日本‐IIASA国際ワークショップ

アジアにおけるクリーンな大気と持続可能な未来のための統合的行動を推進するための日本とIIASAの協働

2023年11月17日(金)11:15-12:45(UTC+8)

地球社会は、気候変動、生物多様性の損失、汚染という相互に影響し合う3つの危機に直面しており、持続可能な社会への移行には、これらの問題に統合的に取り組む必要があります。そのため、アジアで人間の健康と持続可能な未来に対する大きな脅威となっている大気汚染に効果的な対策を、気候変動と生物多様性の損失に取り組むための行動と協調して実施する必要があります。このような複雑な課題に対する費用対効果の高い解決策の策定を支援するため、環境省(MOEJ)と国際応用システム分析研究所(IIASA)は、アジアに焦点を当て、大気汚染、気候変動、その他のSDGsに対応する政策立案を支援するための共同研究プロジェクトを実施してきました。本プロジェクトは、持続可能な開発の課題に効果的に取り組むための科学的根拠に基づく政策立案を促進するための科学―政策インターフェースの強化に貢献することが期待されています。

本ワークショップは、本プロジェクトの成果報告を行うとともに、最先端のモデリング分析によってどのように科学‐政策インターフェースを強化するか、さらに、アジアにおける大気汚染、気候変動、生物多様性の損失に焦点を当てた持続可能な開発政策の策定をどのように支援できるかを伝えることを目的として開催されました。なお、本ワークショップは2023年11月15日~17日にアジア開発銀行(フィリピン、マニラ)で開催されたBetter Air Quality Conference (BAQ) 2023におけるセッションの一つとして開催されました。

第1部では、環境省‐IIASA共同プロジェクト「アジアにおける都市と農村の大気汚染の相互作用、協調行動による多面的な開発効果」について発表が行われ、東アジアおよび東南アジア地域全体、あるいは日本、中国、ベトナム、タイの50万人以上の大都市におけるPM2.5発生源解析結果が報告されるとともに、2050年までに現行の政策を想定したシナリオと、2050年までに大気汚染対策および気候変動対策がとられたシナリオで、発生源解析結果がどのように変わるかについての報告がありました。またASEANを対象とした分析結果として、大気汚染対策・気候変動対策が様々なSGDsの改善につながることが報告されました。そして、このような統合的な取り組みを効果的に実施するうえで、地方での取り組み、大都市部での取り組み、国レベルでの取り組み、あるいは国際協調による取り組みのそれぞれが重要となり、その効果的な実施のために都市‐地方の連携、あるいは国際的な連携が重要であることが示されました。

第2部では、環境省‐IIASA共同プロジェクト「SDGsに適合した国・地域の脱炭素戦略に関するアジア・イニシアティブ」についての発表が行われ、東アジア、東南アジアおよび南アジア地域において2050年を対象年として現行政策シナリオ、大気汚染対策シナリオ、気候変動対策シナリオ、大気汚染対策と気候変動対策の統合シナリオに対し、PM2.5による健康被害を推計した結果が報告され、大気汚染対策と気候変動対策の統合的取り組みがPM2.5による健康被害を大きく軽減することが示されました。また、生物多様性保全と気候緩和対策の相互連関に関するモデル分析結果から、気候緩和策で生じうる生態系への負の影響を、食生活変化による土地利用改変の抑制によって軽減できる可能性が示されました。

第3部の総括セッションでは、これらの研究成果によって効果的な政策立案をどのように支援できるかについて議論が行われました。この中で、インドでは深刻な大気汚染に対し数多くの研究や投資がなされており、情報は多いものの研究情報やデータへのアクセスは不十分であり、容易にアクセスできる研究プールの整備が重要であるといった指摘がありました。また、効果的な政策立案につなげるうえで、分析結果をダウンスケールし地域の課題に合致させることの重要性や、シナリオ分析などを活用し地域特性を考慮した政策影響の可視化が重要であることが指摘されました。

 

イベントの詳細

日時
2023年11月17日(金)11:15-12:45(UTC+8)
会場

アジア開発銀行(フィリピン、マニラ)

使用言語
英語

発表資料

アジアにおけるクリーンな大気と持続可能な未来のための統合的行動を推進するための日本とIIASAの協働 
司会進行: 小嶋 公史 IGES関西研究センター プログラムディレクター  
11:15-11:20開会挨拶亀井 雄 環境省 水・大気環境局総務課国際協力推進室 室長  
11:20-11:55 第1部  アジアにおける都市と農村の大気汚染の相互作用、協調行動による多面的な開発効果  
 アジアにおける都市-農村間の大気汚染に関する相互作用  
Zbigniew Klimont国際応用システム分析研究所(IIASA)エネルギー・気候・環境プログラム 汚染管理研究グループ 研究グループリーダー  
ASEANのためのクリーンな空気と気候の解決策  
Eric Zusman IGES サステイナビリティ統合センター リサーチリーダー  
林 美穂IGES IGES-UNEP 環境技術連携センター プログラムマネージャー  
ディスカッション  
畠山 史郎アジア大気汚染研究センター(ACAP) 所長 【オンライン登壇】  
11:55-12:30第2部 SDGsに適合した国・地域の脱炭素戦略に関するアジア・イニシアティブ 
 アジアにおける環境・気候政策の協調による大気の質と健康のコベネフィット  
Zbigniew Klimont国際応用システム分析研究所(IIASA)  
Daniel HookeIIASAエネルギー・気候・環境プログラム 研究員 【オンライン登壇】  
気候変動と生物多様性のための地球規模の土地に関する経路  
藤森 真一郎京都大学大学院工学研究科 教授 【録画】  
ディスカッション  
甲斐沼 美紀子IGES研究顧問  
12:30-12:40第3部: 総括セッション 
 Mohammad Arifインド住宅都市省国立都市問題研究所 環境セーフガード専門家    
Everlyn Gayle Tamayo-Araneta クリーン・エア・アジア(CAA) 大気質・気候変動科学担当   
12:40-12:45Closing RemarksZbigniew Klimont国際応用システム分析研究所(IIASA)  
Leila Niamirエネルギー・気候・環境プログラム 変革的制度・社会ソリューション研究グループ/持続可能なサービスシステム研究グループ 研究員 【オンライン登壇】  

写真