IPBESの成果

IPBESがこれまでに発表した評価報告書、評価報告書の政策決定者向け要約(SPM)※やワークショップ報告書と、その日本語解説などの関連資料を以下に掲載しています。日本語資料の非営利目的の転載は可です。ぜひともご活用ください。

※日本を対象に含まない、アジア・オセアニア地域以外の地域評価報告書を除く

侵略的外来種とその管理に関するテーマ別評価報告書(2023)

侵略的外来種が地球上の自然と人々にどのような影響を与えるかを探るものであり、地球上のすべての地域における外来種と侵略的外来種の現状と傾向を分析し、それらの種が国内外から導入され、拡散する主な経路と要因を特定しています。また、侵略的外来種の様々な規模や状況における管理活動について、有効性を評価した上で、それらの予防、早期発見、効果的な防除、そしてその影響の軽減のための主要な対応策と政策オプションの概要を示しています。

侵略的外来種とその管理に関するテーマ別評価(以下、侵略的外来種評価と記載)の実施に際して、IGESは、環境省の支援のもと、技術支援機関をホストしてきました。IPBES総会第10回会合(IPBES-10、2023年8-9月)において同評価の政策決定者向け要約(Summary for Policymakers: SPM)が承認され(SPMの解説についてはこちらをご参照ください)、報告書の各章も受理されました。

この評価報告書の政策決定者向け要約(SPM)の和訳、SPMのポイントをスライド1枚にまとめた概要資料、ならびにスライド8枚にまとめた解説資料を以下に公開しています。また、SPM原文(英語)および各章のレイアウト版(英語)へのリンクも掲載しています。

報告書全体は1000ページに迫る大部ですが、これまでに世界中で実施された侵略的外来種に関する評価の中で最も包括的なもので、侵略的外来種の問題の現状、ならびに問題解決に役立つツールや選択肢等を詳しく紹介していますので、ぜひともご参照ください。

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野生種の持続可能な利用に関するテーマ別評価報告書(2022)

野生種の持続可能な利用を幅広い観点から捉えて、野生種の利用の持続可能性を高めるさまざまなアプローチを評価しています。また、野生種の持続可能な利用の保障と促進に向けた課題と機会を特定し、野生種の持続不可能または違法な利用の削減・根絶および野生種の保全強化に資する方法、対策、能力などを示しています。

この評価報告書の政策決定者向け要約(SPM)の和訳、SPMのポイントをスライド1枚にまとめた概要資料、ならびにスライド8枚にまとめた解説資料を以下に公開しています。

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自然の多様な価値と価値評価の方法論に関する評価報告書(2022)

人と自然とが調和する、経済・社会・環境のバランスの取れた持続可能な開発の実現には、自然の持つ多様な価値や持続可能性に整合する価値観に対する理解および政策への反映が欠かせません。この評価報告書は、さまざまな世界観と価値の関係の理解、価値の類型化、価値の評価手法とその特性、さらには社会変革を実現するための自然の多様な価値を考慮した意思決定や制度、それらを政策立案に反映するための方法論を提供しています。

この評価報告書の政策決定者向け要約(SPM)のキーメッセージの和訳、SPMのポイントをスライド1枚にまとめた概要資料、ならびにスライド8枚にまとめた解説資料を以下に公開しています。

生物多様性と気候変動に関するIPBES-IPCC合同ワークショップ報告書(2021)

生物多様性と気候変動に関するIPBES-IPCC合同ワークショップ報告書(2021)

IPBESとIPCCが共同で設置した科学運営委員会が選出した生物多様性と気候変動の専門家50人が参加するオンラインワークショップが2020年12月に開催され、生物多様性保全と気候変動緩和・適応の間のシナジーとトレードオフについて検討しました。このワークショップレポートが、その科学的根拠を提供する科学的成果(Scientific Outcome)とともに2021年6月に発表されました。報告書は、地球温暖化対策と生物多様性保全の相互依存性を指摘し、気候および生物多様性と人間社会を一体のシステムとして扱う統合的な対策の必要性を強調しています。

