気候変動による影響が深刻化する中で、安全保障と気候変動との連関は政策・研究の両面から注目を集めています。しかしながら、その社会的・政治的な重要性にもかかわらず、安全保障や外交の観点から気候変動を考慮することの意義は、特に政策や実践的な取り組みとの関係では、まだ十分に検討されてきていません。政策決定者には、気候変動と安全保障の複合的な関係を踏まえた効果的な政策を形成するための知見と指針が必要とされています。
このような認識の下、外務省・外交・安全保障調査研究事業費補助金によるIGESの新しい研究事業である、アジア太平洋の気候安全保障事業(Asia-Pacific Climate Security, APCS)では、日本とアジア太平洋地域の多様なセクターの政策に資する指針を提供することを目的として研究を進めています。気候変動によって引き起こされる不確実性に対応するためには、複数の安全保障アプローチをどのように活用することができるのか、また、どのように活用すべきなのかを考える必要があります。本事業では、エネルギー安全保障、食料安全保障、気候変動を一因とする人の移動、気候変動適応、海洋安全保障など、気候安全保障と相互に関連する主要なテーマ分野を扱っています。気候変動は学際的な課題であり、効果的な対応のためには、様々な分野間のつながりを認識した統合的アプローチが不可欠です。
この新たな事業をローンチする本国際シンポジウムでは、アジア太平洋地域における気候安全保障をテーマとした議論を行いました。本シンポジウムの目的は、国内外の専門家を招いて、このダイナミックな政策領域に必要とされる介入策について議論を行い、今後必要とされる研究の方向性を見定めることにあります。さらに、上記の各主要テーマにおける現在の課題について議論を促進し、テーマ間の複雑な関係性についても検討します。そのため、包括的な導入を行うプレナリーに続いて、「資源外交、気候安全保障、地政学」、「移民、食料及び人間の安全保障とリスク低減」、「海洋政策と海洋ガバナンス」という3つのテーマ別セッションを行い、これらの議論を通じて、気候変動と安全保障の関係及びあり得べき政策的な対応についての議論を深めました。
イベントの詳細
オンライン
発表資料
2024年2月8日 全体進行 勝池 優里 英語で開催、日本語同時通訳あり | |||
13:00-13:10 | 開会の言葉 | 川上 毅 IGES 事務局長 坂田 一郎 東京大学未来ビジョン研究センター 副センター長 / 総長特別参与 | |
13:10-14:10 | 全体会合: アジア太平洋における気候安全保障上のリスク | ||
基調講演 | 德地 秀士 平和・安全保障研究所 理事長 | PDF (817KB) | |
パネルディスカッション | |||
モデレーター | 岡野 直幸 IGES 適応と水環境領域 研究員 | ||
パネリスト | Tomokazu Serizawa, Climate Security Specialist, Crisis Bureau, UNDP | PDF (1.7MB) | |
Michael Mehling, Deputy Director, Center for Energy and Environmental Policy Research, Massachusetts Institute of Technology | |||
德地 秀士 平和・安全保障研究所 理事長 | |||
亀山 康子 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 サステイナブル社会デザインセンター 教授 | |||
Lukas Ruettinger, Senior Advisor, Climate Diplomacy and Security Programme, adelphi | |||
14:10-14:20 | 休憩 | ||
14:20-15:20 | テーマ別会合1: 気候緩和、資源外交、そして地政学 | ||
モデレーター | 田村 堅太郎 IGES 気候変動とエネルギー領域 プログラムディレクター | ||
Jane Nakano, Senior Fellow, Energy Security and Climate Change Program Center for Strategic & International Studies (CSIS) | |||
Kapil Narula, Senior Analyst, International cooperation, Climate Champions Team | |||
ナンダ・クマール ジャナルダナン IGES 気候変動とエネルギー領域 副ディレクター / 戦略マネージメントオフィス 地域コーディネーター(南アジア担当) | PDF (987KB) | ||
15:20-15:30 | 休憩 | ||
15:30-16:30 | テーマ別会合2: 人の移動、食料安全保障と人間の安全保障、そしてリスク軽減 | ||
モデレーター | Nazia Hussain, Assistant Professor, Institute for Future Initiatives, The University of Tokyo | ||
椎葉 渚 IGES 適応と水環境領域 研究員 | PDF (1.5MB) | ||
久留島 啓 IGES 適応と水環境領域 研究員 | PDF (1.9MB) | ||
武藤 亜子 国際協力機構 緒方貞子平和開発研究所 専任研究員 | |||
16:30-16:40 | 休憩 | ||
16:40-17:40 | 海洋政策と海洋ガバナンス | ||
モデレーター | 前川 美湖 笹川平和財団 主任研究員 | ||
秋元 一峰 笹川平和財団 海洋政策研究所 特別研究員 | PDF (324KB) | ||
Gabriel Dominguez Cespedes, Asia Correspondent / Defense Editor,Editorial, The Japan Times | PDF (964KB) | ||
Fabrizio Bozzato, Senior Research Fellow, Ocean Policy Research Institute (OPRI) - Sasakawa Peace Foundation (SPF) | PDF (3.1MB) | ||
17:40-17:50 | 休憩 | ||
17:50-19:00 | 統合セッション: 気候安全保障の議論と政策への示唆 | ||
モデレーター | 水野 理 IGES 適応と水環境領域 プログラムディレクター | ||
Uttam Sinha, Senior Fellow, Non-traditional Security Centre, Manohar Parrikar Institute for Defence Studies and Analyses | |||
関山 健 京都大学大学院総合生存学館 准教授 | |||
シヴァプラム プラバカール IGES 適応と水環境領域 上席研究員 | |||
Tobias Ide, Senior Lecturer in Politics and International Relations, Murdoch University |
録画映像
(英語のみ)