ネイチャーポジティブの測り方:昆明・モントリオール生物多様性枠組の進捗評価と科学-政策連携

2024年6月20日(木) 16:00 – 17:00
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「2030年までに生物多様性の減少を止め、反転させて、自然を回復軌道に導くための緊急行動をとる」、いわゆる「ネイチャーポジティブ」の実現をミッションに掲げた昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)が、2022年12月の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)において採択されてからはや1年半近くが経過し、その実践が本格化しています。今年10月のCOP16では、今後2030年にこのミッションが達成されたのか、それに向けて中間年の進捗はどうなのかを測るため指標群(GBFモニタリング枠組)がアップデートされる予定です。

生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES、「イプベス」と読む)は、GBFの策定と実践を含むCBDの決定を科学的見地から支えていますが、IGESとゼンケンベルク自然研究協会(SGN、ドイツ)はともに、IPBES技術支援機関の設置や関連研究の実施等を通して、IPBESに深く関わっています。IGESとSGNが共催する今回のイベントでは、GBFモニタリング枠組による「ネイチャーポジティブ」の測り方、グローバルレビュープロセスによるその推進に向けた検討状況とともに、一連のプロセスにおけるIPBESの役割を解説しました。また、GBFの実践においてIGESとSGNが重視する研究テーマやその展望についてご紹介しました。

イベントの詳細

日時
2024年6月20日(木) 16:00 – 17:00
会場

オンライン

共催
Senckenberg Society for Nature Research(SGN)
使用言語
日本語、一部英語・逐次通訳
コンタクト

セミナー事務局 [email protected]

発表資料

 昆明・モントリオール生物多様性枠組の実施・モニタリングにおける科学-政策連携
高橋 康夫 IGES 生物多様性と森林領域 リサーチマネージャー
PDF (3.4MB)
 サプライチェーンのネイチャーポジティブ化に向けた論点
山ノ下 麻木乃 IGES 生物多様性と森林領域 ジョイントディレクター
PDF (1.6MB)
 ビジネスと生物多様性フットプリント
アルケ・ヴォスカンプ ゼンケンベルク生物多様性・気候研究所 サイエンティスト
ガブリエラ・ラベスキーニ ゼンケンベルク生物多様性・気候研究所 博士研究員
PDF (2.2MB)
 人工知能時代における国際的な科学-政策連携と国別報告
アイディン・ニアミール SGNゼンケンベルク国際科学政策ユニット サイエンティスト・ユニット長
マラル・ダドヴァル ゲーテ大学フランクフルト校およびゼンケンベルク生物多様性・気候研究所 サイエンスコーディネーター
PDF (1.4MB)
 今後の展望
高橋 康夫/アイディン・ニアミール
 

Q&A

ウェビナー中のご質問、ありがとうございました。時間内に回答できなかったご質問がありましたので、回答を追加して以下に掲載しました。

 ご質問IGES回答
1弊社は木材調達をしております。商社などは介さずに直接サプライヤーからFSC認証付きの木材を仕入れておりますが、そもそもFSC認証=生物多様性配慮をしている、とみなしていいのか疑問視しております。この点につきましてご意見頂けますでしょうか。ご質問どうもありがとうございます。そのような疑問をお持ちになっている視点というのは素晴らしいと思いました。FSC認証は、そのような疑問点を持つことができるほどの情報が提供されます。もし、原産国しかわからないものであれば、そのような疑問も感じなかったであろうと想像します。そのため、御社の求める多様性配慮に到達するためには、認証に加えた情報収集が必要ということになると思います。しかし、認証が提供する情報によってゼロからの情報収集スタートではない状況になっていると考えます。 最近、認証とTNFDのセミナーがたくさん開催されているようなので、ぜひそちらもご覧になっていただきたいです。
2CDPフォレストでは「ハイリスク国」として東南アジア各国を含む設定がされております。CDP対応上はハイリスク国の割合を下げるという流れになるのですが、その点では現地農家が置き去りになるとも思っております。そのようなESG情報開示の風潮と現地農家の保護についてどのように思われますか?CDPの詳細に精通しておりませんので、適切にお答えできるか自信がありませんが、ご参考までに私が考えたことを共有させていただきます。ハイリスク国の割合を下げることは、ご指摘の通り現地農家が置き去りにされる可能性もありますし、調達先の変更で現在ローリスクの国に需要が集中するとその地域に悪影響を起こす可能性も想像できます。評価する側としては難しいことかもしれませんが、ハイリスク国の調達でいかにリスクを回避・低減しているかの評価が適切になされることが必要とされるということなのかもしれません。一方で、デューデリジェンスのプロセスでハイリスク国とローリスク国で要求される情報に差異をつけるということは実際に行われている場合があると認識しております。
32050年の【完全回復】とは、どのよう状態でしょうか?申し訳ありません、私は「完全」についてお答えできません。ご参考までですが、Nature Positive Initiativeでは、"ネイチャーポジティブの定義として、2030年には2020年よりも多くの自然を確保し、その後も回復を続けるということである。"と記しています。
https://www.naturepositive.org/
4すべてのサプライチェーンの標準化が難しいのは想像できますが、義務化はもっと難しいのでしょうか。義務化という点が、サプライチェーンをサステイナブル・ネイチャーポジティブにすることについてであれば、EUでは、限定された農産物を対象にした規制や(EUDR)、人権・環境デューディリジェンスの義務化(CSDDD)などが始まっています。
5弊社は電機電子業界ですが、生物多様性とトレードオフの関係を配慮しなければならない、具体的な事例があればご教示ください。電気電子業界について詳しく存じ上げず、仮説上の回答になりますが、製造過程でレアメタルを含む金属を使用する場合には、その原料採掘や加工過程での生息地改変や汚染等が挙げられます。この論文は、レアメタルではありませんが、ボーキサイト、銅、金、鉄、鉛、マグネシウム、ニッケル、銀、亜鉛の採掘に伴う生物多様性影響ポテンシャルを評価しています。また、「電機・電子業界における生物多様性の保全にかかわる行動指針」等も刊行されていますので、ご参照下さい。
6ドラッグストアです。商材の多くは仕入れとなります。一般的にどう向き合えばよいでしょうか。多様な商材の全てを網羅する評価は非常に難しいと思います。従って、多様な商材の中でも生物多様性への影響が指摘されているものについて、優先順位をつけて、生物多様性影響の低減・回避努力をしているものを優先調達することが考えられます。例えばティッシュペーパー等の紙類では、再生紙やFSC認証紙、食品では認証コーヒーや認証カカオ豆を用いたチョコレート等が挙げられます。以上はあくまで例示ですが、TNFD提案に沿った評価の実施等により、事業と自然との接点を明確にして、その接点に注目した対策の検討ができるのではないかと思います。