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RECOVERING BETTER:
A GREEN, EQUITABLE AND RESILIENT RECOVERY FROM CORONAVIRUS
本紙は、より持続可能で公正かつ回復⼒のある経済構築への取り組みを⽀援する⾮営利組織Economic Change Unit (ECU) の Michael Jacobs、Laurie Laybourn-Langton、Michael Davies、そして独⽴系気候変動シンクタンクE3GのRonan Palmerによって執筆された。
同じ⽬標に向けた取り組みをする誰もが⾃由にこのブリーフィングを利⽤・適⽤できるものとする。
ECU: [email protected] E3G: [email protected]
1. グリーンで公平かつ弾⼒性のある回復計画の論拠
1.1 私たちは公衆衛⽣と経済に関わる前例のない緊急事態の渦中にある。
コロナウイルスが猛威を振るう国々は、感染ペースをコントロールし、医療サービスに⼗分な資源を動員し、企業が⽣き残るために⼗分な流動資産を提供し、さらに労働者や社会保障給付の受給者が⽣計を⽴てるのに⼗分な収⼊があることを保証するのに苦闘している。これらは今⽇の最優先事項であり、この先数週間にわたって引き続き⾮常に重要となる。だが、この「安定化」フェーズ(段階)は、この危機におけるフェーズ1にすぎない。
1.2 IMFが確証しているように、世界的な景気後退へと向かっているのは明らかである1。
需要と供給の崩壊は、国家歳⼊の⼤幅減をきたす。労働者の解雇を回避するための措置がとられているとしても、失業率はすでに急激に上昇している。多くの企業が倒産に追い込まれるだろう。株式市場や⼀次産品価格は、すでに⼤幅な下落を⾒せている。⼀部の⽣産や雇⽤の喪失は⼀時的だとしても、中には永続するものもあるだろう。経済の先⾏き不透明感は、おそらく⻑期間にわたって続くと思われる2。
1.3 現状の緊急措置に加え、政府は⼤規模な景気刺激策や救済措置を講じなくてはならない3。
今回の事態は2008年の危機と同種のものではなく、今はまだその先⾏きが読めないものの4、景気後退は少なくともそれに匹敵する規模になるとみられる5。最近の経済⾒通しの中には、2020年には世界のGDPが4%減少すると⽰唆するものがあり、それは2009年の2倍に値する規模となる6。経済⼤国において2008年から2010年に実施された景気刺激策の平均(訳注:歳出額)は、GDPの3.4%であった7。同時に、多くの⼤⼿企業が救済を必要とすることは明らかであり、すでに救済計画が考案されている。従って、コロナ危機のフェーズ2が景気刺激策と救済措置を伴うのはほぼ確実であり、おそらく異例の⾦融政策でもって後押しされることになる。同フェーズでは、景気刺激策を⽀えるべく付随的に新たな政策措置も講じられるとみられる。そして、その先には、制度や政策の⻑期的な再構築がなされるフェーズ3の可能性も考えられる。
1.4 国連事務総⻑8を始め多くの⼈が「より良い状態への回復」の必要性を述べている。⾔い換えれば、危機後に再建する経済・社会は(危機前よりも)レジリエンス(弾⼒性のある回復⼒)に優れ、環境的に持続可能であり、社会的に公正でなければならない。
欧州理事会は3⽉26⽇付の声明において、欧州委員会にロードマップおよび⾏動計画を策定するにように命じている。それが特に⽬指すのは、「社会・経済の正常な機能の回復と持続可能な成⻑に必要な措置であり、とりわけグリーン経済への移⾏とデジタルトランス フォーメーションを組み込み(中略)その実現には出⼝戦略での協調と包括的な回復計画、かつてない投資が要される9」。⽬下、各国政府は当然ながら急事に専念している。しかし、中期の景気刺激策や救済措置、さらには⻑期回復計画の策定に取り掛かる際には、その⽬指す先を単なる原状の回復にとどめないことが重要である10。
1.5 今回のコロナ危機は、各国政府が気候・環境危機に⽴ち向かう上で⼗分といえるような取り組みをして いない最中に起きた。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、世界の平均気温上昇を1.5℃に抑えるというパリ協定の⽬標が達成可能なものであり続けるためには、この先10年間で世界の温室効果ガス排出量をほぼ半減させなければならないと警告している。そして、2050年頃までに排出量は「実質ゼロ」になる必要がある11。パリ協定のもと、各国は今年11⽉にグラスゴーで開催予定の第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)にて、より強化した排出削減⽬標、適応計画ならびに資⾦⽀援計画の提出が求められている。しかしながら現時点では、必要とされる規模の削減⽬標や資⾦⽀援計画を発表する国はほとんどないように思われる12。また、10⽉に中国・昆明で開催予定の第15回⽣物多様性条約締約国会議(COP15)では、加速する⽣物多様性の損失速度を低減するための国レベル・国際レベルでの新計画が決定されることになる。この件に関しても、現時点では、各国の⽬指すところが必要規模に達するような兆しはほとんどない13。
