京都議定書第一約束期間における京都メカニズムクレジットの定量分析―京都メカニズムを通じた実削減に関する考察ー

ワーキングペーパー
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• 京都メカニズム第一約束期間(2008年~2012年)の間に、全ての附属書I国が他国から取得(償却及び繰越)した京都メカニズムクレジットはおよそ54億トンであった。そのうち、33%は実削減を伴わないプロジェクトからのクレジットであった。内訳として、ホットエアーAAUの取得が13%、追加的な排出削減に基づかないとみなされる(以下、追加性のない)ERUが13%、追加性のないCERが7%であった。実削減を伴わないクレジットの利用によって、温室効果ガス(GHG)削減活動が進まないばかりか、国内の排出量が増加してまった事例も見受けられた。
• 実削減を伴わないクレジットを排除する措置として、クレジットの需要側では、一部のプロジェクトタイプからのクレジット取得が制限され、クレジットの供給側では、追加性に関する詳細なルールやガイドラインが整備されたが、これらの措置の効果は限定的であった。特にCDMにおいては、追加性のないプロジェクトを排除できなかったばかりか、追加性があるプロジェクトの実施に対する障壁となった可能性がある。
• 本稿では、京都議定書第一約束期間中に各附属書I国がどのようにして削減目標を達成したかという短期的な観点から分析を行った。一方で、京都議定書の実施が附属書I国に促した長期的なGHG削減や技術開発といった副次的効果について論じておらず、今後さらなる分析が必要である。非附属書I国や市場経済移行国については、追加性のないプロジェクトに着目するだけではなく、追加性のあるCDMプロジェクトやグリーン投資スキーム(GIS)を通じたホットエアーAAUの売却収益が、技術移転、緩和活動に関する普及啓発や波及効果といった便益をどの程度もたらしたか、といった長期的あるいは質的な観点から評価されることも必要である。

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