気候変動分野における途上国支援に対する測定・報告・検証(MRV)の運用に向けて: 資金、技術およびキャパシティビルディングの視点から

2011-05
ポリシーレポート
気候変動分野における途上国支援に対する測定・報告・検証(MRV)の運用に向けて: 資金、技術およびキャパシティビルディングの視点から

気候変動分野における次期枠組み交渉では、2007年に採択されたバリ行動計画を一里塚として議論が進められている。このバリ行動計画に基づく数ある交渉議題の中でも、条約締約国が掲げる温室効果ガスの排出削減目標および削減行動(緩和策)に対する透明性を確保することを目的とした測定・報告・検証(MRV)の構築と具体的な仕組みの設計が、主要交渉議題の一つと位置付けられてきた経緯がある。しかしながら、このMRVの概念が、これら条約締約国におけるGHG排出削減としての緩和の側面に対して適用されることのみならず、途上国締約国に対して供与される支援の側面についても同様に適用されることが共通認識となっていることはあまり知られていない。この途上国支援に対するMRVは、2010年に採択されたカンクン合意において明示的に言及されている。

MRVの制度構築を巡るこれまでの交渉の進捗を概観すると、主にGHG排出削減を主眼とした緩和分野で進展が見られており、他方の途上国支援のMRVの議論は相対的に進捗が遅い。しかしながら、条約締約国によるカンクン合意の着実な実施を追求するにあたっては、この途上国支援に対するMRVの詳細設計についても検討が進むことが想定される。このため、本書では、途上国支援に対するMRVに着目して、途上国支援を構成する資金、技術およびキャパシティ・ビルディングの支援項目について、それぞれ交渉の経緯を概観する。更に測定方法、報告制度やモニタリング・評価などMRVに関連する既存の仕組みを整理し、MRVの仕組みを運用するにあたっての考え方について分析することを目的とした。なお、気候変動分野における途上国支援に対するMRVの概念は、開発援助の評価に通じる面もある。本書では、こうした開発援助分野での既存の評価の取組を認識しつつ、気候変動分野に対する支援に対してどのようなMRVの仕組みが可能であるのか考察する。

第1章では、資金支援の要素についてどのようにMRVの視点を適用できうるのか考察を行った。本章では、先進国から途上国へ供与される資金供与のプロセスにおいて、確保したい透明性の対象範囲や支援の側面に応じて異なるMRVの形態やオプションが考えられることを示す。さらに、それぞれのMRVのオプションにおける長所・短所を抽出し、MRVを運用化した際の報告主体や利用可能な既存のツールについて検討を行った。

第2章では、途上国締約国への支援形態のうち、技術の要素について、これまでの交渉の経緯や技術サイクルを概観する。また、MRVの観点から、特にこれまでの取組の中で構築されてきた、技術移転の枠組みの効果的な実施を測定するための実績評価指標について解説する。その上で、技術開発・移転の支援に対するMRVの運用化のあり方について考察した。

第3章では、途上国締約国への支援形態のうち、キャパシティ・ビルディングの要素について、その概念的整理および取組の形態について整理を行った。特にキャパシティ・ビルディングが有する分野横断性や資金・技術支援と比べた際の定性的な性質について明らかにした上で、キャパシティ・ビルディングのMRVを行う際に関連の深いものとしてモニタリング・評価が参考となる。その上で、これまでの実務上の検討や気候変動交渉での議論に立脚しつつ、考えられるMRVのあり方について考察した。

上記に挙げた気候変動分野における途上国支援のいずれの要素についても、一定の透明性を確保し、支援全体の向上に貢献することを可能とする、促進的な性格を持つ取組であることを強調する。その上で、途上国支援に対するMRVの仕組み自体は、いずれの支援項目においても、透明性の範囲の拡大や最終的な支援の全体像の把握のために、段階的な発展を求めていくことが望ましいと考えられる。

著者:
Kato
Makoto
Mizutani
Yoshihiro
日付: