動き出したSDGsとビジネス ~日本企業の取組み現場から~

ポリシーレポート
cover image

「20年後の日本人は日々の生活ができているか」
「20年後に世界の環境は破綻していないか」
この問いかけに答えられる社会を築くため、企業の経済活動や社会基盤=自治体や政府などが認識するべき”具体的な行動目標“が「SDGs=持続可能な開発目標」です。
 
一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)および公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」について、日本企業の取組み実態に関する最新の調査結果をとりまとめた「動き出したSDGsとビジネス~日本企業の取組み現場から~」を公表しました。
SDGsは国連で採択され、日本政府も昨年12月に実施指針が公表されており、世界各国において、企業がビジネスとしてどのようにこの目標達成に取り組んでいくか大いに関心が高まっています。この調査は、日本企業のべ250社へのアンケートや聞き取り等*をもとに、現状での取組みに関する実態をはじめて明らかにしたものです。
* GCNJ会員233企業/団体対象のアンケート調査及び企業・外部関係者ヒアリング(計17社・団体)を実施


最新報告書では、主に以下の結果と提言を記載しています。

<アンケート調査結果> (p. 9-21)
- SDGsの認知度は、CSR担当者間で2015年(61%)→2016年(84%)に増えているが、経営層への認知度は2016年(28%)に留まっている。中間管理職の認知度が4%~5%に低迷していることは、企業のCSR担当者が最初に直面する壁が中間管理層であるため、大きな課題と言える。(p.10)
- GCNJ会員と非会員におけるSDGsの認知度には差があり、前者の79%はSDGsを「持続可能性に関わる企業価値の向上において重要」(非会員は58%)、57%は「新たなビジネスチャンス」(非会員は26%)として捉えている(p.10)。
- SDGsを推進する上での重要なパートナーとして、2015年は行政(62%)が多かったが、2016年は行政以外にも顧客(34%→60%)、取引先(37%→56%)の割合が急増。実際に取組みが始まっている。(p.16)
- SDGsに取組む場合の課題として、主に、「社内の理解度が低い」(66%)、「社内の展開方法が未確定」(66%)、「社会的に認知度が高まっていない」(63%)、「定量的な指標など評価方法がわからない」(52%)、が挙げられた。(p. 19)

先進事例の記載企業:LIXIL、SOMPOホールディングス、オムロン、サラヤ、住友化学、伊藤忠商事、イオン、伊藤園、味の素、シスメックス、武田薬品など

<日本企業のSDGsへの取組みの全体像・推進に向けたメッセージ>(p.22-24)
- 日本企業によるSDGsへの取組みの多くは、SDGsを既存の企業理念や事業との整合性を判断するためのチェックリスト、いわゆる「棚卸し」として活用している。
- 一部の日本企業はSDGsを本業化(企業の理念、経営戦略への取り込みを図る)して動き出しつつあり、SDGsを契機に企業価値の向上を目指すという特徴がある。
- 「SDGsは将来のあるべき社会像を示し、人々の様々なニーズを反映している。SDGsに取組むことは人々のニーズに向き合うことで、ビジネスチャンスに繋がっていく」ということを担当者が経営層や中間管理職に伝えていくことが重要である。
- ステーホルダーが企業によるSDGsの取組みを推進しやすくなるための環境を作っていくことも重要。例えば、行政(国・自治体)は先導役となってビジョンの積極的な発信をしてくべき(国の明確なビジョンと実施体制の構築、国内各地の情報格差への対応、企業の取組み事例を集約・発信していくプラットフォームの設置など)。

日付: