2021年10月31日から11月12日にかけ、英国・グラスゴーでCOP26が開催されます。COPとは、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)を批准するすべての国(締約国)が参加する会議であり、最高意思決定機関です。今回は26回目の締約国会議なのでCOP26と呼びます。
COP26に向け各国が相次いで温室効果ガスの新たな排出削減目標を表明するなど、パリ協定の目標達成にむけて世界の動きが加速し、その動向はメディアでも頻繁に取り上げられています。このページでは、COPについての基礎知識や、知っているようで知らない情報、さらにCOPにまつわる豆知識などを集めました。来たるCOP26に備えて押さえておきたいポイントを整理したいという方も、COPについて改めて知りたいという方も、ぜひご活用ください。
COP26について
質問1 ずばり、COP26の注目すべきポイントはどこですか?
回答1 交渉会合の注目ポイントは、パリ協定の実施に必要なルールへの合意です。『パリ協定第6条「市場メカニズム」に関するルール制定』や『「共通タイムフレーム」と呼ばれる自国が定める貢献(Nationally Determined Contribution: NDC)の目標期間を5年とするか10年とするか』といった未決定の議題に合意できるかが焦点となります。その他、パリ協定の締約国による報告制度である透明性枠組みの詳細なルールが議論されます。特に、パリ協定第6条市場メカニズムに関するルールは、日本でも注目されているオフセット・クレジットの活用方法や自主的炭素市場のルールに影響を与える可能性があります。
COP26議長が掲げる重点課題にも注目です。COP26議長は気温上昇を1.5℃に抑えるために、1)石炭の段階的廃止の加速、2)森林破壊の削減、3)電気自動車への切り替えの加速、4)再生可能エネルギーへの投資奨励を重視しています。また、自然保護のための適応や気候変動対策への資金も一つの重要な目標として掲げています。こうした目標はCOPの議題ではないので、締約国による交渉会合は行われませんが、COP決定文書に含まれる可能性が高いといえます。例えば石炭について、英国が2021年のG7及びCOP26議長国を務めており、また、脱石炭を重要課題として掲げていることを踏まえると、COPで採択される決定文書の冒頭部分で「2021年6月に開催されたG7首脳級会合で合意された声明文(対策が講じられていない石炭火力発電への支援停止に言及した内容)を歓迎する」といった文言が入る可能性はあります。また、COP26開催期間中、各国や国際機関等がこれらの重視されている点について、イベントで議論したり、新たな政策や目標を発表したりすることが想定されます。
質問2 COP26では様々な議論が行われるようですが、誰が参加するのですか?
一般の参加者は?日本からは?
回答2 条約締約国(196か国及び欧州連合)、国連及び関連組織・機関、報道機関、承認済み非営利オブザーバー組織が会議に参加できます。交渉関係の会合は、一般には公開されていませんが、一部の会合(全体会合、プレス会合など)はライブやオンデマンドで配信されています。
2021年11月に英国・グラスゴーで開催されるCOP26はオンラインと対面の両方で実施が予定されており、交渉会合を含めて会議の模様はオンライン媒体を通じて、一般に公開される可能性があります。 日本からは、関係省庁で構成される日本政府代表団が交渉に参加します。
また日本の報道機関やオブザーバー組織も参加します。近年、非政府主体の参加が活発であり、COP26では、国連により承認された非営利オブザーバー以外の参加者も参加できる会場(グリーンゾーン)が設置されます。
質問3 世界中から多くの人が集まり気候変動問題について議論するのですね。COP26に向けて締約国はどのような準備をしていますか?
回答3 COPに向けて交渉会議や様々な重要なイベントが開催され、日本も積極的に参加しています。COPに先立ち、毎年5月~6月頃に補助機関会合が開催され、気候変動に関する国際交渉が行われます。また、気候変動対策が益々重要視されていることから、G7、G20などの国際会議でも気候変動問題について協議しています。COP26に向けては、4月にバイデン米大統領が主催した気候リーダーズサミットも大きな注目を集めました。このような機会は各国の気候変動に対する決意を再確認し、取り組みを強化・促進させると同時に、COPで合意に至るための意見交換の役割も果たしています。なお、9月30日から10月2日に、COP準備会合として、イタリア・ミラノでプレCOPが開催されます。会議には、35〜40カ国、UNFCCC事務局の代表者等、多くの利害関係者が出席予定です。
質問4 COP26に向けた動きがよくわかりました。日本でも脱炭素の動きが活発になっていますが、日本の脱炭素戦略はどのくらい世界の動向の影響を受けていますか?
回答4 日本の脱炭素戦略とパリ協定は密接に結びついています。パリ協定において日本を含む締約国は、「世界の平均気温上昇を2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求する」ために「今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出量の実質ゼロを達成する」ことに合意しました。
菅首相が2020年10月の所信表明にて「2050年温室効果ガスの排出実質ゼロ」を宣言したことや、日本の「2030年度に2013年度比で46%削減し、50%の高みに向けて挑戦する」という目標は、パリ協定の目標を受けて設定されました。
COP豆知識
質問5 COPの開催地はどのように決まるのでしょう?
回答5 開催を希望する締約国の申し出により決定します。国連の5つの地域(アフリカ、アジア太平洋、中南米・カリブ、中・東欧、西欧・その他)の間で、交代で開催しています。過去10回の開催の傾向を見ると、アフリカ地域→アジア太平洋→中・東欧→中南米・カリブ→西欧の順に開催されています。COP27はアフリカ地域での開催が検討されています。申し出を受け入れるか否かは、COPが決定します。申し出がない場合は、国連気候変動枠組条約の事務局があるドイツのボンで開催されます。
通常開催国が議長国を務めますが、2019年のCOP25では議長国であるチリが、国内の反政府デモが続いたことによりサンティアゴでの開催を断念し、スペイン政府の支援により、マドリッドにてCOPを開催しました。
質問6 議長国になると何ができるのでしょうか?
回答6 通常COP議長は議長国の気候変動を担当する大臣が務めます。任期は、COP開会式から次のCOP議長が就任するまでの間です。COP26が開始するまでのCOP議長は、COP25議長でチリ環境大臣であるカロリーナ・シュミット氏が務めています。COP26議長は、英国のアロック・シャルマ氏(ビジネス・エネルギー・産業戦略大臣)が務める予定です。
COP議長は、会議の日程調整、暫定的な協議事項リスト(アジェンダ)の作成、COPの開会及び閉会の宣言、各国で文書に合意するための調整など、会議進行に欠かせない権限を持ちます。
質問7 COPで議論する内容はどのように決まりますか?
回答7 COPでの議論はアジェンダと呼ばれる協議事項リストに沿って行われます。暫定的なアジェンダはCOP議長の合意のもと、事務局が作成し、COP開会式で締約国の全会一致(コンセンサス)により採択されます。 暫定アジェンダには以下が含まれます。
- 条約に規定される事項
- 前回のCOPでアジェンダに含むことが決定した事項
- 前回のCOPで合意に至らなかった事項
- 締約国が提案した事項
- 予算案、会計・財務上の取り決めに関する事項
COP26の暫定アジェンダは、UNFCCC事務局のホームページで公開されています(https://unfccc.int/sites/default/files/resource/cp2021_01_adv.pdf)。
質問8 COP決定はどのように決まりますか?
回答8 全会一致(コンセンサス)をもって決定します。決定を行うためには締約国の3分の2の出席を必要とします。