1.6 多くの国は、経済的・社会的不平等の深刻化という問題にも直⾯している14。
ここ数⼗年にわたり、特に⾦融危機以降は、経済成⻑は最富裕層に偏っている傾向がある。平均賃⾦は停滞、あるいは緩慢な上昇を⾒せている。多くの⼈々にとって、就労はより不安定になっている。緊縮政策によって公共サービスや社会福祉制度は縮⼩し、⼥性や少数⺠族、⾼齢者など、社会的に最も弱い⽴場に置かれた⼈々の多くが特に打撃を受けている。貧富の差は著しく拡⼤し、国によっては都市部と周縁地域の間でも格差が開いている。多くの社会で精神疾患の患者数やメンタルヘルス(⼼の健康)に問題を抱える⼈の数が増加している。また、⼀般市⺠の⽇常⽣活の中で⼈種差別的な⾒⽅や外国⼈嫌悪のムードが増⻑し、社会の分裂を深刻化させている。これはコロナ危機の背景でもある。
1.7 コロナ危機は、近代社会・経済の脆弱性という深刻な問題、そして⼤きなショック(打撃)に対する準備不⾜を露呈している。
世界保健機関(WHO)など保健医療の専⾨家らが、世界的⼤流⾏(パンデミック)のリスクとその影響について警告していたが、適切な準備をした国は、たとえあったとしてもわずかであった15。森林⽕災や洪⽔といった最近の異常気象が⽰すように、気候・環境の崩壊によるリスクが⾼まっていることは明らかである。それにもかかわらず、我々の社会はその危険をいまだに正確に把握していない。我々の経済は現在、複雑に絡み合うグローバルサプライチェーンと⾦融システムに依存しており、その基盤は⾮常に脆弱である。⽣産、貿易、⾦融、公共サービスにおける「レジリエンス(弾⼒性のある回復⼒)」は、公共政策の⽬標としてより⼀層重視される必要がある。仮に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がリスクを把握し、それに備えることの重要性を明⽰しているのだとすれば、より⼤きなリスクを伴うものの準備度の低い気候・環境危機にこの教訓を⽣かさない⼿はない。
1.8 コロナ危機に対応するための景気刺激策と回復計画を検討するにあたり、これを機会と捉え、気候・環境崩壊や社会的不平等、レジリエンス(弾⼒性のある回復⼒)にも同時に取り組む必要がある。
いずれの国も、雇⽤創出と所得向上を同時に可能にしながら(とりわけ条件が不な利地域や収⼊が低く不安定な⼈々を対象に)、温室効果ガス排出の削減、環境負荷の低減、さらにはレジリエンスの向上にもつながる公的⽀出、公共投資、公共政策について様々な選択肢を有している。「より良い状態に回復する」ことが極めて重要であり、そのためにも社会が直⾯する主要課題に焦点を当てた景気刺激策と救済計画、それに付随する政策が求められる。その主要課題とは、気候・環境崩壊、保健医療と福祉と社会的介護(ソーシャルケア)の向上、教育⽔準と技能(スキル)の向上、⽣産性と所得の向上、そしてデジタル化の加速である。排出量実質ゼロへの道づくりを促進し、環境的に持続可能で、不平等を緩和し、さらには社会的結束とシステムのレジリエンスを⾼める「持続可能な開発と整合する措置」を優先することに異論の余地はない。
1.9 景気刺激策と救済措置が下⼿に策定されてしまった場合、環境危機や社会的不平等を逆に悪化させるというリスクが現存している。
コロナ危機に対処するには、環境規制を緩和し、脱炭素化に向けた計画の放棄も要するという声が上がっている16。これは、致命的な過失になるだろう。特に化⽯燃料の抽出・利⽤に投資している⾼炭素企業を無条件に救済し、⾼炭素インフラへの投資を増加することは、⻑期にわたって温室効果ガス排出量を激増させることになり、破壊的な気候変動を回避するための世界的な取り組みを台無しにする可能性がある。主に富裕層が保有する資産の価値を吊り上げ、⾦融機関や⼤規模⼟地所有者といった優位にあるセクターの経済的レント(超過利潤)の独占⼒を強化することは、既存の不平等をさらに悪化させることになる。2008年の⾦融危機に対応するために多くの国が講じた措置は、⼤がかりなグリーン化推進パッケージを含有していた17。だが、それらはこの種の環境的、構造的な負の影響も伴っていた。その時代から教訓を学び、⽣かしていくことが重要となる18。
