- 日本語
北九州市は、市内の温室効果ガス(GHG)排出削減目標を掲げるだけでなく、アジア地域への貢献目標も掲げている。それは、アジア地域で、2050年までに、2013年度の市内のGHG排出量の150%以上に相当する排出量の削減を目指す(以下、「150%削減目標」という。)というものである。環境国際協力に長年取り組んできた「世界の環境首都」として、気候変動対策のようなグローバルイシューにも市内外で積極的に貢献していく姿勢を見せている。
本稿は、北九州市の「150%削減目標」の意義や、その目標達成に向けたアプローチを確認した上で、政策効果の「見える化」の方法論について検討を行った。「150%削減目標」が数値目標であることを踏まえ、北九州市の取り組みのうちGHG排出削減量を把握できそうなものを特定し、評価方法を比較した。さらに、当該目標の趣旨に鑑み、この取り組みから期待される経済的・社会的効果についても整理を行った。
GHG排出削減量の評価方法については、取り組みの内容によって評価方法が異なり、精度の差や重複計上(ダブルカウント)の可能性があるなどを理由に、評価結果を単純に積算する形で目標達成に向けた進捗状況を確認することには疑問が残った。その一方で、このGHG排出削減量は、北九州市内のGHG排出削減目標の達成に利用(オフセット)するために用いられるわけではないことを踏まえ、自主的な目標の進捗管理や政策効果の「見える化」のためには、自らが決めた方法論を用いて評価を行い、政策を押し進めることの方が重要と考えられた。
さらに、この「150%削減目標」の下で展開される取り組みから得られる多面的な協力効果は、GHG排出削減量だけでは測れないため、経済的・社会的な側面からも評価されることが望ましい。しかしながら、このような観点からの評価方法についてはこれまで検討がされてきていないため、今後の検討が必要である。
北九州市の環境国際協力・環境国際ビジネスの効果に関する情報をより分かりやすく発信していくためにも、「150%削減目標」の捉え方については、これからも継続的な検討が必要である。
- 日本語