでしょう。加えて、気候安全保障は、安全保障上の課題であるとして気候変動の政治的な重要性を高め、その対策を加速するための戦略的な概念として活用される面もあります。
IGESでは、様々な見方を有する気候安全保障について、まずは幅広く関連する議論や取り組みを分析するべく、これを気候変動と安全保障の連関を理解するための概念として捉えます。その上で、本テーマの意義や有用性を見定め、政策や多様なアクターの諸活動に資する指針を提供することを目的に、本戦略研究を実施します。
気候安全保障を学ぶ
Upcoming US elections and Implications for Climate and Industrial Policy
アジア太平洋から考える気候安全保障 -人の移動と食料安全保障のつながり-
本セッションでは、外務省の助成によるアジア太平洋気候安全保障研究プロジェクトから、アジア太平洋地域における気候安全保障のアプローチを定義するための先進的な取り組み、特に食料安全保障と人の移動、その相互関連性を焦点に、地球のトリプル・クライシスを乗り越えるために必要な統合的アプローチについて3つの発表と議論を行いました。食料安全保障に関して、久留島啓は、気候変動が食料不安を悪化させ、小規模農家に影響を与えることを指摘し、土地所有権、気候変動、食料安全保障についての統合的な取り組みの重要性を強調するとともに、コミュニティベースの土地管理を提案しました。人の移動に関して、パンカジ・クマールは、バングラデシュ沿岸部での調査から、環境移民の移住先の選好要因について議論し、所得や資源へのアクセスの違いが人々のウェルビーイングに影響していることを報告しました。続いて岡野直幸も人の移動をテーマに発表を行い、フィジーでの事例から、計画的移転に関する包括的な政策パッケージを注目すべき例として取り上げ、気候科学の政策への統合とともに、マルチレベルのガバナンスと国際協調の重要性を強調しました。
【IGESポッドキャスト】気候変動に具体的な対策を( SDGs 13): 気候変動を安全保障の視点で捉える
(※英語のみ)
アジア太平洋地域の気候安全保障:主たる論点と課題
本セッションでは、気候安全保障に関するIGESの新たな事業を紹介し、このダイナミックな政策分野において必要な介入策は何かを探ります。気候安全保障一般の課題に留まらず、そこに含まれる分野別の諸問題についても検討を加える予定です。そして、この分野の第一線で活躍する研究者や実務家を招き、以下のような論点を議論します:
今後10年間における気候安全保障の喫緊の課題は何か?
アジア太平洋地域に特有の気候安全保障上のリスクにはどのようなものがあるか?
この安全保障上の課題に取り組む上で、様々なステークホルダーはどのような役割を果たすべきか?
気候変動の影響を安全保障の観点から捉えなおす、気候安全保障へのイントロダクション
APCS国際シンポジウム
国際ワークショップ「気候危機における食料安全保障の確保」
国際シンポジウム:アジア太平洋地域における気候安全保障
活動記録
活動記録ではAPCSの研究の過程で得られた知見をタイムリーに発信していきます。
気候変動は我々の日常生活により深刻な影響を及ぼす要因となっていますが、本セミナーでは特に、気候変動が「紛争」や「平和構築」にどのように関わるかを議論しました。
COP28の結果の気候安全保障への示唆
COP28では初めて気候安全保障に直接関連する「健康/救援、復興、平和(Health/ Relief, Recovery & Peace)デー」が設置されるなど、交渉外のイニシアティブとしてこの分野の注目すべき動きがありました。では、肝心の交渉結果であるUAE合意は、気候安全保障へのどのような示唆があるでしょうか。COP28は主たる決定を「UAE合意(UAE Consensus)」とグルーピングし、気候行動のより一層の加速を目指すとしています。ここではUAE合意から特に気候安全保障と関連すると思われるポイントを、以下の3つに整理しました。
気候変動による「損失と損害(ロス&ダメージ)」に対応するための基金を含む資金ファシリティの運用方針に合意
ロス&ダメージは、気候変動の緩和・適応の努力を積み重ねてもなお残ってしまう被害について対処をすることを目的とするもので、その内容は大きく気候安全保障の取り組みと重なり合います。例えば、COP28のGST決定においても、防災・減災、人道支援、復旧・復興、強制退去(displacement)、計画移転(Planned Relocation)や移住などが、ロス&ダメージへの対処として挙げられています(-/CMA.5、パラ125、131参照)。気候安全保障では、気候変動が非常に多岐にわたる問題に直接・間接的な影響をもたらしており、社会の不安定化や分断、紛争を生みかねないことに注目しています。今後想定される損失と損害(ロス&ダメージ)基金による具体的な対応の進展は、気候安全保障の確保に向けた政策の欠かせない要素と言えます。