1.10 2008年の⾦融危機後に実施された景気刺激策に盛り込まれていたグリーン化措置は、それ⾃体はおお よそ成功したものの、⼤規模な経済のグリーン化には⾄らなかった。
世界全体で⾒ると、グリーン化措置とグリーン投資は、2008年から2009年の景気刺激策の歳出総額のおよそ16%を占めていたと推定される19。その⽐率は国によって異なり、韓国=80%近く、EU=(⼩計の)60%近く、中国=およそ3分の1、イギリス=16%、⽶国=12%であった。これらの措置の⼤半は、雇⽤創出と賃⾦向上という⽬標を達成するとともに、再⽣可能エネルギーおよびエネルギー効率化への投資の促進、⾃然環境の修復などにもつながった20。しかしながら、ほとんどの国は、排出量増加や地球環境の悪化の元となる経済的⼿法を残していた。その例としては、様々な種類の化⽯燃料補助⾦、ゼロないし最低限に⽌まる炭素税・環境税の他、⼤気汚染や海洋汚染に関する不⼗分な規制などがあった。それゆえ、こうした景気刺激策(その多くは早々に撤回された)には、それほど永続的な効果がなかった21。
1.11 今⽇、気候変動への社会的関⼼が2008年よりはるかに⾼まっているだけでなく、世界の⾦融システムに対するその重要性も理解されている。
前イングランド銀⾏総裁マーク・カーニーが警告しているように、⾦融セクターは⼤きなリスクに晒されている。それらのリスクは、気候変動がその資産価値に与える影響(例えば、増加する保険請求の結果として)によるものであり、より厳重な気候政策の実施によって化⽯燃料・⾼炭素資産の価値が⼤きく低下するかもしれないということによる22。資⾦の流れは今、⾼炭素資産から⻑期的に持続可能なセクターや技術へと移⾏する必要に迫られている。
1.12 コロナと環境という⼆つの危機への対応において、⾏動しないリスクは⾏動することによるリスクをはるかに上回る。
コロナ危機の対応にあたり、各国の政府は思っていたよりもはるかに迅速に、より⼤きな規模で⾏動できるということを⽰した。それと同じ緊急性をもって、気候・環境危機にも対応する必要がある。ハーバード⼤学の経済学者ジェイソン・ファーマンは、「コロナウイルスへの経済対策を少なすぎて遅すぎたと歴史が判断する可能性は、その逆よりもはるかに⾼い。仮に経済的ショックが⼩さければ、景気刺激策は不要だったことになるが、その負の影響はおそらく⼩さい。だが、もし経済的打撃が⼤きいうえ、政策当局が今、⾏動に移さなかった場合には、その経済的被害の修復が⼀層困難になる」と 述べている23。同様に、オックスフォード⼤学の経済学者サイモン・レン=ルイスは、「100年後の今⽇、気候変動の破壊的で(彼らには)取り返しのつかない影響に苦しむ⼈々の中で、少なくとも国債を増やさなかったことを⾃⾝の慰めにする⼈は1⼈もいないだろう」と述べている24。
1.13 従って、コロナウイルスの経済影響に対応するための景気刺激策および回復計画は、現⾏の経済活動パターンからの“公正な移⾏”を後押しするような、より持続可能で、包括的かつレジリエンス(回復⼒)のある新しい経済モデルへの転換を図るべきである。
それらの政策や計画は、気候とコロナウイルスの両危機が露呈する財政的・社会的リスクに対処すると同時に、⺠間および公的資⾦のフローを「急速な排出削減を実現し、雇⽤と所得の創出を後押しする有益な投資機会」へと軌道修正させるべきである。そうした計画は、この世界不況への最善の対応策となり、世界中の経済と社会に「win-win」(誰もが満⾜できる結果)をもたらすだろう。
1.14 先進国は、国内の回復計画に重点を置きながらも、低所得国のニーズに応じなければならない。
多くの途上国は、コロナウイルスの影響を⽬の当たりにし始めたところである。それは保健システムがすでに脆い地域において、⾮常に深刻な⼈道危機が発⽣することを意味する。低所得国は、即時⽀援と中期⽀援の両⽅を必要とすることになる。その後の回復への取り組みが、化⽯燃料によるエネルギーシステムを強め、森林や農地、海などの⾃然資源のさらなる破壊をきたすかもしれないというリスクがある。コロナ危機を脱する道がすべての国において持続可能で、公平かつ回復⼒のあるものとするために、各国と国際機関による国際協調の⾰新的な形態が必要となる。
2. グリーンで公平かつ弾⼒性のある回復計画の構成要素
2.1 公衆衛⽣と安定性を揺るがすような緊急事態が収束に向かい、経済が再開されれば、概ね回復計画が実施されることになる。企業救済対策がすでに考案されているが、その⽬的を常のごとく企業の存続だけにとどめないことが重要である。
