第5回IGES賛助会員セミナー:環境報告書の課題と可能性

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Volume (Issue): No.013
その他アーティクル
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第 5 回 IGES 賛助会員セミナー「環境報告書の現状と未来」が 2003 年 3 月 13 日(木) フォーラムよこはまにおいて開催された。 國部克彦プロジェクトリーダー(神戸大学教授)による問題提起では、環境報告書にお ける情報開示の継続的な課題として、比較可能性と信頼性、新たな課題としてサスティナ ビリティ報告書への展開という 3 つの問題が提示された。 次に、平山主任研究員より東証一部上場企業への環境報告書発行状況調査と、2000 年、 2001 年に発行された環境報告書の内容分析の結果が紹介された。2002 年においては東証一 部全上場企業 1496 社のうち約 25%(374 社)が環境報告書を発行している。また、発行 していない企業に発行意思を尋ねたところ、作成予定ありと回答したのは 61 社、予定なし は 129 社であった。 次に、北村上席客員研究員より自動車・ビール・化学の 3 業種を対象に行った、環境報 告書の比較可能性に関する調査の結果が紹介された。比較可能性は高まってきているが、 現状では限界があり、環境報告書の対象範囲の明確化・統一化、数値データの算出方法や 単位表示方法等を共通化することの必要性が報告された。 次に、梨岡主任研究員より環境報告書における第三者意見書の機能に関して、1998 年か ら2001年の環境報告書に掲載された第三者意見書を対象として行った分析調査結果の報告 が行われた。この調査では意見書を何らかの保証を行う「検証」と何らかの評価等を行う 「所見」の2つに分類して分析を行った結果、第三者意見書の実務では機能の異なるもの が混在しており、現状は「検証」における保証レベルは様々であり、作成基準・保証基準 が存在しないという限界が浮き彫りにされ、「所見」については目的・内容・レベルともに 多様であることがわかった。 その後のパネルディスカッションでは、まず松下電器産業㈱の菅野伸和氏より、環境報 告書を中心に社会とのコミュニケーションをはかることが、持続可能な社会の構築に不可 欠との考えが示された。さらに、㈱損害保険ジャパンの瀬尾隆史氏より、環境・経済・社 会というトリプルボトムラインから企業を評価しようとする動きが加速しており、環境報 告書においても社会性等を取り入れていく必要性が示された。その後、会場からの質問を 含め、活発な議論が行われた。

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