第2次トランプ政権が国内気候政策を後退させるのに苦戦する理由とは:立ちはだかる障壁

ブリーフィングノート
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主なメッセージ

  • 本稿では、トランプ政権が気候変動政策を弱体化させようとすることが予想される中、その悪影響を軽減する可能性のある要因や、超党派による前向きな協力の可能性のある分野をいくつか挙げている。
  • インフレ抑制法(IRA)における気候変動対策など、法律に基づく政策を終わらせるのは非常に難しい。議会において共和党は多数派を占めているが、それが非常に僅差であるため、電気自動車(EV)や蓄電池工場への支援停止など、多くの具体的な反気候変動対策が可決されることはないだろう。
  • バイデン大統領の規制の多くは覆すことが難しく、法廷闘争に耐えられるように設計されている。規制の変更には複雑で長い手続きを踏む必要があり、トランプ政権の新たな規制は、準備と予算を整えた州司法長官やNGOの弁護団によって法廷で争われ、その結果、成立するまでにかなりの遅れが生じるだろう。
  • トランプ大統領の特徴的な経済政策、特に関税、移民の制限や強制送還は、サプライチェーンを混乱させ、経済成長を減速させる可能性がある。それによってCOVID-19パンデミックの影響と同様に、温室効果ガス(GHG)排出量を実際に削減する可能性がある。皮肉なことに、トランプ政権のこうした政策は、持続可能なエネルギー移行への投資を通じてではなく、人々の生活を犠牲にして、GHG削減に意図せず大きく貢献する可能性がある。
  • トランプ大統領が反気候変動政策と化石燃料推進策を実施に移しても、化石燃料の生産量は必ずしも増加しないだろう。なぜなら、市場は増産に不利な状況であるからである。米国の石油・ガス生産量はすでに記録的な高水準にあり、最近行われたアラスカの石油・ガス採掘リース権売却にはどの企業も入札しなかった。
  • 再生可能エネルギーの拡大は、たとえ財政的インセンティブが縮小されたとしても、大きく減速することはないだろう。技術的進歩と規模の経済により、再生可能エネルギーのコストは着実に下がるが、一方で化石燃料の生産コストは上昇する。再生可能エネルギーは、人工知能(AI)やその他の需要増に対応する電力供給を増やす最も手っ取り早い方法である。
  • 多くの州や都市は、キャップ・アンド・トレードプログラムを含む気候変動政策を個別にも集団的にも実施し続けるだろう。 そしてトランプ政権がそれらを弱体化させることは難しいだろう。
  • カリフォルニア州やマサチューセッツ州を含むいくつかの主要州は、トランプ政権の政策に対抗するため、州司法長官事務所の人員と予算を増やしている。
  • GHG排出量の削減は投入コストを減らし、効率性を高める一方で、気候変動の影響は事業に悪影響を及ぼすため、多くの米国企業は気候変動対策に依然として取り組んでいる。投資家やその他ステークホルダーの多くは、企業が気候変動対策の野心度を高め続けることを期待している。
  • 炭素除去、産業の脱炭素化、地熱エネルギー、炭素関税などに関して、限定的ではあるが、超党派の前向きな協力が可能かもしれない。
     
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