日本-インド技術マッチメイキング・プラットフォーム(JITMAP)特集

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JITMAPとは

日本・インド技術マッチメイキング・プラットフォーム(JITMAP)は、日本の環境技術(低炭素技術・省エネ技術含む)メーカーとインドの企業をマッチングし、インドにおける日本の環境技術とその効率的な運用手法の普及を促進するためのプラットフォームです。

JITMAPは、公益財団法⼈地球環境戦略研究機関(IGES)関⻄研究センターが、日本の環境省の支援の下、2016年7月にインドのエネルギー資源研究所(TERI)と共同で立ち上げ、上記の目標実現に向け取り組んでいます。

JITMAPが目指すもの

インドの課題解決への貢献:

インドは、GHG排出量が中国、米国、欧州連合(EU)に次いで世界第4位であり、2015年12⽉の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において合意された「パリ協定」で打ち出された方向性を受け、INDC(約束草案:INDCは、パリ協定締結後はNDCとなった)において、2030年までに排出量を2005年⽐でGDP当たり33〜35%削減する⽬標を掲げています。また、モディ首相は、今年英国グラスゴーで開催されたCOP26での演説において、インドが2070年までに温暖化ガス排出の実質ゼロをめざすと初めて表明しました。その達成に向け、同国の総エネルギー消費量の約56%を占める産業部門のエネルギー効率の改善は、国レベルの重要事項の⼀つとなっています。JITMAPは、インドの産業分野への環境技術の移転促進を通じて、GHGの排出削減やエネルギー効率化に貢献していきます。

インドは2012年から、⼤企業においてエネルギー効率改善への取り組みが広がりつつあります。国家気候変動⾏動計画(NAPCC)のエネルギー効率化国家計画(NMEEE)の下で、省エネルギー達成認証(PAT)制度の運用を開始。この制度を管轄する電⼒省エネルギー効率局(BEE)は、⽇本の⼀般財団法⼈省エネルギーセンター(ECCJ)と協⼒し、企業向けの省エネルギーガイドラインを策定しました。一方、中⼩企業での省エネへの取り組みはまだ遅れており、ガイドラインの浸透が課題となっています。 JITMAPはこのような潜在的なニーズの発掘にも務め、日本の環境技術の適用事例を増やし、その課題の解決に貢献していきます。

また、世界保健機関(WHO)のデータベース(2018年)において世界で最も汚染されている15都市のうちの14都市がインド国内にあります。大気汚染のみならず、人口増加や急速な経済発展に伴う廃棄物の不適切な管理による環境悪化等の環境問題が深刻になっています。この状況を改善するべく、環境省とインド環境・森林・気候変動省は、環境分野における両国の協力の推進を目的とし、汚染管理(大気、土壌、水)、廃棄物管理、環境技術、並びに気候変動等の8分野に関する覚書を2018年10月に締結しました。JITMAPではその枠組みを活用した問題解決への協力を通じて、2国間の環境協力の更なる促進に貢献していきます。
 

SDGs 7
SDGs 9
SDGs 13
SDGs 17
JITMAP

JITMAPを通じた技術移転促進:

これまでのインドにおける活動を通じて、インドでの環境技術の普及には⼤きな可能性があることがわかりました。ただし、その移転促進には、次のような課題克服への⽀援が必要なこともわかってきました。

現地企業の経営者やエネルギー管理者、エネルギー診断⼠等には、⽇本企業の技術やサービスを知らない⼈が多く、往々にして、企業経営者は安価な機材を選択しがちです。エネルギー効率が⾼く、耐久性に優れ、環境性能の⾼い⽇本企業の製品を選択してもらうには、その⻑期的な利益や環境効果を理解してもらう必要があり、そのような機会を設けることが求められます。

⽇本企業はインドおける⽇系企業や関連企業との取引にとどまり、インド企業、特に中⼩企業との取引はそれほど多くない傾向があります。インドの中小企業のエネルギー・資源効率や労働環境には、大幅に改善の余地があり、このような企業に⽇本企業の技術や製品の良さを理解してもらうことで、将来の市場の拡⼤が⾒込めます。