脱炭素化のカギを握る企業ないしセクター(航空、化⽯燃料、エネルギー、⾃動⾞部⾨など)については、救済策は例外なく排出量実質ゼロへの移⾏促進を⽬的とした条件付きにすべきである。企業がより確信を持って効果的な計画を⽴てられるように、そうした条件は最初から盛り込まれる必要がある。例えば、航空・空港セクターへの救済措置は、現在は免除されているガソリン税の⽀払いを含むべきである。ただし、それには最低でも欧州規模での多国間協調が必要になる25。また、その救済措置は、コロナ危機に起因して将来的に航空旅⾏の需要が減少する可能性も考慮に⼊れるべきである26。⾃動⾞部⾨は、例えば、電気⾃動⾞(EV)の公共調達を通じて⽀援することができる。より広範には、単なる補助⾦の⽀給や貸付というよりは、株の持分を通じた救済措置が実施される可能性がある。そうすれば、脱炭素化と事業多⾓化計画に関してより強⼒な指揮をとることが可能になる(さらに将来の配当を受けられる)。また、⾃社株買いの廃⽌など、その他の条件の適⽤もあり得る27。
2.2 回復計画は2種類の措置を含む必要がある。⼀つは、公的⽀出と公共投資を伴う景気刺激策、もう⼀つは、⺠間セクターの⽣産と投資を活性化させるための付随的な政策である。
この危機対応のフェーズ2の⽬的は、公衆衛⽣上の危機が和らぎ、ビジネス再開に⼗分なレベルまで感染率が低下した後に、経済活動を活性化させ⾃信を回復することにある。景気刺激策は、資本投資(エネルギー、交通、デジタルインフラ、企業への貸付など)と経常的な⽀出(医療(ヘルスケア)や社会的介護(ソーシャルケア)、持続可能な⼟地管理、建築物の省エネ化プログラムなど)の両⽅を含むべきである。景気刺激策はしばしばインフラ投資に関するものだと思われているが、経常的⽀出ならはるかに容易に迅速な提供ができる上、雇⽤創出を加速できる。公共調達もまた、例えば、電気⾃動⾞(EV)や研究・イノベーションの産物といった低炭素型商品・サービスの市場を創出するという点で重要な役割を果たせる。
2.3 景気刺激策の多くは、⺠間セクターの投資と⽀出を促す「市場シグナル」を発するために付随的な政策を必要とする。
例えば、農業補助⾦がいまだに⽣物多様性を損失する農業⽅式を奨励している場合は、⾃然保護プログラムへの⽀出を増やすことにはほとんど価値がない。電気⾃動⾞の充電スタンドへの投資には、消費者への購⼊補助⾦の継続と⼤気汚染の許容限度の厳格化が求められる。そうした付随的な政策の範囲はよく知られており、再⽣可能エネルギー(導⼊)義務、電⼒需要マネジメントに関する助成、様々な種類の炭素税・環境税、化⽯燃料補助⾦の縮⼩、都市・交通計画に関する政策、製品・建築物・⼯業プロセスの省エネ基準(訳注:原⽂はperformance standards)、廃棄物管理および循環経済(サーキュラーエコノミー)へのインセンティブ、特に⽣物多様性の保全を⽀援するための環境保護の法令、気候変動への適応策、そして公共調達などがある28。実施に際して、景気刺激策が経済を短期的に活性化させる⼀⽅で、市場シグナルが⻑期的な⽅向性を⽰すことを⽬指さなければならない。回復計画の環境への効果を⻑期にわたって持続させるためにもこれは重要である。経済学者のマリアナ・マッツカートが 「ミッション中⼼型(mission-oriented)」イノベーション戦略と関連づけて主張するように、経済の⽅向性を明確に⽰すことは将来の需要に対する企業の信頼感につながる29。
2.4 回復パッケージを考案するうえで、各国政府はグリーンで公平かつ弾⼒性のある回復に焦点を絞り、全⾯的に⾸尾⼀貫した取り組みをするべきである。
措置について政界や⼀般社会、企業の⽀持を得るためには、明確な指針のもと、パッケージを総括的に捉えることが極めて重要となる。慎重にコミュニケーションが図られれば、コロナ危機からの回復は、社会が直⾯する数多くのその他の試練にも対処しながら推し進められるべきではないかという考えが、⼀般に広く受け⼊れられる可能性がある。それは、より良い経済を築くために、所得向上だけでなく、より良好な社会・環境づくりも⽬指そうとするものである。回復パッケージを考案するうえで、この状況がもたらしている機会は⾒逃せない。その機会とは、すでに多くの政府がコロナ危機以前から作成にあたっていた、例えば、欧州グリーンディールや国家エネルギー・気候計画、COP26に向けて準備中の国別排出量削減⽬標(NDC)などの措置を回復パッケージに統合することができ、また脱炭素化のオプションに関して⼊⼿可能な最良のエビデンスから情報や知識を得られるというものである30。
2.5 回復計画は公正な移⾏の促進を⽬的とし、コストが公平に配分されるようにすべきである。