COP28の初日に合意されたロス&ダメージ基金の内容は、昨年のCOP27で基金と資金ファシリティの設立に合意してからの一年、移行委員会の場で重ねられた議論を踏まえたものです。早速基金への資金プレッジ(拠出公約)が相次ぎ、計7億米ドル超のプレッジが行われました。今後の基金や資金ファシリティの運用は、UNFCCC下でロス&ダメージについての技術的な議論を牽引してきたワルシャワ国際メカニズムやサンティアゴ・ネットワークにおける議論と併せて、気候安全保障の観点からも要注目と言えるでしょう。
グローバル・ストックテイク(GST)成果文書に、化石燃料からの「脱却」という文言が盛り込まれれる(‐/CMA.5, paras. 28(d))
本決定を受けて、化石燃料をゼロに近づけていくことに向けたエネルギー移行の加速が見込まれます。各国は、この文言を含むGST決定を踏まえて、2025年までに新たな削減目標を国が決定する貢献(NDC)として提出することとなっています。エネルギー移行において、再生可能エネルギーの大規模導入に必要な重要鉱物の確保などをはじめとした、エネルギー安全保障の観点を持つことは非常に重要です。エネルギー安全保障の確保に努めつつ脱炭素を進めていく、慎重かつ大胆な意思決定が各国の今後の政策形成において迫られると言えるでしょう。
パリ協定7条に示される適応の世界全体の目標(GGA)を具体化する、GGAフレームワークへの合意
気候リスクへの対応を目指す気候変動適応においても、大きな決定がなされました。GGAフレームワークへの合意によって、各国の適応努力により明確な指針が与えられることが期待されます。とりわけ、適応に関連するセクター別の目標として、水、食料、健康、生態系、インフラ・居住、貧困削減、文化遺産に関連する目標が示されたことは注目に値します(-/CMA.5、パラ9)。これは、適応と多様な分野との結びつきを示すことで統合的な気候リスク対応を促進しうるもので、気候安全保障の確保に向けた政策のあり方にも示唆的です。GST決定における越境的・連鎖的リスクの重要性の認識(-/CMA.5、パラ52)などを含め、気候リスク対応の方向性についての国際的な議論は着実に前進しており、気候安全保障分野の政策形成もこれと有機的に結びついたものである必要があると言えるでしょう。
COP28の決定には、これ以外にも、気候安全保障に示唆をもたらすものが多く含まれていると思います。APCSとしても、COP28の結果を受けた議論のさらなる展開に積極的に関与していきます。
Matters relating to the global stocktake under the Paris Agreement
Glasgow–Sharm el-Sheikh work programme on the global goal on adaptation referred to in decision 7/CMA.3
COP28における気候安全保障の進展 -世界のリーダーたちの宣言は行動へとつながるのか-
アラブ首長国連邦で行われている国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)で気候安全保障に関わる議題が取り上げられました。また、毎日異なるテーマで開催されるThematic Programでは、12月3日に「健康/救援、復興、平和(Health/ Relief, Recovery & Peace)デー」がCOPでは初めて設定されるなど、気候安全保障に国際社会の注目が集まりました。ここでは、COP28で開催された気候安全保障に関連するふたつのイベントを取り上げます。
12月1日に議長国イベントとして、ミュンヘン安全保障会議が主催したハイレベル・イベント「今こそ気候安全保障の一致団結を(Climate Security Moment: Assuming Joint Leadership)」では、気候に関連するリスクに対処するため、全世界での協力の重要性が危機感をあらわにして強調されました。ハイレベル・イベントと題されているように、スピーカーにはエストニアとアイスランドの首相や、北大西洋条約機構(NATO)の事務総長、米気候問題担当大統領特使などが名を連ねました。気候変動を、海面上昇や異常気象など、物理的影響にどう対応するかという単純化された一面的な問題として捉えるのではなく、気候変動が世界中でもたらしている新たな安全保障上の脅威やリスクについて、もっと幅広く、批判的かつ戦略的に考えるための議論が深められました。
12月3日にはThematic Programの一環として国連防災機関(UNDRR)主催のイベント「気候、救援、復興、平和に関する宣言の意義(Launch of the Climate, Relief, Recovery and Peace Declaration)」が行われました。ソマリアの副首相、ノルウェーやマーシャル諸島の大臣、緑の気候基金(Green Climate Fund)やWFP国連世界食糧計画の事務局長などが登壇し、同日に発表された「気候、救援、復興、平和に関する宣言」の意義について議論しました。同宣言は日本を含む70カ国以上、40以上の国際機関が賛同しており、紛争に直面し、気候変動に脆弱な地域に対して、適応資金を増やすための解決策のパッケージを提供しています。
