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• デジタル・トランスフォーメーション(DX)とも呼ばれる高度なデジタル化の進展は、情報通信技術(ICT)によるエネルギー消費効率の改善、交通需要の回避や産業構造の変化によってエネルギー消費量を減少させる側面だけでなく、データセンター(DC)や情報通信機器の製造など情報通信部門における直接的なエネルギー消費量の増加や関連経済活動の拡大を促すことでエネルギー消費量を増加させる側面もある。1.5℃目標に日本がより大きな貢献を果たすための道筋を描いた「IGES 1.5℃ロードマップ」では、それらの複合的な効果をできるだけ踏まえた結果、デジタル化などの社会経済構造の変化 によるエネルギーの減少を戦略的に取り入れることが1.5℃目標の実現に重要な役割を果たすことを示した。
• 一方で、とりわけデジタル化に伴うDCにおける電力消費量増加量の推計値は、想定によって大きく変化する。そのため、推計値の振れ幅(上限値と下限値の双方)を認識したうえで対応できる手段を検討することが重要である。なお、過去にも度々ICTの普及による電力消費量の増大が懸念されてきたが、データ処理量の爆発的な増加を上回るペースでのICT分野の技術発展により、DCの電力消費量は予想されたほど増加してこなかった事実もある。電力消費量の増加の懸念だけを強調するのではなく、DCにおける電力消費量の増加分を、クリーンな電源による電力供給が可能な水準にどのようにして抑えていけるか 、という論点を中心に政策の場で議論することが建設的であろう。
• 本稿では、世界及び日本のDCにおける将来の電力消費量について過去に推計を行った文献に関してレビューを行い、それらの推計における試算前提を整理した。次に、DCの電力消費量削減に向けた様々な対策や技術開発の動向と照らし合わせ、再エネによる電力供給が可能な水準にDCの電力消費量の増加を抑えることで、1.5℃目標の実現を追求していけるかを考察した。特に、日本においては国内DCの老朽化が進んでいることから、これらの設備更新時には、エネルギー効率の高い機器やエネルギー管理手法、エネルギー消費性能に優れたデータ処理に関わるアルゴリズムの採用を促すといったデータセンターのエネルギー消費性能を向上させることが重要と考えられる。
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