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環境ビジネスは、市場経済における一つの産業セクターであると認識されがちである。しかし、環境ビジネスの本流は、市場経済においてではなく、政府でも市場でもないサードセクターにあり、地域に根ざした組織によって担われるだろう。実際、そのような動向が世界各地で現れつつある。
非営利組織や協同組合等で構成される地域に根ざしたサードセクターは、市場による「交換の経済」や政府・自治体による「再配分の経済」と関係しながら、「互酬の経済」を構築しようとする。市場には「市場の失敗」があり、政府・自治体には「政府の失敗」がある中、市場か政府か、といった単純な構図で解決の方策を見出すことは困難であり、サードセクターの役割への期待が高まっている。
サードセクターの歴史は古いが、1990 年代になって、その性質が変わりつつある。すなわち、「社会的企業」といわれる概念を持った組織が福祉ビジネスを中心に発達しており、サードセクターは、新たな展開を遂げつつある。
一方、市場経済においては、市場の失敗を修正すべく、外部不経済の市場経済への内部化が図られてきた。そして、企業の社会的責任(CSR)等の進展によって、パートナーシップに取り組み、サードセクターを支援するようになってきた。また、政府・自治体もニューパブリックマネジメントに取り組んでおり、民間企業やサードセクターへアウトソーシングを進めている。
本ペーパーでは、先ず、1970 年前後に始まったエコロジカルな運動と、1990 年代から勢いを増す社会的企業の登場との関連付けを試みる。そして、社会的企業による環境ビジネスが、どのような状況にあるのか、日本を取り上げて分析を行った。日本の一村一品運動が、世界の途上国に普及しつつあるように、日本における地域に根ざした環境ビジネスも世界各地で参考になると考えられる。最後に、このようなビジネスが普及するための課題についても概観した。
Remarks:
English version available at:
http://pub.iges.or.jp/modules/envirolib/view.php?docid=523
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