このように気候安全保障に関する世界の機運は高まり、少しずつではありますが動きはじめています。気候変動による安全保障上のリスクを軽減するためには、各国がリーダーシップを取って行動につなげていくことが重要です。国家間で行われる行動は、気候にレジリエントな社会や、人道的支援や平和構築に直結すると考えます。
参考: “Climate, Relief, Recovery and Peace Declaration” https://www.cop28.com/en/cop28-declaration-on-climate-relief-recovery-a…
G20からCOP28へー気候・エネルギー・成長
インドの外交・安全保障政策やエネルギー・気候変動政策に影響力を持つ著名なシンクタンクであるオブザーバー・リサーチ・ファウンデーション(ORF)に招待され、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビエネルギーセンターにおいて11月12日に開催された「From G20 to COP28: Energy, Climate and Growth」に出席した。
この会議は、今年の20カ国・地域首脳会議(G20)ホスト国であるインドがその成功を広く内外に示し、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)の開催を控えた議長国であるUAEへとバトンを渡す意味を持っていた。
会議の冒頭、COP28の議長を務めるスルタン・ジャベル産業・先端技術大臣が登壇した。スルタン大臣はアブダビ国営石油会社(ADNOC)の最高経営責任者(CEO)でもあるため、気候変動を議論するCOPの議長就任を疑問視する声が欧米の一部に存在する。しかしスルタン大臣は同時に世界最大規模の国営再生可能エネルギー企業Masdar社の会長でもある。
UAEはエネルギー戦略2050を策定し、2050年までに排出をネットゼロにすることを表明している。さらに国家水素戦略を策定し、2050年までに年間1,500万トンの低炭素水素を製造する世界でトップの水素輸出国になることを目指している。 折しも2023年7月、岸田首相がUAEを訪問し、水素・アンモニアおよび再エネ分野のエネルギー安全保障と産業の加速化枠組み(Establishment of the Energy Security and Industry Accelerator)の設立に関する共同関心宣言(Joint declaration of interest)をムハンマド大統領との間に締結している。
Masdar社はグリーン水素を製造するパイオニアでもあり、世界規模のバリューチェーンを展開中であるため、この両社を統括するスルタン大臣のCOP28議長就任は、化石燃料からクリーンエネルギーへと転換を図るUAEがホスト国を務めるCOP28の顔として適任と言える。
会議には、グローバルサウスと呼ばれる南半球に位置するアジアやアフリカの途上国・新興国より約100名の代表者が参加した。特に後発開発途上国では、気候変動により豪雨や洪水、旱魃等の気候災害が発生し、不作による食料不足や住み慣れた土地を追われる強制移動により気候難民が発生している。こうした被害を受けやすいのは、女性や子供、老人といった社会的弱者となる。こうした途上国の窮状を訴え、先進国の支援を求める声が会議の参加者から発せられた。
COP15においては、先進国が途上国の気候変動対策のために2020年までに官民合わせて年間1,000億ドルの気候変動資金を動員するとしながら未達になっている。COP27においては、気候変動の途上国への悪影響に伴う損失と損害を支援するロス&ダメージ基金の設置が決まり、詳細はCOP28へと持ち越しとなった。
今年の11月30日から開催されるCOP28において、産油国のUAEが議長国としてリーダーシップを発揮してどこまで世界の脱炭素を進展させ、途上国支援に資金提供する先進国の合意をどこまで取り付けられるかが注目される。
スルタン・ジャベル産業・先端技術大臣の発言の要旨:
- COP28において我々は成長の機会として気候行動に努め、グローバルストックテイク(GST)を通じた野心的でバランスの取れた成果を目指す。
- 気候変動資金がグローバルサウスにとって調達可能で無理のないように解決するために開かれた対話に従事する。
- まだ果たされていない14年前の1,000億ドルの約束は、完全に実行されなければならず、適応策の資金を倍増してロス&ダメージ基金は完全に運用可能にする。
議題:https://www.orfonline.org/research/from-g20-to-cop28-energy-climate-and-growth/
気候変動対策と平和構築のための具体的な行動 紛争リスクを削減するような適応策など ベルリン気候変動安全保障会議(BCSC)
「気候安全保障活動レポート」では、APCSの研究の過程で得られた世界各国の考え方や取り組み状況に関する知見をタイムリーに発信していきます。第一回はべルリン気候安全保障会議(BCSC)の報告です。BCSCはドイツの著名なシンクタンクであるadelphiとドイツ外務省との共催で、2019年から毎年開催されている会合です。10月6日に開催された今年の会合は「気候変動対策と平和構築(Building a Climate for Peace)」と題し、世界各国から政策立案者や気候安全保障の専門家が集まりました。