生物多様性とパンデミックに関するワークショップ報告書(2020)

生物多様性とパンデミックに関するワークショップ報告書(2020)

昨今の新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な感染拡大とその世界各地への深刻な影響に鑑みて、生物多様性とパンデミックとの関係についてのIPBESワークショップが2020年7月に行われ、その議論の内容をまとめた報告書が2020年10月に発表されました。報告書は、これまでのほぼすべてのパンデミックと新興感染症の約70%は動物に由来し、年間1兆ドル以上の経済的損失をもたらしていることや、森林伐採や作物・家畜生産等の人間活動が感染症の引き金となっていることなどを指摘しています。

地球規模評価報告書(2019)

地球規模評価報告書(2019)

4つの地域評価報告書(2018年発表)も踏まえ、世界の生物多様性及び自然の寄与(NCP)の現状と動向を評価し、それに基づく政策オプションを提示しています。自然の寄与の世界的な劣化および、過去50年にわたる自然の変化を引き起こす直接的・間接的要因の加速を明らかにし、生物多様性の保全および持続可能な利用に関する国際目標の達成のためには、経済・社会・政治・科学技術における横断的な社会変革(transformative change)が必要であることを指摘しています。

アジア・オセアニア地域評価報告書(2018)

アジア・オセアニア地域評価報告書(2018)

アジア・オセアニア地域を対象として、生物多様性と生態系サービスの重要性や現状と変化、および直面する様々な課題、さらに政策や対策について評価しています。地域全体としては保護地域や森林面積が拡大している一方で、重要な生態系の劣化や分断化が進行していることが報告され、政策オプションとして主要セクターへの生物多様性の主流化や民間との連携、国際協力などが提示されました。本アセスメントの技術支援機関は、環境省の支援のもとIGESに設置されたほか、報告書の作成には25名の日本人専門家が参画しました。

土地劣化と再生に関するテーマ別評価報告書(2018)

土地劣化と再生に関するテーマ別評価報告書(2018)

全世界の陸地の至る所で土地劣化が進んでいて、32億人への悪影響および世界の年間総生産の約10%の経済的損失をもたらしていることを報告しています。複雑に絡み合うさまざまな原因、とりわけ先進国をはじめとする大量消費およびこれに伴う耕作地・放牧地の急拡大に加えて、持続可能でない管理が大きく影響していると指摘しています。

シナリオとモデルの方法論に関する評価報告書(2016)

シナリオとモデルの方法論に関する評価報告書(2016)

生物多様性、人間と自然の関係、生活の質に関する意思決定において、シナリオとモデルを利用するための優良事例の「ツールキット」を提示しています。この報告書は、政府や民間企業、市民社会が、生息地の喪失、侵略的外来種の影響、気候変動などの環境変化を予測し、各種政策オプションが生物多様性・生態系サービスに与えうる影響を理解するために有用な内容です。

花粉媒介者、花粉媒介及び食料生産に関するテーマ別評価報告書(2016)

花粉媒介者、花粉媒介及び食料生産に関するテーマ別評価報告書(2016)

IPBESが最初に発表した評価報告書で、自然生態系の維持と食料生産に動物の花粉媒介者が果たす役割に焦点を当てています。地球上の野生顕花植物の90%、世界の主要作物の75%以上、全作物生産量の35%は動物による花粉媒介に依存していて、こうした花粉媒介者が食料生産に果たす役割の経済価値が2,350~5,770米ドルに相当するとの試算結果を示しています。さらに、野生の花粉媒介者となる生物、特に脊椎動物の種数が減少傾向にあることや、この背景にある土地利用変化、農業の集約化やネオニコチノイド系殺虫剤の影響に言及し、こうした脅威を克服していくための戦略的な対応策を提案しています。