科学から政策へ、観測から行動へ -環境研究総合推進費S-22「気候変動緩和に向けた温室効果ガスと大気質関連物質の監視に関する総合的研究」について-

2025年1月24日(金) 14:00~16:00
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極端気象などの気候変動影響が深刻化する中、二酸化炭素(CO2)に代表される温室効果ガス(GHG)排出の大幅削減、そして人為排出を正味でゼロとする脱炭素社会の実現は喫緊の課題となっています。しかし、パリ協定をはじめとする対策が進められているにもかかわらず、大気中のGHG濃度は低下する兆候を見せていません。近年の分析により、各国が排出しているGHG量の報告値には不確実性が依然として大きいことが指摘され、それぞれが実施している排出削減を裏付ける科学的根拠は未だに薄弱であることが重大な問題となっています。

一方、気候変動に関する理解が進み、パリ協定の1.5℃目標達成には、CO2だけでなくメタン(CH4)や一酸化二窒素(N2O)などGHG全般の削減が必要であることが認識されるようになりました。さらには、短寿命気候強制因子(SLCF)と呼ばれる大気質関連物質、例えば窒素酸化物(NOx)やブラックカーボン(火災起源のスス)、代替フロン物質の1種であるハイドロフルオロカーボン(HFC)などの削減も、大気汚染を防止するだけでなく気候変動対策としても相乗効果があることが明らかとなっています。

気候変動に関連するこれら大気中の物質を包括的に監視することは、緩和に向けたすべての対策・政策において科学的基礎となる重要な活動です。そこで、 精密な大気観測とモデル分析によって気候変動関連物質の排出・吸収を監視し、科学的データを提供することで環境政策を支援することを目的とした新たな研究プロジェクトが発足しました。本プロジェクトは、2024〜2028年度の5年間、環境研究総合推進費のうち重要度が高いテーマに取り組む戦略課題の1つ(S-22)として実施されます。

本ウェビナーでは、S-22研究プロジェクトの内容をご紹介します。

プログラム

14:00-14:05開会司会:石川 智子(IGES 戦略マネージメントオフィス ナレッジ・コミュニケーション ジョイントディレクター) 
14:05-14:15 S-22研究の目的・全体構成について
伊藤 昭彦(東京大学大学院農学生命科学研究科 教授)
 
14:15-14:35テーマ 1観測に基づくGHGおよび関連物質の地表面フラックス早期評価システムの構築
丹羽 洋介(国立環境研究所 地球システム領域物質循環モデリング・解析研究室 主幹研究員)
 
14:35-14:50テーマ 2予測モデルおよび逆推定モデルを用いた全球規模での主要3種GHGに関する排出・吸収量の研究
羽島 知洋(海洋研究開発機構 グループリーダー代理)
 
14:50-15:05テーマ 3吸収源を含む地表GHGおよび関連物質収支のボトムアップ評価に関する研究
伊藤 昭彦(東京大学大学院農学生命科学研究科 教授)
 
15:05-15:20テーマ 4GHGおよび関連大気物質の監視データの環境対策・政策への効果的な反映に関する研究
田邉 清人(地球環境戦略研究機関 上席研究員)
 
15:20-15:35 S-22をとりまく国際的な研究動向
丹羽 洋介(国立環境研究所 地球システム領域物質循環モデリング・解析研究室 主幹研究員)
 
15:35-16:00Q&A  
閉会