エネルギー効率の⾼い機器の普及には、厳格な省エネルギー規制が追い⾵となります。同様に、環境効果の⾼い機器の普及には、厳格な環境規制が求められます。製品によっては規格や基準が異なるものがあり、細かい対応が求められます。また、複雑な⼊札・調達制度への対応も求められます。

JITMAPでは、これらの課題を克服して、環境技術の移転を促進するため、日本企業の専門家や現地の協力関係機関にご協力いただきながら、日本の技術の理解促進のためのセミナーやワークショップ、選定した現地企業における⽇本の環境技術の技術適用可能性調査(FS)やエネルギー診断⼠・管理者向け研修、さらに、技術移転の促進施策や規制等に関する関係機関との協議等を実施しています。

事業内容

JITMAPは、IGES関⻄研究センターとインドのTERIが事務局として、日印両国の協力関係機関等と連携し、インドにおいて環境技術の移転と普及を促進するための活動を通じて、日本の環境技術を有する企業とその技術を必要とするインドの企業をマッチングし、技術移転の促進をサポートしています*。具体的には、日本企業の専門家にご協力いただきながら、インド企業の経営者やエネルギー管理者、エネルギー診断⼠向けのセミナーやワークショップを開催して、⽇本の環境技術に関する理解を深めてもらっています。また、その技術の適⽤可能性及びその経済効果等を把握するため、選定した現地企業において技術適用可能性調査(FS)を実施しています。さらに、その技術の伝搬者となる可能性の⾼いエネルギー診断⼠により実践的な技術研修も実施しています。

*JITMAPは、グジャラート州での活動において、同州との間で相互協力に関する覚書を締結している兵庫県からも、IGES関西研究センターの活動を通じて支援を得ています。

日本-インド技術マッチメイキング・プラットフォーム(JITMAP)の構成図
日本-インド技術マッチメイキング・プラットフォーム(JITMAP)の構成図

 

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活動地域 / 協力支援機関技術移転の流れ / 活動成果事例:

JITMAPでは、対象とする技術を製造する日本企業の協力を得て、技術の移転促進を通じてインドのGHG排出削減、エネルギー効率化、環境改善等への貢献を図っています。

活動地域は、インド国内でも工業化の進展が著しく、エネルギー多消費型の多様な産業を抱え、さらにTERIのネットワークや関係機関の協力支援を得られるインド国の西海岸や南海岸地域を主な対象としています。加えて、電力省エネルギー効率局(BEE)下の州指定機関のグジャラート州エネルギー開発公社(GEDA)、マハラシュトラ州エネルギー開発公社(MEDA)、州政府指定機関のアンドラ・プラデシュ州エネルギー委員会(APSECM)、及びグジャラート州産業技術コンサルタント機関(GITCO)、マハラシュトラ州商工農会議所(MCCIA)、アンドラ・プラデシュ州エネルギー開発会社(APSEEDCO)は、正式なJITMAP協力支援機関となってます。この他、アンクレシャワール工業会、バピ工業会など、各地の工業会とも協力関係にあり、これらの機関と連携して活動しています。

JITMAPの主な活動地と協⼒機関構成図
JITMAPの主な活動地と協⼒機関構成図

JITMAPでは、日本の環境技術の移転を、対象地域の州政府機関や工業会等との連携のもと、主に、対象とする技術の需要と供給のマッチング、技術移転のための支援活動、技術の適用とその経済効果や環境改善効果の分析、並びに、適用技術の普及・拡大にむけた適用効果の発信の4ステップで推進しています(下図参照)。JITMAPの活動では、これらの中で主にステップ1とステップ2に注力して、環境技術の移転の促進を図っています。

JITAMAPを通じた技術移転の4ステップ
JITAMAPを通じた技術移転の4ステップ

圧縮空気システム (協力:株式会社日立産機システム、Kobelco Compressors India Pvt. Ltd.)

