解説シリーズ
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第1弾:どうしてSDGsって重要なの?

SDGsの国際議論が活発化する中、SDGsってなぜ重要なの?どうやって実施していくの?という声に答えるべく、SDGsの策定が決まった2012年のリオ+20以降、研究に携わってきた森所長に解説いただきました。

SDGsの策定に至る背景を教えてください。なぜSDGsに注目すべきなのでしょうか。

森:

2012年のリオ+20の具体的な成果として南米グループ(コロンビア・グアテマラ・ペルー)が発案し合意に至ったものである。これについて否定的な見解もあるが、私は、これまで持続可能な開発の定義が広範かつ目標が定量的でなかったため、一体何に向かってどう進めていけばよいのかという明確な指針がなかったところ、今回のようにSDGsという目標が定まれば一定程度の方向性が示せるため重要だと思う。

例えば、国際条約の制定後に、具体的な数値目標を各国が定めるなどの動きがあるオゾン層や気候変動に関連する国際環境条約も最初はこれらの課題の重要性について共通認識を図る原則合意に基づくものだった。ただし、それだけでは対策は進まず、結局モントリオール議定書や京都議定書の策定により、具体的かつ定量的な目標と実効性を担保できるものができて進展したと理解している。従って、SDGsも持続可能な開発に向けて具体的な対策を進めるための重要なステップになりうると考えている。

SDGsは自主目標であり、国際環境条約のように法的拘束力がありませんが、この違いについてはいかがでしょうか。

森:

必ずしも法的拘束力のある国際条約だけが有効であるとは限らない。最近では、従来のやり方を変えて、来年COP21で各国がCO2削減の自主目標を出すように、各国がそれぞれの事情に応じて行動できる仕組みを作るようになってきている。法的拘束力がないMDGsやSDGs目標についても、どういう目標や仕組みを作ったら実効性が担保できるのか、また、前進させることができるのかを考えていく必要があると思う。様々なステークホルダーがやる気を出せるような目標を作ることが重要だと思う。

imageMDGsの時も、目標によって達成度が高いものとそうでないものとある。例えば、教育目標はUNESCOやUNICEF、保健目標はGAVIなどの主導で啓発活動が行われ資金動員やステークホルダーの活動も活発になったことにより実施も進んだと言われている。他方、環境目標の達成度が低いとされているのはこうした主導機関がなく、当時環境問題があまり認識されていなかったため、議論する場も作れなかったことなどが原因であるかもしれない。貧困、飢餓、健康などの社会問題は、目に見える緊急性のある問題であるため認識もしやすく行動にも繋がるが、気候変動等の環境問題は目に見えないため認識しにくく行動しても結果が見えにくい。歯痛などの急性の疾患には素早く対応するが、高血圧のような慢性病に対しては、そうでもない。個人の行動と良く似ているのかもしれない。

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では、SDGsを実施する時にどういった課題があり、実施を促進するためにはどうすれば良いと思いますか。

森:

国ごとの優先課題が異なるため、各国で一度それぞれの課題を整理し、実施体制をしっかり構築すること、また、持続可能な開発に関る行動指針やシナリオを国の機関に限らず地方自治体や企業などあらゆる組織・制度の中に規範として埋めていくことが重要だと思う。こうすることにより、徐々にでも、人の考え方が変わり、長期的な行動につながり、着実に前に進むことができると思う。特に、資本主義システムの中では、国の政策に頼らずとも、製品やサービスがより便利なもの、有用なものへと進歩、変化するので、持続可能な開発に向けた方向性を明らかにすることで世の中はより良い方向に変わっていく可能性はある。日本国内でも、エコカーの普及や省エネ活動の活発化など、社会全体が気候変動対策を意識するようになってきている。

特にSDGsでは、目標を市民が自分のこととして感じることができれば、個人のアクションが増えると思う。環境面では、個人の行動に繋げるという意味で、持続可能な消費と生産(SCP)に注目している。これに関しては、国際的に10年枠組が合意され、企業や個人、コミュニティのライフスタイルに関る活動も考えられるため、着実に展開していく可能性がある。例えば、エネルギー目標でも「世界規模でエネルギー由来のCO2排出量を半減させる」という目標は個人から見ると何をしたら良いのか分からないが、家庭でのエネルギー供給源を再生可能なエネルギーに選択していくような目標が認定され、そのようなオプションが提供されれば、少しずつでも再生可能なエネルギーを選ぶ人が増えていくと思う。

最後に、2015年のSDGs策定に向けて、日本のステークホルダーに期待することなどがあれば教えてください。

森:

日本の基本的なライフスタイルは世界に誇れるものがあると思う。米国などと比較すると、住居面積は小さく、食料摂取量も少ない。また、公共交通機関を多く使い、もったいない思想など、日々の生活スタイルからの環境への負荷は比較的少ない。私たちが、知恵をもっと世界に発信していくことが新しい動きを世界に広げていくきっかけになれるのではないかと考えている。

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