国が2030年の野心的な目標を達成し、遅くとも2050年にはネット・ゼロの目標を達成するためには、自治体・都市を含む非政府主体と国の協力関係を強化することが重要です。
英国・グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では、世界平均気温の上昇を1.5度未満に抑えるために各国が削減努力を加速するよう求める「グラスゴー気候合意」が採択されました。パリ協定、およびグラスゴー気候合意は、気候変動対策において、自治体・都市を含む非国家主体が果たす重要な役割を認識しており、地域の気候変動対策の枠組みを定め、実施する役割を担う地方政府の役割は、ネット・ゼロ・エミッションの目標達成のために、これまで以上に重視されるようになりました。2022年1月末現在、1115の都市・地域が、非国家主体のグローバルキャンペーンであるRace to Zero (レース・トゥー・ゼロ)に登録しています。
日本では、2022年1月31日現在、534の地方自治体が2050年までに排出量を実質ゼロにすることを表明しており、これは全人口の約89%を占める地域にあたります。日本政府は、2021年6月に地方自治体と協力して「地域脱炭素ロードマップ」を策定し、2030年度までに100以上の「脱炭素先進地域」を創出するなどの、ゼロカーボン目標達成のための重点施策を示しています。
ゼロカーボンを達成するためには、社会システムを変革する大胆な施策が必要です。例えば、未曾有の新型コロナウィルスのパンデミックからの回復にあたり、持続不可能な社会経済システムの軌道修正、汚染物質の削減、新たな雇用機会の創出などの大規模な変革がこれにあたります。このように、ゼロカーボンを追求し、地域レベルでの意欲を高め、都市の回復力を強化する上で、地方政府が重要な役割を果たすことに鑑み、日本国環境省は、米国国務省気候変動問題担当大統領特使事務所(SPEC)と共同で、COP26のジャパン・パビリオンでのサイドイベントで両者が立ち上げを発表した「日米グローバル地方ゼロカーボン促進イニシアチブ」の一環として、2022年3月に脱炭素都市国際フォーラムを開催することとしました。
本フォーラムでは以下の3点を実施しました。
- 1. 地方政府のリーダーを招き、先進的な地域の気候政策と行動を共有
- 2. ゼロカーボン都市開発に向けた、都市間協力の事例を共有
- 3. 国と地方政府が協力して気候変動に取り組む方法を議論
イベントの詳細
オンライン(YouTubeライブ配信を提供)
公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
[email protected]
発表資料
1日目:3月9日(水)
10:00-12:15(日本時間)/ 20:00-22:15(米国東部標準時)
10:00 | 開会 | 岸田 文雄 内閣総理大臣(ビデオメッセージ) | |
開会挨拶 | 山口 壯 環境大臣 PDF (190KB) | ||
Rahm Emanuel 駐日米国大使 | |||
10:15 | フレーミング・セッション | 脱炭素社会実現に向けた都市の役割 Patricia Espinosa UNFCCC事務局長(ビデオメッセージ) |
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10:25 | セッション1:ゼロカーボンシティへの道筋
2050年までに炭素排出量を実質ゼロにするという目標を達成するためには、地域での気候変動対策が不可欠であり、より多くの地方政府が意欲を高め、積極的な政策立案と実施を行うことが重要となります。本セッションでは、ゼロカーボン目標に向けた地方政府のリーダーたちのコミットメントと教訓を共有することを目的としています。 |
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Bruce Harrell シアトル市長 (米国) | |||
秋元 克広 札幌市長(日本) PDF (2.5MB) | |||
Marcos Penido サンパウロ州インフラ・環境担当次官(ブラジル)(ビデオメッセージ) | |||
Cameron Dick クイーンズランド州財務大臣兼貿易投資大臣(オーストラリア)(ビデオメッセージ) | |||
Katja Dörner ボン市長(ドイツ)(ビデオメッセージ) | |||
モデレーター | Angie Fyfe ICLEI USA事務局長 | ||
11:05 | 休憩 | ||
11:10 | セッション2:国、都市等のマルチレベル協力
異なるアクター(主体)の協力は、ゼロカーボンを達成の鍵です。COP26において、1.5℃目標を達成するために、国と地方政府の協力が必要であることが強調されました。このようなマルチレベルの協力には、国と地方の気候政策の調整や、国による地方自治体への適切な支援が含まれます。COP26では、また、都市間連携を通じた学び合いが野心度をあげ、アクションを加速していく主たる原動力になることが報告されました。本セッションでは、国と地方政府との協力を促進し、地方政府の行動を支援するための国のアクションと、ゼロカーボン社会のための都市間連携についてのスナップショットを提供します。 |
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小野 洋 日本国環境省 地球環境局長 PDF (598KB) | |||
Vera Rodenhoff ドイツ連邦環境・自然保護・原子力安全・消費者保護省 IK総局 OECD及びOECD加盟国環境・エネルギー・都市国際協力部長 (ビデオメッセージ) | |||