事例1: インド企業による日本の高効率な空気圧縮機の導入

  • 事業者: 繊維企業 所在: グジャラート州スーラト
    技術適用可能性調査(2017年11月)、フォローアップ調査(2018年1月)
導入された空気圧縮機
導入された空気圧縮機

技術適用可能性調査及びフォローアップを通じて、既存の3台の高圧ライン圧縮機を1台のインバータ型(VFD)スクリュー型空気圧縮機(160kW)に置換することにより、年170千kWh程度のエネルギー消費量(金額にして約120万ルピー(約170万円)に相当)及び年160トンのCO2排出量の削減ポテンシャルが見込まれました。これを当該企業の経営陣や工場の管理スタッフに提示したところ、同社がそれを検討し、Kobelco Compressors社の空気圧縮機が導入されました。

事例2: 圧縮空気システムの効率的な運用手法の採用による約30%の省エネ達成

  • 事業者: 自動車部品製造 所在: マハラシュトラ州プネ
    技術適用可能性調査(2017年9月)、フォローアップ調査(2020年1月)
簡易省エネルギー診断
簡易省エネルギー診断

技術適用可能性調査を実施し、古い空気圧縮機の高効率インバータ機への入れ換えや、エアー漏れ対策等の運用手法の改善案を提示しました。その後、フォローアップ調査をしたところ、老朽化したレシプロ圧縮機(220kW)の廃棄、エアー漏れ対策、高効率ツールへの取り換えなど、推奨した運用手法のほとんどが実施されていました。その結果、年約179万kWh(約1,610万ルピー(約2,300万円)相当)の電力消費量が削減されました。

吹き出し

大きな成果を得ることができたので直接報告したかった(注:別の現地調査時に、同社担当者が専門家を訪問)。専門家の提案を実施したところ、約30%ものエネルギー消費を削減できました。さらに、従業員の省エネ意識をも高めることができ、とても感謝しています。今後もフォローアップに訪問していただきたい。当社もさらに省エネを進めていきます。

事例3: 圧縮空気システムに関する技術適用可能性調査と企業内研修を通じて更なる省エネに貢献

  • 業種: 自動車製造業 開催地: ハリヤナ州マネサール
    対象: エネルギー・メンテナンス・ユーティリティ部門の社員
    実施: 2018年12月、フォローアップ調査(2019年10月)
企業内での研修
企業内での研修

インドを代表する自動車製造工場において、圧縮空気システムに関する技術適用 可能性調査を実施したところ、効率的なシステムが採用されていることがわかりました。さらなる改善の可能性のある取組として、機械式ブースターから電気式ブースターへの切替えやエアー漏れ調査等を提案しました。後日、その調査結果を教材に、さらなる改善点や効率的な運用手法等についての社内研修を開催しました。研修には、同社の呼びかけにより、自動車製造2工場と鋳造工場の計3工場から、約40名の社員が参加しました。その後のフォローアップ調査では、エアー漏れ調査などの提案事項を実施した結果、工場の総消費量の約3%に相当する圧縮空気量の漏れの特定や、組立工場での省電力ツールの使用等、さらなる省エネ対策ができたことが報告されました。

吹き出し

専門家に自社の省エネの取組を客観的に評価してもらい、これまでの取組が間違っていなかったことがわかり、自信になった(なかなかそのような機会がないので)。その結果をエネルギー管理に関わる従業員と共有し、省エネ意識を高めることができたのも収穫。

電気ヒートポンプ(EHP)及び冷凍システム (協力:株式会社前川製作所)

事例4: 冷凍システムの冷媒に関する州政府関係機関との協議

  • 協議機関: アンドラ・プラデシュ州省エネルギー委員会(APSECM)、 アンドラ・プラデシュ州省エネルギー開発公社(APSEEDCO)
    開催地: アンドラ・プラデシュ州ヴィジャヤワーダ
    実施: 2018年12月
州政府関係機関との協議
州政府関係機関との協議

