第10回 持続可能な開発に関するアジア太平洋フォーラム(APFSD 2023)特集

第10回持続可能な開発に関するアジア太平洋フォーラム(APFSD 2023)に向けて

3月27日から30日まで、「アジア太平洋地域における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)からの復興の加速と、持続可能な開発のための2030アジェンダのあらゆるレベルでの完全実施」をテーマに、第10回持続可能な開発に関するアジア太平洋フォーラム(APFSD 2023)がタイのバンコクで開催されました。APFSDは国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)が毎年開催する国際会議で、「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)」に向けて、アジア太平洋地域の持続可能な開発目標(SDGs)の取り組み状況を把握することを目的としています。今年のAPFSDでは、ゴール6「安全な水とトイレを世界中に」、ゴール7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、ゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、ゴール11「住み続けられるまちづくりを」、ゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」についての詳細なレビューと、よりターゲットを絞ったセッションが行われました。


2023年、世界は2030年のSDGs達成に向けた折り返し地点を迎えます。そのため、今回のAPFSDでは多くの議論の中で、SDGsの進捗がなぜ遅れているのかが問われました。同時に、どのように取り組みを進めるのかについても焦点が当てられました。IGESは、政策立案者と国際社会が、今回のAPFSDと7月にニューヨークで開催されるハイレベル政治フォーラム(HLPF)で、以下の3つの分野に焦点を当てるべきだと考え、APFSD初日に開催された全体会合や、サイドイベントの中でIGESのキーメッセージとして発信しました。

 

1. ゴール 11の詳細なレビューを通じた、SDGsのローカライゼーション(地域化)

ゴール6・ゴール7とともに、ゴール11の詳細なレビューが行われました。多くの地方自治体が自発的自治体レビュー(VLR)を策定し、気候変動と生物多様性の取り組みを結び付けて、ネットゼロやネイチャー・ポジティブに向けた活動を推進しています。

IGESは、APFSDで積極的に都市や地方自治体の取り組みを紹介しました。気候変動、生物多様性、その他の目標を都市がどのように統合するかをテーマにサイドイベントを共催しました。また、世界中のVLRを紹介している、IGESの「VLR Lab」から得られた知見を紹介するサイドイベントを共催しました。

 

2. ゴール6、7およびその他のSDGsに対する統合的・包摂的なアプローチの促進

ゴール6と7の取り組みを加速するためには、「地域循環共生圏」、「プラネタリー・ヘルス」、「公正な移行」など、より統合的かつ包摂的な枠組みが必要です。IGESでは多くの出版物の中で、これらの概念がゴール6、7などの重要な目標にどのように貢献できるかを検証し、その考察を紹介しています。APFSDでも、IGESのこれらの知見をサイドイベントや他の参加者との議論を通じて発信しました。

 

3. ポスト・パンデミック時代のSDGsへのアプローチ

COVID-19パンデミックは最悪期を脱したように見えます。ポスト・パンデミックの時代に入り、今回のような地球的な危機を回避し、国境を越えるような広範囲にわたる災害を抑制することに優先順位が置かれ、その結果としてSDGsへの取り組みが後退するかもしれません。また、ウクライナでの戦争が環境やSDGsに及ぼす影響も、大きなものとなるでしょう。IGESは、そのような状況でこそ、SDGsへの取り組みをより強固な意志を持って推進すべきだと考えています。

APFSD2023に向けたIGES理事長メッセージ

※本ビデオは英語のみです。日本語訳全文は以下をご覧ください。

2023年、世界は2030年のSDGs達成に向けた折り返し地点を迎えます。そして、今回のAPFSDをはじめ、SDGsに関する重要な国際プロセス・会議が予定されています。一方で、2015年の採択から8年が経過し、SDGsの進捗に対して疑問が呈されることでしょう。そこでIGESは、SDGsを進捗させる上で重要な3つのポイントを整理しました。これらは、今回のAPFSDで大きな注目を集めることになるでしょう。

1つ目は、APFSDで詳細なレビューが予定されているSDGsの1つ、ゴール11「住み続けられるまちづくりを」に関するものです。IGESはSDGsのローカライゼーション(地域化)に積極的に取り組んでおり、中でも自発的自治体レビュー(VLR)を推進しています。VLRは、地方自治体がSDGsの実現に向けて、その進捗状況を把握するための重要な手段です。また、政府や企業、NGOなどの様々な主体を繋ぎ、SDGs実施へのより統合的なアプローチに活用することも可能です。

2つ目は、同じくAPFSDで議論されるゴール6「安全な水とトイレを世界中に」とゴール7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」に関するものです。IGESは、ゴール6と7への取り組みを統合して進めるべきと考えています。例えば、食料、水、エネルギーのネクサス(連環)を理解することで、それぞれの問題に対応するだけではなく、統合的に取り組むことが可能になります。また、水とエネルギーへの統合的な取り組みにおいては、脱炭素社会、資源循環型社会、自然共生社会への移行を追求しながら農村と都市の間で資源の流れを最適化する「地域循環共生圏」(Regional-CES)の考え方にもとづき、地域レベルでの行動が重要になります。

3つ目は、地球規模の様々な危機に直面する中で、SDGsにどうアプローチするかということです。COVID-19パンデミックは最悪の事態を脱したように見えますが、ウクライナでは緊張状態が続いています。また、気候変動や生物多様性の損失にも歯止めがかかりません。こうした状況の中、SDGs達成への取り組みの優先順位を下げようと考えるリーダーもいるかもしれません。しかしIGESは、今こそ取り組みを強化すべきと考えています。グローバルガバナンスを強化するトップダウンによる取り組みだけではなく、持続可能な社会の構築に向けたボトムアップの行動を進めていく必要があります。すなわち、水やエネルギーなど諸課題への取り組み、そして意思決定プロセスの様々なレベルを統合するアプローチが求められているのです。

私たちはSDGs達成に向けた取り組みにおいて、現在、重要な折り返し地点に立っています。過去8年間で学んだことを忘れず、新たな目的意識を持って取り組みを進めなくてはなりません。そのためには、①SDGsのローカライゼーション、②ゴール6と7および関連する優先事項への統合的アプローチ、③危機の中、子供たちの未来を守るために、取り組みを決して後退させず強化する強い決意、が重要になるのです。

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過去のイベント
APFSDサイドイベント

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