7⽉2⽇、地球環境戦略研究機関関⻄研究センター(IGES-KRC、以下IGES)および⽇本環境技術協会(JETA)は、環境省およ び在インド⽇本国⼤使館がインドの⼤気質改善に⽇本の技術を活⽤すべく推進する「ブルー・スカイ協⼒」の協⼒を得て、イン ドにおける⼤気や⽔質などの環境およびビジネス関連の課題に関する理解の共有と、さらなる交流促進を⽬的とした情報交換会 を開催しました。JETAの海外部会の計測機器メーカーおよび同機器のメンテナンス企業などを中⼼に約50名が参加しました。
IGESおよびJETAは、本年2⽉にも環境省の⽀援のもと、「インド国の⽕⼒発電所及びその他のエネルギー多消費産業からの排 煙監視に関する⽇本の技術」と題して、インドの⼤気汚染の主因のひとつである⽕⼒発電所などの排煙規制および管理状況の把 握・測定・評価技術導⼊の重要性に関する理解促進のためのワークショップを現地関係者向けに開催しており、今回の情報交換 会はそのフォローアップとして開催しました。
イベントサマリー
開会挨拶では、JETAはポストコロナの円滑な事業展開に向けた会員企業の情報交換の機会として、IGESからは会員企業の事業展開状況および課題に関する生の声を共有し今後の取り組みを検討する機会として、開催の背景や期待を述べました。
第1部「インドでの大気・水質環境における課題」では、環境省、在インド日本国大使館、IGESから、インドの大気・水質環境に関する現状および課題を発表しました。
環境省の杉本留三氏から、日本の環境省とインドの環境・森林・気候変動省が2018年10月に署名した環境協力の覚書に基づき、廃棄物、大気、水質、気候変動等の分野でインドに協力していくこと、特にインド政府が大気汚染分野での協力に最も関心を示していること、また、インドを含むパートナー国に対する環境インフラ全般のトータルソリューションを提供する官民連携のプラットフォーム(環境インフラ海外展開プラットフォーム)が紹介されました。また、大気汚染の原因に関し、インドでは農業由来の汚染が深刻であるといった日本との相違、インド政府の日本のトイレ・浄化槽への関心、並びに廃棄物分野での協力の可能性についても言及がありました。
在インド日本国大使館の吉田勇輝氏から、インドの大気汚染レベルは低い時でも日本の警報レベルと同等の状況であること、2020年4月に欧州並みの排出基準を導入したものの状況はあまり改善されていないこと等が紹介されました。また、水質では、下水道普及率(30%)や水道使用可能率(17%)が低い状況であること、適切なモニタリングや罰則の厳格な実施がされていないこと、下水処理施設建設計画への地元住民の反対等の課題が共有されました。
IGESは、インドの水質管理の状況および課題について、下水の汚染状況および処理状況、深刻な水質汚染状況、水質関連の基本的な法・規制、ならびに水質モニタリングシステムなどについて上・下水道の両面から紹介しました。
第2部「計測企業からのインド環境ビジネスの現況~進出状況、実績、課題~」では、JETA会員の計測機器メーカーおよび同機器のメンテナンス企業の6社が、インドでの事業展開状況および課題について発表しました。主な課題として、専門人材および能力不足、市場価格の安さ、海外企業の現地化および価格競争の激化、インドの規制動向や迅速な市場状況の把握の困難さ、過剰なドキュメント要求などが共有されました。
第3部の質疑応答・意見交換では、第1・2部の発表を踏まえて、ポストコロナに向け、インドでの環境技術分野の取り組みにおける今後のアプローチの方向性、および環境省への事業支援に関する要望などが活発に議論され、環境規制に関する条例制定などに積極的な州政府ないし主要都市との連携が不可欠であることが共有されました。それには、都市間連携のほか、日本・インド技術マ ッチメイキング・プラットフォーム(JITMAP)やICLEI(持続可能な都市と地域をめざす自治体協議会)などと連携してのアプローチも有効であるとの見解も出されました。さらに、排出規制強化や総合規格認証に向けた支援として、環境省からインド政府への働きかけが必要であるとの問題提起もありました。こうした議論を受け、JETAは、継続的な情報交換会の実施を提案しました。
なお、IGESは環境省および兵庫県の支援のもと、インドのエネルギー資源研究所(TERI)と共同で、主に日本からインドへの環境技術移転促進を目的としたJITMAPを運営しています。詳細は、[email protected] にお問い合わせください。
イベントの詳細
オンライン
IGES関西研究センター
E-mail: [email protected]
発表資料
オープニング挨拶 | |||
13:00-13:15 | 日本環境技術協会(JETA)海外部会長 小林 剛士 | ||
(公財)IGES関西研究センター フェロー 前田 利蔵 | |||
第1部「インドでの大気・水質環境における課題」 | |||
13:15-13:55 | 環境省地球環境局国際連携課 国際協力・環境インフラ戦略室長 杉本 留三 | PDF (3.1MB) | |
在インド日本国大使館 二等書記官 吉田 勇輝 | |||
(公財)IGES関西研究センター プログラムマネージャー 濵口 俊典 | PDF (2.2MB) | ||
第2部「計測企業からのインド環境ビジネスの現況-進出状況、実績、課題~」 | |||
13:55-14:30 | (株)堀場製作所・(株)堀場アドバンステクノ 小田倉 良平 | PDF (2.9MB) | |
(株)島津製作所 望月 俊介 | |||
東亜ディーケーケー(株) 山﨑 剛義 | |||
横河電機(株) 清水 利江子 | |||
(株)日吉 黄 俊卿 | |||
ムラタ計測器サービス(株) 石塚 敏久 | |||
質疑応答・意見交換 | |||
14:30-15:00 | 司会・進行 | (公財)IGES関西研究センター フェロー 前田 利蔵 |
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