46%削減と炭素中立を目指す日本のエネルギー政策設計図の理解と前進に向けた提案ー新しいエネルギー基本計画とNDCをどう捉えるか?

ディスカッションペーパー

2030年46%削減目標と2050年炭素中立(Carbon Neutrality)実現に向け,日本はエネルギー政策の舵を新たに切り直した.そしてそれへの日本政府の回答である新しい第6次エネルギー基本計画(エネ基)およびその設計図としての2030年エネルギー需給見通しが策定された.本論考では,この「第6次エネ基をどう理解し,どう捉え,どう前進するか?」を考えるという目的から,2030年と2050年のタイムフレームに関して,9つの視点での分析と5つの提案を行う.これによって,今後のエネルギー政策を,的確かつ機動的にデザインと運用していく一助となることを期待している.

まず,2030年の絵姿の分析としては,46%削減(平均3.5%/年削減)目標のためのエネルギー需給見通しの全体像の量的な理解を,「エネルギー効率向上」と「エネルギー転換」という2つの原単位で要因分解を行うことで,2.8%/年(エネ効率向上),2.0%/年(エネ転換)で向上していくという絵姿であることを示した(2013–30年平均).政策的なCO2削減寄与度としては,これまでは「エネルギー効率向上」が主であったが,今後は「エネルギー転換」も同等近くの寄与が期待され,こちらのチャレンジ度合いが大きい.またCO2排出総量の削減目標は政策的には外生変数となるGDPに大きく影響されてきたことも示した.これから,政策のパフォーマンスを抽出/顕在化させるため,上記の2つの原単位を政策のパフォーマンスを評価する指標(KPIs)とした追加目標とし,総量目標に加えて設定することを提案した.

また、エネ基の設計図である2030年需給見通しが政府の実質的な目標であることを踏まえつつも,現実に所期の数字が実現化できない事態を前もって想定し,その進捗評価を,追加手段を講じることや軌道修正を行うことのトリガーとすることの重要性を論じ,その方法をマニュアルとして事前に準備しておくことを提案した.またそのようなケースに対する制度的建て付けとして,第三者評価機関による科学的レビューメカニズムの創設を主張した.

さらに,産業部門に焦点を当て,EUの炭素国境調整メカニズムを題材に,その役割分担や考え方に関して,EUと大きな差異があることを論じた.

2050年に向けてのアプローチに関しては,将来の不確実性を踏まえた複数シナリオ分析の作り方や使い方の方法論,すなわち客観性のある分析のベースを,あらかじめ用意しておくことを主張した.

それに加え,さまざまなリスクをどう捉え,必要に応じて「方向転換」を行う準備をしておくことの重要性を,方向転換を強いる可能性を持つ大きなリスクの具体例を例示して,議論を行った.たとえば,海外から安価で大量のカーボンフリー製造水素(や水素由来燃料)が入手できないとなった場合や,国内でも海外でも炭素回収貯留(CCS)を大規模で行うことが難しいことが判明した場合など,キーとしてきた前提が崩れるかもしれない可能性を,そのような可能性を排除すべきでない根拠をまじえて論じた.すなわち,リスクヘッジとして,「思惑(Plan A)通り」に行かない可能性を想定し,Plan B や C を事前に用意しておき,タイムリーに主軌道の再構築を行う準備を行っておくことや,方針転換のトリガーとなる意思決定の方法を用意しておくことを提案した.

ここ 15 年間ほどの短期間で,世界金融危機,東日本大震災/福島原発事故,COVID-19 という大きな想定外の事象が3つも起きた.それらに対し,対策が後手後手になってしまった.われわれは,この教訓を踏まえ,これらの「軌道修正・方向転換の『あり方』を 前もって用意しておくことの重要性」を認識すべきであろう.

国際的な気候変動対策強化の方向性は,想定を超える早さで動いてきている.3年後には第7次エネ基と野心強化した2035年NDC目標が必要になるであろう.それを踏まえ,正しい準備を行いつつ,タイムリーで適切,かつバイアスを排したロジカルな対応が可能になることが望まれている.

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