環境調和型産業クラスター(EIC): 環境と連携した地域経済発展

Number 08
ポリシーブリーフ
環境調和型産業クラスター(EIC): 環境と連携した地域経済発展

 現在アジアの開発途上国では、産業活動の集中がもたらす負の影響に対処するための懸命な取り組みが行われている。産業エコロジー理論の影響を受けた多くの地域では、経済発展を阻害せずに産業の環境負荷を軽減する戦略として、エコタウンやエコインダストリアルパークが推進されている。これらのエコアプローチが採用されているのは、現時点ではまだ都市部を拠点とする従来の製造業に限られているが、製造業を中心とする国々にとっては優れたモデルとなる。
 一方、従来型の製造業だけでなく新たな産業の導入を進めている国の場合は、農村地域、特にまだ自然が残る都市農村境界域に開発のチャンスが秘められている。これらの地域では既に、原材料の供給源と都市部市場への平等なアクセスを目的とした新興産業のクラスターが形成されているが、ただ共存するだけでなく、企業間の連携をさらに深めることができれば、資源の共有ならびに経済・社会・環境面での成功を実現できる可能性がある。そのカギとなるのが環境調和型産業クラスター(EIC)である。EICとは、地理的に集中して活動している企業が、企業同士及び地域コミュニティと協力し合って資源の効果的な共有を図りながら、企業と地域コミュニティ双方に環境改善、経済的便益、人材の向上をもたらすものである。EICの成功に不可欠であるのは、資源の保全だけでなく、コミュニティに富をもたらす様々なイノベーションを追求するために企業間ネットワークを積極的に進める企業である。インド、日本、タイ、ベトナムの事例に示されているように、企業間ネットワーク、効果的な技術、ソーシャル・キャピタル及び公共政策の支援がEICの土台となっている。そしてこれまでのように環境問題が既に進行してしまってからではなく、新たな産業と共にこれらのインフラが形成されることが重要である。
 持続可能な地域開発の新モデルとしてEICを推進するには、政策の方向性を転換しなければならず、産業政策、環境政策、地域開発政策という3つの主な政策を横断し、協調的、マルチステークホルダー的、そして時に地域固有的なアプローチを支援する共通の取り組みによって、EICの持続可能性のポテンシャルを最大限に引き出す必要がある。

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English version is available at:
http://pub.iges.or.jp/modules/envirolib/view.php?docid=1593

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