今年のBCSCでは、気候変動対策と平和構築のための具体的な行動の観点がハイライトされ、気候変動対策を通じて、食料や水の安全などの紛争につながり得るリスクを軽減する取り組みやツールが紹介されました。
また、Conflict-sensitiveな気候対策(紛争リスクを削減するような適応策等)の必要性が繰り返し強調されました。気候変動が紛争リスクを高めうるという視点に加え、紛争リスクへが気候変動対策を妨げるということも重要な視点です。紛争のリスクが高い国の多くが、気候変動に対しても脆弱であることに目を向け、国際社会が一丸となってこうした紛争と気候変動の悪循環を断つことが求められています。
会合では、気候変動による影響を大きく受け、さらに様々な理由により高い紛争のリスクにさらされているアフリカ諸国の例が多く取り上げられました。アフリカでの具体的な取り組みから得られた知見を活かしつつ、そのほかの地域においても気候変動と平和構築を結び付けたアクションが必要です。同じく気候変動を背景とする災害の増加や海面上昇の脅威にさらされているアジア太平洋地域においても、気候安全保障の考えを取り入れる価値は高いといえるでしょう。
関連出版物
本研究事業について
本研究の3つのアプローチ
気候安全保障については、各国・地域における先行する考え方や取り組み、研究の蓄積があります。本事業では、これらの情報をもとに、日本に関連する示唆を考慮しながら分析および検討を行い、以下のアプローチを重視して、オリジナルな研究の推進を目指します。
科学をベースとした政策アプローチ |
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本研究では、気候変動の影響に関する科学的知見の到達点と限界を見定めつつ、必要な政策的アプローチを考えます。例えば、気候変動を一因とする人の移動(「気候難民」と呼ばれる場合もあります)は、しばしばそれらを受け入れる先進国における移民危機の問題として国家安全保障上の課題と認識されますが、実際の人の移動を見ると国内移動が圧倒的に多く、またそもそも移動することさえできない人々もいます。また、気候変動予測を盛り込んだ意思決定を行うといっても、予測における不確実性の取り扱い方や、そもそものデータの欠如など、様々な困難があります。このように、不十分かつ多様な解釈の可能性に開かれた知識を基盤としながら、どのように安全保障にかかわる意思決定を行うべきかを考えます。 |
多層的な安全保障のアプローチ |
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本研究では、伝統的な国家安全保障を含みつつも、それに留まらず、人間の安全保障、経済安全保障などの多層的な視点があることを念頭に気候安全保障について考察します。また、日本などが主導する自由で開かれたインド太平洋(FOIP)など、地政学的な視点も、検討の対象に含めます。さらに、気候リスクへの脆弱性が比較的に高い国が多く含まれる、いわゆるグローバルサウスの視点も、安全保障アプローチを考えるにあたって、今後重要性を増していくと考えています。 |
諸外国の機関とのネットワークをベースにした協働 |
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IGESはこれまでも、環境問題へのグローバルな戦略を考えるというミッションのもと、社会に大小の変革をもたらす学際的かつ実践的な研究に取り組んできました。本事業においても、多様な学術的背景を持つ国際的なチームで、諸外国における関連機関との幅広いネットワークを構築しながら、問いを育てる過程から政策的示唆の導出に至るまで、パートナーとの共創を重視して進めます。安全保障に関わる問題にこうしたアプローチを導入することの意義や限界に特に配慮しつつ、社会へのインパクトを持つ研究の実施を目指します。 |
5つのテーマ研究
本研究では、エネルギー安全保障、食料安全保障、気候変動を一因とする人の移動、気候変動適応と安全保障、海洋安全保障の5つのテーマに焦点を当てます。これらのテーマについて、フィールド調査も交えながら、課題の特質とありうる対応を明らかにしていきます。今後公開される各テーマの紹介をご覧ください。
本研究では、こうした各テーマの研究に横断的な洞察を提供し、捉えどころがないという印象を持たれることもある気候安全保障について、わかりやすい見取り図を示すような貢献をすることを目指しています。具体的には、気候安全保障を新たなアプローチとして導入することがそもそも有益か、そして導入するとすればどのようなあり方が考えられるかについて、政策決定者に示唆を提供します。気候リスクの顕在化やその対策の推進は、対立や紛争の一因となる可能性がある一方で、国際協調を推進するための契機ともなりうるものです。本研究がそうした協調的な方向に国際社会が進んでいく一助となるように取り組みます。
IGESは今後、アジア太平洋地域を主な対象に、気候安全保障について戦略的な研究を進める研究機関として、多くのパートナーと協働していきたいと考えています。ぜひ、幅広いご関心とご支援をいただければと思います。