セクターや労働者、コミュニティが⾼炭素から持続可能な経済活動に移⾏するうえで、必要な⽀援を得られるようにするべきである31。また、各国政府は、従業員に適応コストを負担させた状態での企業への補償を避けるべきであり、転職、報酬、職業訓練パッケージは不可⽋となる。そうした“公正な移⾏”計画は、企業や政府(地⽅⾃治体を含む)、労働組合、NGOの参画を得て策定されるべきである。また、不利な⽴場に置かれた集団や周縁化された集団も正式に関与し、意⾒を発する機会を得られなければならない。コストを公平に割り当てながら、相乗効果と社会的・環境的・経済的便益を共に最⼤化することで、回復計画の効果が市⺠や企業にはっきりと⽬に⾒える形であらわれ、市⺠や企業に確信を与え、また信頼感の向上や国⺠の⽀持の維持にもつながる。
2.6 景気刺激策は、最も効果的な分野・プロジェクトを対象とすべきである。
回復フェーズにおける⽀出が重視すべきなのは、容易かつ迅速に実現できるプロジェクトである。⾔い換えれば、最⼤の雇⽤と相乗効果を有し、最も不利な条件下にある地域やコミュニティを⽀援し、最も広範囲にわたる経済・社会・健康上のコベネフィット(co-benefit)をもたらすプロジェクトである。社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)の制限が設けられているうちに回復計画を実⾏に移す場合は、それと両⽴できる措置を講じる必要がある。また、景気刺激策は、低所得世帯の所得税減税や付加価値税(VAT)減税、社会保障給付の増額といった所得向上に直結する措置を含むべきである。環境改善、社会的公平性と福祉、経済⽣産性、より良好な健康状態といった多⽬標の達成に寄与する11分野への⽀出を以下に列挙する。いずれの分野においても、投資と経常⽀出は多くの雇⽤と所得を創出し、ゆえに短期・中期的な相乗効果を⽣み出すことになる32。
2.7 公共サービス:
保健サービス、児童保護・保育(チャイルドケア)、社会介護(ソーシャルケア)、そして教育は、多くの労働⼒を要するセクターであり、⽀出増によって即時かつ⻑期的な経済的便益をもたらすことができる。近年、多くの国でこれらのサービスは過少投資になっており、コロナ危機後には、医療(ヘルスケア)やソーシャルケアへの⽀出増の継続を⽀持する声が⼀般市⺠の間で⾼まると思われる。
2.8 デジタルインフラ:
⾼速デジタルインフラの運⽤(ロールアウト)の促進は、特にへき地や条件不利地域に数々の経済的・社会的便益をもたらす33。すでにほとんどの国が⽣産性を⾼めるべくデジタルインフラの向上を最優先している。デジタルインフラは、例えば移動需要を減らすことによって、より広範囲にわたる脱炭素化の⽬標を後押しする。コロナ危機後も、在宅勤務やビデオ会議のより頻繁な利⽤が続くと予測されている34。
2.9 断熱材とエネルギー効率:
エネルギー効率向上のための住宅や商業ビルの断熱化は、多くの労働⼒を要するものであり、全地域で(都会と地⽅のいずれにも)雇⽤を創出することができる。おそらく建設セクターは⾼失業率を伴い、コロナ危機による打撃がとりわけ⼤きくなると思われる。エネルギー効率化(省エネ)に関する措置は、エネルギーコストや燃料貧困(fuel poverty)を軽減し、数々の経済的・社会的便益をもたらす35。温帯気候(訳注:原⽂はtemperature climates)にあるほとんどの国は、住宅ストックをエネルギー効率の最⾼基準に適合させるために⼤規模な投資プログラムを要する。しかし、原油価格の下落が、経済的な動機づけを低下させている。それゆえに、景気刺激策とそれに付随する政策は極めて重要な役割を担えるうえ、エネルギーコストが削減することにより採算がとれるだろう36。ホームレスや不適切な住居の問題が深刻化している国では、⼿頃な価格の住宅の建設や住宅のリノベーションを促進する余地もおおいにある。
2.10 交通:
持続可能な交通⼿段への投資は、⽣産性を向上させ、渋滞と⼤気汚染を緩げる。⼤半の⼯業国と多くの新興国は、内燃エンジン⾞から電気⾃動⾞(EV)への移⾏に取り掛かっているが、不⼗分な充電ネットワークにより導⼊率は伸び悩んでいる。ほとんどの町や都市が、充電ステーション数を増やすための⼤規模な投資の恩恵を受けるだろう。設置に対しインセンティブを与え、コスト削減を促進する様々な付随的政策・措置が考えられるゆえ、マス市場において価格パリティ(訳注:EVの価格がガソリン⾞と同等になる)となる転換点の達成⽬標を2020年代前半に早めることを⽬指すべきである37。たいていの町や都市において、公共交通のグリーン化(特に電動バスや⽔素バス、トラム、ライトレール・システム)への投資は、⼤気汚染や渋滞、温室効果ガス排出量の軽減に寄与するだろう。⾃転⾞道や歩⾏環境の整備計画も、同様の効果をもたらすことができる38。多くの国において、線路を建設・改良し、古い⾞両を⼊れ替える余地がおおいにある。
2.11 再⽣可能エネルギー:
