持続可能なライフスタイルのLCA研究と政策デザイン

Event: 日本LCA学会テレカンファレンス企画セッション「持続可能な消費と生産パターン転換のための政策デザインとLCA」
Date: 2020年3月12日
プレゼンテーション

近年,パリ協定の実施,ネット・ゼロを宣言する自治体の増加,SDGsをはじめ,環境資源制約を踏まえた目標ベースの取り組みが主流化している。環境負荷の低減と生活の質の両立を目指す概念である持続可能なライフスタイルへの転換に関し,近年は消費者行動に関する多様なデータが入手可能となってきており,これらと組み合わせたライフサイクル環境負荷や上流側の資源利用量を明らかにすることができるLCA研究(ここでは広く産業連関分析,マテリアルフロー分析等も含む広義の手法群)の重要性が増している。プラネタリ―バウンダリーや脱炭素といった目標に至るには,個別製品の改善に依存した対策には限界があり,リバウンド効果等も踏まえた生産消費システムの転換が必要とされる。一方,既存研究は,直接排出や特定の製品を対象とするものが中心であり,多様な消費領域を横断的に扱い,ライフサイクルの観点から現状把握のみならず転換へ向けた道筋を示す研究が十分に行われていない。S-16 テーマ3では「アジアにおける資源環境制約下のニーズ充足を目指す充足性アプローチへの政策転換」研究を実施しており,本発表ではIGESが関連して実施してきた「1.5℃ライフスタイル」調査・政策研究等を基に,持続可能なライフスタイルへの転換に向けたLCAと政策デザイン研究の可能性を提示した。持続可能なライフスタイルへ向けた政策デザインにLCA・産業エコロジー研究が貢献できる要素は大きいと考えられる。ただし,現状分析とそれに基づく含意の提示に留まらず,1)目標設定やそのための経路の提示等の規範的な研究,2)政策科学・行動科学等の異分野との連携による研究の重要性が高まっている。さらに、パリ協定やSDGs等の目標へ向けた転換が求められる中,これと生活の質を両立できうるライフスタイルや消費パターンが社会として描けていない。一人一人や地域に合わせた転換像は多様であるが,1)現状分析,2)目標設定,3)選択肢の特定,4)経路の探索,5)施策の特定・評価を通した政策デザイン研究が求められている。消費行動・ライフスタイルは,個人の意識・意図のみではなく,環境要因(インフラ,製品の入手可能性,制度等)により大きく規定されている。そのため,持続可能なライフスタイルのための施策には,1)個人および集団を対象とする行動変容施策,2)効率改善等の供給システム施策に加え,3)インフラ整備やインセンティブ等の環境要因施策,4)目標設定やモニタリング等の戦略・計画が領域横断・整合的にとられるべきである。さらに,環境負荷の大幅削減へ向けたライフスタイル転換のためのエビデンスに基づく政策形成には数%の改善を超えた取り組みが必要であり,厳密な統計手法による定量的な裏付けに加え、Living Lab等のアプローチを取り入れた柔軟なエビデンス形成が求められるであろう。

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