気候安全保障と日本の開発援助のあり方

イシューブリーフ
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地球規模で進む気候変動は、気象の激甚化、そして洪水や干ばつなどの自然災害を世界各地で引き起こし、新たな人道危機を生み出している。すでに社会基盤が脆弱化している紛争下の人々にとって、気候変動はリスクを増幅させる要因にもなっている。気候変動の負の影響が人類の発展や国際政治・経済の安定を阻むこの気候危機とも呼ばれる状況は、「気候安全保障」という視点から捉えることができる。人間の安全保障を掲げて開発援助に注力する日本にとって、気候危機下の人道支援の現状を分析・評価することは、今後の外交政策を展望する上で必須の課題だと言えるだろう。

気候安全保障は「日本国内に直接生じる安全保障リスク」と「日本国外で生じる安全保障リスクから波及して生じる日本の安全保障リスク」の2つに分類できる。本稿では、後者の波及リスクに焦点を当て、激動する人道支援の現場で生じている課題に効果的に対応することで、日本へのリスクを最小化し、また、同分野における日本の貢献・国際協調を最大化する方策を探る。そのために、まず、日本がODAを拠出している人道支援機関の現状を把握し、これらの機関が直面する困難を理解した上で、それらを踏まえた政策提言を試みる。

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