アジア地域における液状廃棄物の適正管理のための制約条件の類型化および代替システムの評価

委託報告書

本研究では,アジアの諸都市におけるフィールド調査に基づき,地域ごとの特色の適切な把握,汎用性を踏まえた系統だった制約条件の類型化,技術的な制約条件の整理と途上国における液状廃棄物処理システム整備の基盤情報の体系化,さらに,現地の制約条件に基づいた効果的な液状廃棄物管理戦略を構築する手順の提案を目指した。主な成果は以下の通りである。
・ KJ 法を援用した参加型手法により,各都市の多様なステークホルダーの参加の下,液状廃棄物管理における潜在的な制約条件を包括的に 9 分類した。データの制約の厳しい途上国都市において制約条件を数値化する方法を構築し,8 都市を対象に数値化およびポートフォリオ化を行うことで液状廃棄物処理システム整備の基盤となる制約条件を体系化した。さらに,都市比較を通じて各都市における特徴的な制約を明らかにした。また,地下水汚染と液状廃棄物管理の関係を検討し,オンサイト処理施設の適切な利用が重要であることなどが示唆された。
・ 重点調査では,ハノイにて,都市レベルでの液状廃棄物ストリームおよび都市のリンフローを明らかにし,液状廃棄物管理を定量的に把握した。さらに,都市化に伴う廃棄物管理の変化が予想された郊外の特定集落において,複数の代替衛生システムの導入効果をマテリアルフローモデルにより明らかにした。クルナ・スラム地区にて,バイオガス処理を核とした衛生システムを提案し,実証調査を通じて屎尿資源の活用が衛生改善意識を形成するインセンティブとなる可能性を示した。さらに,腐敗槽が広く利用されるアジア諸国にて,腐敗槽汚泥管理の実態を明らかにした。
・ 液状廃棄物管理のための技術・システムのデータベース化を行うと共に,日本の液状廃棄物管理の経験を整理した。途上国における液状廃棄物処理システム整備を効果的に進めるためのツールとして,各制約条件とマッチングした技術・システムの選択を支援するためのアルゴリズムを開発した。さらにこれを重点調査の 2 地域に適用したところ,重点調査の結果と整合する技術システムが高評価となり,本アルゴリズムの妥当性・有効性が示された。
以上,本研究を通じて,データの整備されていなかったアジア諸国において,液状廃棄物管理上で有用な定性・定量情報の整備がすすめられた。さらに,制約条件の類型に基づく現地情報の体系化を行い,ポートフォリオ化を行うことで,その体系的な理解が可能となった。最後に,制約条件情報を開発したアルゴリズムにインプットすることで候補となる代替技術・システムを選択し,重点都市をケースにアルゴリズムの妥当性を検証した。これら一連のプロセスは,現地の多様な制約に基づいた液状廃棄物管理戦略構築の手順として提案される。

著者:
藤井
滋穂
原田
英典
酒井
河井
紘輔
河村
清史
蛯江
美孝
岡城
孝雄
田中
周平
Nguyen Pham Hong
Lien
神保
有亮
中野
一郎
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