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本書は、2024年2月UNEA6にて発表された、世界資源アウトルック(GRO)2024の内容をコンパクトにまとめた政策決定者向け要約(SPM:Summary for Policymakers)の日本語版。7つの地域、4つの所得国グループに及ぶ180カ国について、利用可能な最善のデータ、モデリングおよび評価を動員し、我々の資源利用の動向、影響、分配効果に関する分析をまとめるとともに、負の傾向を逆転させ、人類を持続可能な軌道へ乗せる可能性についても考察している。
資源利用量の増加が3つの地球危機(気候変動・生物多様性の喪失・汚染)の主な要因となっている。我々の経済活動のための物質資源の採取・加工は、過去50年間で3倍に増加、現在、温室効果ガス排出量の55%以上、粒子状物質(PM)による健康影響の最大40%、土地の利用に関連した生物多様性損失の90%以上の要因となっており、気候変動や生物多様性に関する国際目標の達成を危機に晒している。
一方、高所得国は低所得国と比べて一人当たり6倍の物質を消費しているなど、物質の採取量、消費量およびその影響は所得グループによって異なる。また、高所得国が輸入する資源の採取・加工が、輸出国で環境影響を引き起こしているなど、国際貿易を通じて環境影響が、高所得国から他の所得国グループに転嫁されている側面もある。
資源利用量を減じながら、経済成長、福利向上を実現し、不平等を軽減し、環境影響を減少させるには、住宅、栄養、モビリティ、エネルギーなどの資源集約的「供給システム」における、資源効率的で持続可能な消費と生産への移行が不可欠である。具体的には、①資源ガバナンスの制度化、②持続可能な資源利用へのファイナンス、③貿易を通じた持続可能な資源利用の推進、④持続可能な消費の選択肢の主流化、⑤循環型の、資源効率的かつ環境影響の低いソリューションやビジネスモデルの開発などの分野で、大胆な政策措置が求められる。
本報告書のメッセージは明白である。問題は、もはや世界規模の持続可能な資源消費と生産への転換が必要か否かではなく、いかにそれを早急に実現するかである。
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