インドのエネルギー診断士・管理者を対象とした日本の蒸気管理システムに関する研修の開催 [オンライン開催]

2021年11月17 日 (インド時間11:30 – 13:00、日本時間 15:00 – 16:30)

(公財)地球環境戦略研究機関(IGES)関⻄研究センターは、2021年11月17日に、インドのエネルギー資源研究所(TERI)と共同で、「日本の蒸気管理システムに関する研修」をオンラインで開催しました。本研修は、2016年に環境省の支援の下で立ち上げた日本からインドへの環境技術(低炭素・省エネ技術を含む)の移転促進を目的としたプラットフォームである“日本・インド技術マッチメイキング・プラットフォーム(JITMAP)”の活動の一環として開催しました。本研修の目的は、日本の蒸気管理システムに関する移転の促進のため、主にインドのエネルギー診断士や産業界の経営トップ、エネルギー管理者を対象として、同技術やその省エネの重要性に関して更に理解を深めてもらい、インド政府の能力開発への取り組みに貢献することです。

また、本研修は、グジャラート州エネルギー開発公社(GEDA)、マハラシュトラ州エネルギー開発公社(MEDA)、アンドラ・プラデシュ州省エネルギー委員会(APCECM)からも協力を得て開催しました。

主に3州のエネルギー診断士・管理者、及び蒸気を多く使用する石油精製、セメント、電力、化学、肥料、製紙等の産業分野のインド企業関係者、民間コンサルタント等、約75名が研修に参加しました。

開会セッションでは、TERIエネルギー部門シニアディレクターGirish Sethi氏が歓迎挨拶を行い、これまでのJITMAPのインドにおける産業部門への日本の環境技術の適応促進への取り組みについて紹介しました。また、本研修は、エネルギー診断士や管理者を対象として、インドの電力省エネルギー効率局が実施するPATスキーム等におけるインド企業の省エネへの取り組みの参考となるよう、蒸気管理システム技術への理解を更に深めてもらうことを目的としていると説明しました。さらに、同氏は、今回のウェビナー開催を支援してくれたGEDA等の州政府機関に感謝を述べました。

テクニカルセッションでは、まず、IGESプログラムマネージャー濱口俊典氏が本ウェビナーの背景説明を行い、JITMAPの概要、これまで実施してきた活動の内容や実施数、実施地域や協力支援機関等について説明したうえで、それらの活動を通じて日本の環境技術の移転促進によるインドの製造業におけるエネルギー効率化の促進に取り組んできたことを説明しました。さらに、活動の成果として、セミナーを通じた日本の技術の理解促進やインド企業が実施した省エネの実施等の事例を紹介しました。

次に、蒸気管理システム技術の専門家2名が、参加者に技術に関する講義を行いました。

TLV PTE LTDインドオフィスゼネラルマネージャーPeush Jaitly氏は、より良い蒸気システムは、エネルギー効率以外にも、気候変動への対応や、安全性、信頼性、収益性の向上など、様々なメリットがあると強調しました。また、エネルギー監査を行う際には測定を行うことが必要であり、よりよいエネルギー監査のためには、知識、方法論、機器の3つが重要であると述べました。そして、エネルギー効率化を考える時の重要ポイントについて、実際にインドの企業で実施した診断事例を挙げて説明しました。さらに、調査方法と対応に関して、同社が調査で使用している超音波センサーTrapManの特徴及びそれを使った手法を紹介し、トラップ による蒸気ロス及びそれに伴う経済的損失の例などを説明し、その対策として優れたスチームトラップへの交換によるメリットや投資収益率(ROI)についても紹介しました。

TLV International Inc.のインド、ラテンアメリカ、南アフリカ、中東のゼネラルマネージャーである中島孝治氏は、同社が製油所(北海道室蘭市)で実施した調査事例を取り上げ、同社の蒸気システム最適化プログラム(SSOP)の特徴や蒸気システムのエネルギー効率化へのステップについて詳しく紹介しました。また、蒸気管理においては、全体の蒸気バランスと蒸気の最適化が重要であり、それによりCO2排出量削減やエネルギー効率化、コスト削減が図れることを強調しました。最後に、蒸気システムの更なる理解向上の参考となるよう、同社がウェブサイトに掲載している参考情報や、TrapManを使用した調査の様子をVTRで紹介し、現場での調査時の留意点等についても説明しました。

質疑応答では、参加者から、蒸気管理に関する更なる情報の入手先、TrapManの調査対象や、それを使用した調査や分析における運用上の制約等の質問が寄せられ、専門家がそれらに回答をしました。

閉会セッションでは、IGES関西研究センタープログラムディレクター小嶋氏は、TLV社の専門家による講義に感謝の意を表しました。同氏は、この研修で学んだことが参加者の業務で活かされること、そしてJITMAPの活動がCOP26でインド政府が表明した2070年までのネットゼロ(温室効果ガス(GHG)純排出ゼロ)の目標を達成するための取り組みへの貢献となることへの期待を述べました。さらに、本研修は、兵庫県とグジャラート州の覚書に基づく交流促進のための活動の一環として兵庫県の支援で実施し、今後も、両州の交流の発展に寄与していくことが紹介されました。
 

イベントの詳細

日時
2021年11月17 日 (インド時間11:30 – 13:00、日本時間 15:00 – 16:30)
会場

オンライン

共催
マハラシュトラ州エネルギー開発公社(MEDA)
アンドラ・プラデシュ州省エネルギー委員会(APCECM)
使用言語
英語
アジェンダ

発表資料

セッション1: 開会セッション
11:30-11:50 歓迎の言葉 Girish Sethi(エネルギー資源研究所(TERI) エネルギー部門 シニアディレクター)  
  背景説明 JITMAPの概要紹介
濱口 俊典(IGES 関⻄研究センター プログラムマネジャー)
PDF (915KB)
セッション2: テクニカルセッション1
11:50-12:30 講義

蒸気システムのエネルギー効率化-インドと日本の経験から

  • 中島 孝治(TLV International Inc. インド、ラテンアメリカ、南アフリカ、中東ゼネラルマネージャー)
  • Peush Jaitly(TLV PTE LTD インドオフィス ゼネラルマネージャー) 
 
セッション3: テクニカルセッション2
12:30-12:55  

検査ツールや省エネ機器のビデオデモンストレーション、質疑応答

  • 中島 孝治(TLV International Inc.)
  • Peush Jaitly (TLV PTE LTD.インドオフィス)
 
セッション4: 閉会セッション
12:50-13:00 閉会挨拶 小嶋 公史 (IGES 関⻄研究センター プログラムディレクター)  

写真

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