プラスチック汚染と国際動向:汚染ゼロへの挑戦と循環型社会への道筋

 

国際アジェンダとしてのプラスチック汚染問題

世界で海洋プラスチック汚染をはじめとするプラスチック汚染とその対策への関心が高まり、本格的な国際アジェンダとして認識されるようになってから10年近くが経過しました。その契機となったのが、2016年に公表されたエレン・マッカーサー財団の「2050年には海中のプラスチックの重量が魚の重量を上回る」とした報告書です。その後、2019年3月の第4回国連環境総会(UNEA4)では海洋プラスチックごみ、使い捨てプラスチックに関する決議が採択されました。さらに、2019年6月に開催されたG20 持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合で日本の主導による新たな国際枠組「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」が合意され、G20大阪サミットでは2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が共有されました。

プラスチック汚染に関する政府間交渉委員会(INC)

その後も、プラスチック汚染問題は国際アジェンダとしての重要性を増し、国際的な協調を前提とした枠組みの策定に向け、今まさにその交渉が佳境を迎えています。

2022年3月の第5回国連環境総会再開セッション(UNEA5.2)で採択された決議「プラスチック汚染を終わらせる」に基づき、プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際約束が策定されることとなり、プラスチック汚染に関する政府間交渉委員会(Intergovernmental Negotiating Committee: INC)において議論が開始されました。これまで4回の会合を経て、2024年11月25日~12月1日に韓国・釜山で開催されたINC5で国際約束の内容について合意することが期待されましたが、合意には至らず、今後、再開会合を開催して交渉が継続されることとなりました。

本特集ページでは、IGESが関与するプラスチック汚染に関する国際交渉プロセスの動向をはじめ、プラスチック汚染の解決策として重要性を増す循環経済、そして関連する環境政策等についての解説や関連出版物、関連イベントを紹介していきます。

出典:J. R. Jambeck, R. Geyer, C. Wilcox, T. R. Siegler, M. Perryman, A. Andrady, R. Narayan and K. L. Law : Plastic Waste Inputs from Land into the Ocean, Science, Vol. 347, pp. 768- 771 (2015) , The New Plastics Economy: Rethinking the future of plastics (2016.Jan. World Economic Forum)

 

関連出版物

ブリーフィングノート
2022年3月に採択された国連環境総会(UNEA5.2)決議 5/14 「プラスチック汚染を終わらせる」に基づき、プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際約束が策定されることとなり、プラスチック汚染に関する政府間交渉委員会(Intergovernmental Negotiating Committee: INC)において議論が開始された。本稿では、これまで4回開催されたINCでの議論を分析し、残り数か月となったINC5までに一定の結論に至り、かつ、主要生産国や主要排出国の多くも参加する実効的な条約とするための方向性について論じていく。
キーワード:

関連イベント

過去のイベント

Breaking the Plastic Habit in ASEAN Countries: Project Phase II ‐ Expanding the Application of Behavioural Insights to Reduce Single-use Plastic Waste in Cities and Communities in Asia

Plastic is pervasive in modern life, making its reduction a complex societal challenge. Reducing plastic consumption will necessitate substantial shifts in societal behaviour, supported by increased public awareness of the environmental and health...
 
過去のイベント
ISAP PL3

ISAP2024 全体会合3「国際プラスチック条約に向けた国際交渉と今後の展望」

プラスチック汚染に対処するための国際条約制定に向けた国際交渉が現在進行しており、年内の合意が期待されています。プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第5回政府間交渉委員会(INC5)は、2024年11月25日から12月1日まで、韓国・釜山で開催されます。本条約は、プラスチック製品や利用に伴う廃棄物の回避、循環的利用の促進、環境影響の防止に向けた世界的な方向性を定めるものとなります。本セッションでは、プラスチック汚染に対処する国際協調行動のためのレジーム形成という観点から、INCにおける主要な論点について、交渉を主導・支援するキーパーソンらとともに概観します。また、アジア諸国が果たす重要な役割を鑑み、アジアにおける地域協力と行動を促進するためにIGESが果たす役割について紹介します。

関連プロジェクト

プロジェクト
Updated: 2023年8月

UNEA 特集

UNEA(United Nations Environment Assembly)は、国連環境計画(UNEP)の意思決定機関であり、193カ国すべての国連加盟国が加盟しています。ケニアのナイロビで2年に1度開催され、地球環境政策の優先順位を決定し、国際環境法を制定しています。閣僚宣言や決議を通じ、環境に関する政府間行動を促進し、国連持続可能な開発のための2030年アジェンダの実施に貢献しています。
プロジェクト
Updated: 2024年12月

循環経済と資源効率

近年、循環経済(サーキュラー・エコノミー:Circular Economy)と資源効率は、気候変動とともにG7/G20プロセスや持続可能な開発アジェンダにおける中心的課題となっています。循環経済とは、資源循環を通じた経済の在り方であり、調達、生産、消費、廃棄といった一方向の流れではなく、 リサイクル、再利用、再生産、省資源の製品開発、シェアリングなどを通じた資源循環の実現を目指す概念です。

関連リンク

関連スタッフ