地域脱炭素セミナー「あおもりモデル」の展望:青森県による基礎自治体の脱炭素施策検討に対する伴走支援の取組

ディスカッションペーパー
あおもりモデルレポート
  • 日本の地方自治体は、気候変動対策を推進する上で大きな課題に直面しており、特に「他の部局の協力が得られないこと」が最大の障壁の一つであることが指摘されている。これに加えて、予算、人材、知見の不足も深刻な問題である。これらの障壁の根源的な要因は、気候変動対策が地域にもたらすコベネフィットに関するコミュニケーションがこれまで十分に行われてこなかったこと、および頻繁な人事異動の中で担当職員を支援する体制が不在であったことに起因する可能性がある。その結果、自治体の首長や職員が気候変動対策を地域全体の戦略や「自分事」として捉えられず、まちづくりとシナジーを生み出す長期的な戦略が不在となり、必要なリソースの確保や戦略的な配分が行えない状況が生じていたと考えられる。
  • 青森県は、こうした根源的な課題を克服するアプローチとして、令和7年度に「脱炭素でつながる地域づくりアクセラレーション事業」を実施した。この施策は、地域脱炭素の実現に向けた市町村セミナーの開催と、「あおもり地域脱炭素支援チーム」による伴走支援を両輪とするものである。特に、首長・幹部向けのトップセミナーでは、宮下宗一郎知事自らが、脱炭素は環境問題だけでなく経済成長戦略であると強調し、脱炭素に対するマインドセットの切り替えを促した。並行して、希望する3市町(平川市、むつ市、横浜町)を対象に、幅広い部署や職層の職員が参加する連続型のセミナーを実施した。この職員向けセミナーは、職員があらゆる分野で脱炭素をまちづくりと結びつけて施策検討ができるようになることを目標とした。グループワークでは、各市町の計画を学習させた生成AIが作成した重点施策案や、部署ごとの所管業務と脱炭素の関係性を提案した資料が配布され、議論の活性化と他部署職員の「自分事化」が図られた。なお、本事業に先立って、県の担当者は全ての市町村へ個別にヒアリングを実施し、各市町村の課題状況に応じた支援策を検討したうえで施策を立案していた。
  • この支援施策の結果、市町向けセミナーを実施した全ての市町で参加者の考え方に変化が見られ、職員の7割以上が「非常に関心が高まった」と回答するなど、高い満足度と意識の変化が確認された。また、セミナー終了後には、次年度の計画策定に必要な財源確保に向けた具体的な行動につながっていた。この「あおもりモデル」は、①「地域のための脱炭素」という一貫したナラティブ、②「一緒に悩んでくれる伴走者」としての県チーム、③トップダウンとボトムアップの噛み合わせ、④分野横断での長期的戦略の検討、⑤具体的なアクションを出口に、という相互に関連する5つの要素が一体的に設計されており、基礎自治体が直面する脱炭素ガバナンスの複雑な課題を克服するための有効な手段を提示したモデルである。
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