アンドラ・プラデシュ州の10数社の水産品加工事業者において、冷蔵・冷凍施設の 技術適用可能性調査を実施したところ、ほとんどの企業では冷媒にR404Aなどの代替フロン(HFC)やアンモニア(NH3)を使用しており、インド政府の代替フロンの段階的な廃止方針やアンモニアの安全性への懸念があまり認識されていないことがわかりました。そのため、州レベルの省エネルギーを推進するAPSECMとAPSEEDCOに対して、日本の冷凍システムのエネルギー効率の高さや環境安全性を紹介して、フロンやアンモニアの冷媒の使用に関する規制の導入等について働きかけをおこないました。

蒸気管理システム (協力:TLV International, Inc.)

事例5: 州政府のエネルギー管理者向けセミナーを通じた蒸気管理システムに関する理解の促進と潜在的顧客の発掘

  • 対象: エネルギー診断士、民間企業のエネルギー管理者 計120名程度
    開催地: グジャラート州スーラト
    実施: 2020年2月
セミナーの様子
セミナーの様子

グジャラート州エネルギー開発公社(GEDA)及び国家生産性協議会(National Productivity Council)が開催した、同州のエネルギー診断士・管理者約120名を対象としたセミナー「State Level Meet of BEE Certified Energy Auditors & Managers」において、TLV社の蒸気管理システム技術を紹介しました。同社は、同州内の企業で実施した技術適用可能性調査(FS)の結果をもとに、蒸気バルブ(トラップ)の交換や蒸気管理システムの導入による省エネルギーの可能性について説明しました。参加者からは高い関心が寄せられ、事後アンケート調査において、9割以上の回答者が「ワークショップの内容は役に立った」と回答しました。TLV社は、同セミナーを通じて潜在的な顧客を発掘することができ、同社の製品や技術サービスに関心を示した企業をフォローアップしています。

吹き出し

最大の収穫は、スーラトでのセミナー「State Level Meet of BEE Certified Energy Auditors Managers」です。弊社はこの手の機会を求めておりました。今後、是非、このようなセミナーを絡めた日程での現地調査の計画をお願いします。

省エネ伝動ベルト (協力:バンドー化学株式会社)

事例6: インド企業による日本の省エネ伝動ベルトの試験的導入

  • 対象事業者: 製薬、ガラス、総合化学
    対象州: グジャラート州アンクレシャワール
    調査時期: 2018年8~9月
簡易省エネルギー診断
簡易省エネルギー診断

グジャラート州アンクレシャワール工業会の4社において、バンドー化学社の省エネ 伝動ベルトの適用可能性調査を実施しました。その結果、これらの企業で使用されている 機器の多くが欧州規格であり、同社の製品と規格が異なることがわかりました。そこで同社は、欧州規格の場合は伝動ベルトと滑車のセットでの交換を、それ以外では同社のサンプルベルトの試験的な適用を提案しました。それとともに、各企業の使用状況により差異はあるものの、通常、同社の製品の採用により5~15%程度のベルト効率の向上が見込まれ、投資回収期間も数ヶ月程度となることを説明しました。その結果、ガラス製造企業等2社において同社の伝動ベルトが試験的に導入されました。

JITMAPの展望:

JITMAPは、今後も、技術協力を通じてインドで需要の⼤きい環境技術の普及を促進していきます。在インド⽇本国⼤使館が推進するブルー・スカイ協⼒、一般財団法人省エネルギーセンター(ECCJ)、並びに公益社団法人日本環境技術協会(JETA)等の日本側の協力機関とも連携を図り、同国のGHG排出削減だけでなく環境の改善にも貢献する取り組みをしていきます。それらを通じて、日本の得意分野を十分に活かした、日本の顔が見える支援による技術の移転促進を目指していきます。

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