より⼤容量の需要に対応するスマートエネルギーネットワークを伴う、再⽣可能エネルギーへの投資は、実質ゼロの脱炭素化と⼤気汚染の緩和を後押しする。現在、⾵⼒および太陽光発電による電気料⾦は、平均的な卸電⼒価格と同等、あるいはそれに近い価格になっており39、⼤半の国で化⽯燃料から再⽣可能エネルギーをもとにしたシステムへの“エネルギー移⾏”が始まっている40。こうしたグリッドパリティを考慮すると、再⽣可能エネルギー活性化のための⽀出はほとんどの場所で必要とされなくなる。むしろ、そうした⽀出は、再⽣可能エネルギーと蓄電池を組み合わせたシステムへの置換(これは、譲許的融資または債務保証を通じて⽀援できる)を条件として、⽼朽化する化⽯燃料を⽤いた⽕⼒発電所の閉鎖のバイダウン(⾦利ディスカウント)に重点的に充てることができる41。再⽣可能エネルギーによる電⼒に⽐べると、ほとんどの国において、再⽣可能エネルギーによる冷暖房(⽔素と⼆酸化炭素回収貯留(CCS)を⽤いる可能性がある)への移⾏ははるかにゆっくりと進⾏しており、公共投資や⺠間セクターへのインセンティブ制度が⼤きな刺激剤になる可能性がある42。また、交通と暖房における電⼒使⽤の普及には、電⼒需要マネジメントや貯蔵システムなどのスマート電⼒ネットワークの⼤拡張が必要となる43。
2.12 適応策:
コロナ危機を受けて、加速する気候変動の影響に対する準備についても国⺠の懸念が⾼まる可能性がある。多くの国は、洪⽔・海岸防壁、浸⽔リスク軽減のための⾼台の⼟地管理、また降⾬パターンの変動に対応できるよう排⽔・下⽔システムを強化するために、はるかに多くの投資を必要としている44。
2.13 ⾃然保護と⼟地管理:
⽣物多様性と⼀般⽴ち⼊りの両⽅の向上を⽬的とする⽣息地・⾃然保護プログラムは、地⽅と都会のいずれにも雇⽤機会をもたらすことができる。多くの国において森林破壊と⼟地劣化は、⾷料不⾜や貧困、⼆酸化炭素排出の主因となっている。アグロフォレストリー、⼟壌保全、⼟地回復プログラムは、農業における公正な移⾏の⼀環として、特に貧しいコミュニティや世帯の⽣計と所得を⽀えることができる45。より良い⼟地管理と⽣息地復元プログラムは、⼆酸化炭素の吸収や⽣物多様性の回復を助⻑し、異常気象の経済的・社会的影響に対する防御策となる。これには植樹や森林再⽣、湿原復元などが考えられる46。
2.14 廃棄物管理:
「廃棄物ゼロ」戦略は、経費節減と雇⽤創出を可能にする。欧州やその他の地域の多くの都市において、廃棄物の発⽣防⽌・再利⽤・リサイクルが様々な便益をもたらすことが実証されている47。また、⼟壌浄化や⽔路・海のクリーンアップといった廃棄物処理・清掃プログラムは、雇⽤創出の機会を⽣み出し、⽣活の質の向上にもつながる。
2.15 ⼯業プロセス:
景気刺激策は、⼤量のエネルギーを消費する産業による環境負荷軽減への取り組みを強化することができる。排出量実質ゼロへの道は、特にプラスチックやセメント、鉄鋼、重量⾞による道路輸送など「脱炭素化の難しい」セクターにおいて、⼯業プロセス・技術への莫⼤な投資を必要とする48。EUの新たな循環経済計画49に概説されている資源の再利⽤や廃棄物の削減を⽬指す「循環経済(サーキュラーエコノミー)」プロセス、そして⼆酸化炭素回収・有効利⽤・貯蓄(CCUS)技術の導⼊には特に投資機会がある50。
2.16 研究・イノベーション:
研究・イノベーション⽀出を、脱炭素化や地球環境の悪化、⾼齢化、医療(ヘルスケア)、そしてデジタル化といった、重要な社会的課題の対処に向けていくことの有⽤性に対する認識が今⽇ますます⾼まっている51。排出量削減、環境悪化の緩和、⾃然保護の向上に必要とされる技術の多くがすでに利⽤可能である⼀⽅で、将来的にこうした技術を進歩させ、またコストを削減するためには、政府によるR&Iへの投資が重要になる。2015年のCOP21で発表された国際イニシアチブ「ミッション・イノベーション」がエネルギー分野において重要な領域とみなしたのは、⻑時間のエネルギー貯蓄、⾼効率熱交換器、合成燃料、電気学的⼿法を⽤いた⼆酸化炭素回収テクノロジー、そして構造⽤炭素繊維といった代替建築材料である52。
2.17 訓練および技能(スキル):
回復計画によって新たに創出される仕事に⾒合う労働者(⼈材)を確保し、また“公正な移⾏”を可能にするためには、職業能⼒開発・訓練への⼤規模な投資が必要となる53。このこと⾃体が景気刺激策に寄与できる。
3. グリーンな回復計画のための資⾦調達(ファイナンス)
3.1 経済活性化を促進するためには、ほぼゼロの⾦利と共に財政政策が必要とされる。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への短期的な対応においては、貸付条件の緩和を通じて中央銀⾏が引き続き重要な役割を担うことになるが、このような状況下では⾦融政策の刺激剤としての効果は薄い54。経済学者と中央銀⾏のバンカーらは、財政政策の導⼊が不可⽋であるという認識で⼀致している55。