五十嵐 美保子 川崎市環境局地球環境推進室担当課長、川崎市経済労働局国際経済推進室 松田 朝太郎(日本) PDF (2.4MB) | |||
Victoria Simon ロサンゼルス市長付サスティナブルオフィス運営局長(米国) PDF (1.6MB) | |||
Sudarmanto Budi Nugroho IGES都市タスクフォース リサーチマネージャー (Irvan Pulunganジャカルタ都気候変動・沿岸開発知事付特別特使(インドネシア)代理 PDF(1.6MB) | |||
モデレーター | 内田東吾 ICLEI日本 事務局長 | ||
12:10 | 閉会挨拶 | 正田 寛 日本国環境省地球環境審議官 | |
12:15 | 閉会 |
2日目:3月10日(木)
21:00-23:15(日本時間)/ 7:00-9:15(米国東部標準時)
21:00 | 開会挨拶 |
正田 寛 日本国環境省地球環境審議官 |
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Jane Nishida 米国環境保護庁(USEPA)国際・部族問題局 主席副長官補 |
日本国環境省は、日本の地方自治体が環境・気候問題に取り組む中で蓄積してきたノウハウや技術、製品、システムを提供することで、途上国の都市の脱炭素化に貢献することを目的に、2013年から都市間連携を推進しています。このような協力関係は、パートナー都市の野心と気候政策・行動の向上に貢献しています。本セッションでは、ゼロカーボン目標に向けた都市間連携の効果と成果を紹介します。
- 橋本 徹 横浜市国際局 局長(日本) PDF (749KB)
- Hà Thị Kim Nguyễn ダナン市天然資源環境局・環境保全局 次長(ベトナム) PDF (2.9MB)
- Wiruch Tanchanapradit バンコク都環境局大気騒音管理部 部長(タイ) PDF (2.7MB)
- 茶木 聖一 富山市環境部 次長(日本) PDF (1.7B)
- Claudio Castro Salas レンカ区長(チリ) PDF (2.2MB)
- María González マンチェスター合同行政機構国際局 局長(英国) PDF(893KB)
モデレーター:藤野 純一IGESサステイナビリティ統合センター プログラムディレクター
このセッションで建物や交通分野などにおける都市のアクションの動向と課題について、国際機関や都市ネットワーク、研究機関などの視点から紹介するとともに、関連する支援プログラムについて共有します。
- Missy Stults ミシガン州アナーバー市サステイナビリティおよびイノベーション担当室 室長(米国)
- 菅原 祐雄 札幌市環境局環境都市推進部 部長(日本) PDF (1.8MB)
- Faela Sufa 交通開発政策研究所東南アジア担当部長(ITDP)PDF (2.5MB)
- Antonette Anaban バギオ市都市計画・開発コーディネーター補(フィリピン)PDF (2.2MB)
- Nicolas E. Dei Castelli アジア開発銀行東アジア局持続的インフラ課 シニア・トランスポート・スペシャリスト(ADB)
モデレーター:Emani Kumar ICLEI世界事務局次長 兼 イクレイ南アジア事務局長 PDF (1.9MB)
22:00 | 休憩 |
COP26では、気候変動に適応するための行動の重要性も強調されました。気候変動に対処するためには、自然や公平性の問題を考慮する必要があります。本セッションでは、地域レベルでの適応策を強化するために、国と地方自治体の連携や、都市間の連携がどのように促進されるのかを紹介します。
- Patricia Gómez マイアミ・デイド郡レジリエンス担当室シニアプログラムマネージャー(米国) PDF (4.1MB)
- 安西 司有 千葉市環境局環境保全部 部長(日本) PDF (2.2MB)
- Sameer Deshkar ビスブバラヤ国立工科大学(VNIT) 建築・計画学科 助教授 PDF (2.7MB)
- Joe Recalex Alingasa サンカルロス市災害対策室(フィリピン) PDF (1.8MB)
- Marc Van den Neste 旭硝子・ヨーロッパ最高技術責任者、Greenwin cluster会長(ビデオメッセージ)
モデレーター: Kavita Sinha 緑の気候基金(GCF) 民間セクターファシリティ部 臨時代理部長
脱炭素コミュニティを実現するためには、都市計画に気候への配慮を盛り込む必要があります。本セッションでは、脱炭素街区構想、リノベーションを加速させる政策など、団地・街区レベルでのゼロカーボンに向けた地方政府や地域のステークホルダーの具体的なアクションを紹介します。
- Chin Siong Ho マレーシア工科大学(UTM)教授
- Arpamart Chanmeka タイ東部経済回廊(Eastern Economic Corridor)事務局スマートシティ局副局長 PDF (1.6MB)
- Leo Christensen ロラン市議会議員(デンマーク) PDF (368KB)
- 堂屋敷 誠 石狩市役所企画経済部企業連携推進課 課長(日本) PDF (2.6MB)
- Joanna Masic 世界銀行主任都市専門家
モデレーター:松本 忠OECD都市・都市政策および持続可能な開発課長
22:55 | 休憩 | ||
23:00 | クロージング・プレナリー | ||
23:10 | 閉会挨拶 | Reed Schuler ジョン・ケリー米気候問題担当大統領特使シニアアドバイザー | |
正田 寛 日本国環境省地球環境審議官 | |||
23:15 | 閉会 |