パリ協定第6条 特集

2016年に発効したパリ協定は、様々なルールが各国合意の下で取り決められ、2020年から本格運用が開始されています。そのような中、交渉が継続され、11月開催予定の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)での合意を目指しているのが、パリ協定ルールブック最後のピース、第6条です。日本国内でも最近話題に上る炭素市場やカーボンオフセットは、この第6条と深く関係があります。

このページでは、パリ協定第6条の基本的な解説と交渉における議論、第6条に関連する用語集や情報、IGESの関連出版物を紹介していきます。

パリ協定第6条とは?

パリ協定第6条に関して、条項が取り扱っている概念として 、以下の3つに分けられます。

パリ協定第6条2項パリ協定第6条4項パリ協定第6条8項

パリ協定

原 文:https://unfccc.int/sites/default/files/english_paris_agreement.pdf
公定訳:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000197312.pdf

 

第六条

主に以下の内容を規定。

1項:締約国は、一部の締約国が、国が決定する貢献の実施に際し、緩和及び適応に関する行動を一層野心的なものにすることを可能にし、並びに持続可能な開発及び環境の保全に促進するため、任意の協力を行うことを選択することを認識する。

2項:締約国は、国際的に移転される緩和の成果を国が決定する貢献のために利用することを伴う協力的な取り組みに任意に従事する際には、持続可能な開発を促進し、並びに環境の保全及び透明性(管理におけるものを含む。)を確保するものとし、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議が採択する指針に適合する確固とした計算方法(特に二重計上の回避を確保するためのもの)を適用する。

3項:国が決定する貢献を達成するための国際的に移転される緩和の成果のこの協定に基づく利用については、任意によるものとし、参加する締約国が承認する

4項:温室効果ガスの排出に係る緩和に貢献し、及び持続可能な開発を支援する制度を、締約国が任意で利用するため、この協定により、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の権限及び指導の下で設立する。当該制度は、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議が指定する機関の監督を受けるものとし、次のことを目的とする

(a)持続可能な開発を促しつつ、温室効果ガスの排出に係る緩和を促進すること。
(b)締約国により承認された公的機関及び民間団体が温室効果ガスの排出に係る緩和に参加することを奨励し、及び促進すること。
(c)受入締約国(他の締約国が国が決定する貢献を履行するために用いることもできる排出削減量を生ずる緩和に関する活動により利益を得ることとなるもの)における排出量の水準の削減に貢献すること。
(d)世界全体の排出における総体的な緩和を行うこと。

5項:受入締約国は、4に規定する制度から生ずる排出削減量について、他の締約国が国が決定する貢献を達成したことを証明するために用いる場合には、当該受入締約国が国が決定する貢献を達成したことを証明するために用いてはならない

6項:この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、4に規定する制度に基づく活動からの収益の一部が、運営経費を支弁するために及び気候変動の悪影響を著しく受けやすい開発途上締約国の適応に係る費用の負担を支援するために用いられることを確保する。

7項:この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、第一回会合において、4に規定する制度に関する規則、方法及び手続を採択する。

8項:締約国は、持続可能な開発及び貧困の撲滅の文脈において、調整が図られかつ効果的な方法(適当な場合には、特に、緩和、適応、資金、技術移転及び能力の開発によるものを含む。)により締約国による国が決定する貢献の実施に資するための総合的及び全体的であり、並びに均衡のとれた非市場の取組であって、締約国に利用可能なものの重要性を認める。この取組は、次のことを目的とする。

(a)緩和及び適応に関する野心の向上を促すこと。
(b)公的部門及び民間部門が国が決定する貢献の実施に参加することを促進すること。
(c)手段及び関連の制度的な措置に関する調整のための機会を与えること。

9項:8に規定する非市場の取組を促進するため、この協定により、持続可能な開発のための非市場の取組に関する枠組みを定める。

パリ協定第6条の交渉の状況

3つのメカニズム構築を交渉6条のルールブックを交渉パリ協定第6条に関する取組の加速

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