3.2 公的債務が史上最⾼規模に達しているものの、今⽇の著しい低⾦利はより⾼額の借⼊を財政的に持続可 能にする。
現在、多くの国では20年債の利回りが実質的にマイナス(インフレを考慮し)になっており、それはほぼゼロの⾦利が⻑期にわたって続くと⾦融市場が予期していることを⽰唆している。その結果として、将来の利払い費が極めて低くなり、デットダイナミクス(GDP成⻑率と国債⾦利の関係)は⾮常に好ましい。名⽬GDP成⻑率が名⽬⾦利を上回っている限り、GDPに対する債務⽐率は下がっていく。このことは、GDPに対する債務⽐率の安定を保ちつつ、プライマリー・デフィシット(基礎的財政収⽀⾚字)を拡⼤させる余地を⽣む56。
3.3 たとえGDPに対する債務⽐率を短期的に上昇させ、財政ルールを緩める必要が⽣じたとしても、経済成⻑を促す⽀出と投資には⼗分な論拠がある。
借⼊が的を射た投資に充てられれば、最終的には国⺠所得を増やし、GDPに対する債務の⽐率を下げる効果をもたらす。前IMFのチーフエコノミストであるオリヴィエ・ブランチャードは、「 国内総⽣産(⽀出側)の(訳注:政府⽀出の割合を)たとえ5〜10%でも増やすことをためらうべきではなく、それが賢明に費やされていれば、債務の持続可能性について⼼配する必要はないはずだ」と主張している57。永続する経済的効果のある投資コストを、その恩恵を受けることになる世代と分担して負担することは経済的に理にかなっており、そして、それは借⼊のなすところである。
3.4 財政⾯の考慮が「グリーン」投資の価値を確固たるものにする。
財政⾯のみで⾒れば、新規の投資が⾼炭素インフラに拘束(ロックイン)されないようにすることが重要である。なぜなら、気候変動政策が厳格化し、また気候変動リスクが⾼まることで、こうした投資は⻑期的に⾒れば利回りが減少する可能性があるからである。先に列挙したような気候変動の緩和・適応策への投資プロジェクトの多くはすぐに取りかかることができ、多くの労働⼒を必要とするうえ、再分配でき、⻑期にわたって経済的・社会的便益をもたらすことから、刺激剤を投⼊するには魅⼒的な選択肢として捉えることができる58。
3.5 ソブリン債は余剰資⾦の受け⽫となる。
超低⾦利は、計画投資(desired investment)に対する計画貯蓄(desired saving)の余剰を⽰す。多くの⾦融機関は安全資産を求めている。グリーンインフラおよび研究・開発への投資は、そうした計画貯蓄を経済成⻑(訳注:原⽂はgrowth)に向けることができる。「グリーンボンド(あるいはコロナボンド)」がグリーン刺激策への資⾦調達に⽤いられる可能性は⾼い59。グリーンボンドは中央政府が直接発⾏するか、あるいは国営投資銀⾏や国際開発⾦融機関(MDBs)を通じて発⾏することができる。すでに欧州中央銀⾏に対し、加盟国における景気刺激策を⽀えるために「コロナボンド」を発⾏し、また同銀⾏による短期国債の無制限の買⼊を可能にするOMT(OutrightMonetary Transactions)を⾏使するよう求める声が上がっている60。これには、より弱い⽴場にある加盟国を投機アタックから守るための保護措置も必要になるだろう61。
3.6 すでに積み上げられたソブリン債務の⼭を考慮すると、政策当局として考えられる選択肢の⼀つにグリーン刺激策への「財政ファイナンス(monetary financing )」がある。
財政ファイナンス(貨幣発⾏/紙幣増刷 ‒ printing money ‒ とも⾔われる)は、政府⽀出を賄うために中央銀⾏によってなされる永久的な融資である。これを最も簡単になす⽅法は、政府によるソブリン債の発⾏であり、この国債は中央銀⾏によって購⼊され、無利⼦・⾮償還の「政府への貸付⾦永久国債(訳注: 原⽂はasset due fromgovernment)」に変換される62。こうした⼿法をとることで、政府は債務残⾼や利払い額を増⼤させずに⽀出追加を⾏うことができる。ここ数⼗年で、この種の財政ファイナンスは、インフレや政府による「モラルハザード(倫理の⽋如)」を招くとする⾒解が⼀般的となったが、政府債務が膨れ上がり、需要が制約されていた第2次世界⼤戦中および戦後には、過剰なインフレを招くことなく広く⽤いられていた63。実際のところ、⾦融危機以降に中央銀⾏によってなされた「量的緩和(QE)」は、それが永久化した場合には⼀種の財政ファイナンスになるとみられる。コロナ危機後の経済や公的債務の状況を考慮すれば、このオプションを真剣に検討するに⼗分な論拠がある。インフレが問題になることはおそらくないだろう。なぜなら、現在の期待インフレ率は中央銀⾏の⽬標値よりかなり低いレベルで安定しており、原油価格が下落しているうえ、景気刺激策は⼀時的なものとなるからである64。これには財政政策と⾦融政策を協調させるための明確なルールが必要となるとみられ、ブラックロック・インベストメント・インスティテュート(BII)は、制御されたソブリン債の財政ファイナンスの⼿段として、明確な始動基準(activationcriteria)を伴う「常設緊急財政制度(standing emergency fiscal facility)」の設⽴を提案している65。
3.7 もう⼀つの選択肢として、中央銀⾏によるグリーンボンド限定買⼊れ「グリーンQE」が考えられる。
現在、多くの場合において(欧州中央銀⾏を含め)、中央銀⾏のQE債券のポートフォリオの⼤部分は、最も⾼炭素なセクターに向けられている66。グリーンボンドを⽀持し保有債券を解き放つことで、中央銀⾏はその活動が気候変動・環境への取り組みに逆⾏しないようにすることができる。そうすれば、⾼炭素活動に投融資する「ブラウン」資産は、社債の買⼊対象から除外されるはずである。これは、EUのグリーン・タクソノミーやグリーンボンド基準を⽤いることになり、また「気候関連財務情報開⽰(TCFD)の義務化」という前イングランド銀⾏総裁マーク・カーニーの提案に基づくものとみられる67。
3.8 ⻑期的に⾒れば、公的⽀出と債務が肥⼤化することで、おそらくより⾼⽔準の課税が必要となる。そうした状況においては、環境税および炭素税の導⼊、そして化⽯燃料補助⾦の削減が財政収⼊の重要な供給源として考えられる。
炭素価格は国やセクターによって⾮常にばらつきがあり、現在の原油の安値を踏まえると炭素税が引き上げられる可能性が⾼い68。逆進性の問題を回避するためには、低所得消費者やそのしわ寄せを受けかねない中⼩企業を保護し、また省エネ投資を促進するための措置を伴う必要がある。主に既存の⽣産者や裕福な消費者に利益をもたらす化⽯燃料補助⾦は、2018年には世界全体で4000億ドルにのぼったと推定され、EUにおける2014年から2016年の補助⾦総額は1000億ユーロを上回った69。その削減には数々の利点(ベネフィット)がある70。範囲を広げたところでは、⾼所得層や富裕層に対する所得税率を引き上げる累進課税の強化に関しても⼗分な論拠がある。
4. 国際協調による取り組み
4.1 世界的な回復計画を連携して進めるために、G20⾸脳による特別会議がさらに開かれるべきである。
2009年4⽉にロンドンで開かれたG20⾸脳会議は、⾦融危機後の回復にG20として結束して取り組むために不可⽋であった。景況感を回復し、途上国・新興国を⽀援するために多国間協調が極めて重要となる。
4.2 低所得国や⼀部の新興国は、公衆衛⽣上の緊急事態に対処するために国際⽀援を⽬下必要としており、その後に続く回復計画でもさらなる援助を必要とする。
国際通貨基⾦(IMF)、世界銀⾏、国際開発⾦融機関は、それぞれ有するあらゆる制度や譲許的融資を駆使し、共同戦略を策定する必要がある。多くの低所得・新興国経済が抱える債務の⼭を踏まえると、IMFとしては、低所得国への流動性供給を⽬的とする特別引出権(Special Drawing Rights・SDR)の新規配分を検討する理由が⼗分にある71。
4.3 公共と⺠間の両⽅から資⾦を動員し、持続不可能な開発モデルからの経済の脱却を可能にする「持続可能かつ公平なプロジェクト」を途上国が計画遂⾏できるよう⽀援する⽅向で、国際協調がなされるべきである。
それには、プロジェクト推進基⾦の強化、技術や知識の移転に関するコミットメントなど、国、地域、国際機関の間で資源(リソース)を動員し、協調していくための新たな⼿⽴て(アプローチ)が必要になる72。
4.4 コロナ危機が国際間の移動性(モビリティ)を減少させ、幾分かの「脱グローバル化」をきたすとしても、国際協調を⼀層強化する必要がある。
コロナ危機は、おそらく⻑期にわたって国際間移動を減らし、また⼈の移動を⼀時的に制限することになる。サプライチェーンは再編され、今後の⽣産は「オンショア(訳注:⾃国で⾏われる)」になる可能性がある。そして、ある程度の「脱グローバル化」をきたすのはほぼ確実である。しかし、それだからと⾔って、各国は孤⽴主義的に⾃国内に引きこもるべきではない。ウイルスによる苦悩と損害は相当なものになるだろう。それゆえ、⻑期的な⽬で⾒て、より持続可能かつ包括的な成果につながる対応をするために、国際的な結束と協調が極めて重要となる。
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- 日本語