11月1日、インドネシア・メダン市にて開催されたインドネシア・マレーシア・タイ成長トライアングル(IMT-GT)第5回グリーンシティ市長会議において、インドネシア・パダン市は、同市の固形廃棄物総合管理行動計画および調査報告書を発表しました。公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)は、本行動計画の策定に大きく貢献しました。
『Action Plan on Integrated Solid Waste Management in Padang City(仮訳:パダン市における固形廃棄物総合管理行動計画) (2023-2030)』は、パダン市を環境に配慮した都市として発展させるために、持続可能な廃棄物・資源管理を取り入れつつ、廃棄物政策を実施に移す上での方向性と全体的なビジョンを示しています。本行動計画は、天然由来の原材料使用の削減または最適化(Reduce)、原材料や製品の再利用(Reuse)、使用済み原材料や製品の新しい製品への転用(Recycle)、使用済み原材料や製品を材料やエネルギーといった形で活用(Recovery)、長く使うための製品修理(Repair)という5Rに基づき、パダン市における循環経済の構築を目指すものです。今後、スマトラ島の他の自治体やインドネシア全土でこうした5Rに係る行動計画の展開が期待されています。
一方、『Study on Integrated Solid Waste Management: Padang City, Indonesia (仮訳:固形廃棄物総合管理に関する調査:インドネシア・パダン市)』と題された調査報告書は、パダン市の廃棄物管理の現状を理解するため、廃棄物の流れ、発生量、廃棄物組成に係る科学的かつ最新のデータおよび地域の知見を示すほか、廃棄物資源に携わる主要なステークホルダーの活動や役割について紹介しています。また、廃棄物の扱いに関する地域住民の意識や慣習に焦点を当てた調査結果も示しています。この調査報告書は、パダン市における上記の廃棄物総合管理行動計画の策定に貢献しました。
インドネシアの第4次中期計画(2020-2025)では、自治体における固形廃棄物管理システムの策定を国家優先事項のひとつに位置付けています。同時に、「2017-2025年の固形廃棄物管理に係る国家政策および戦略(JAKSTRANAS)」では、2025年までに廃棄物削減率30%、廃棄物適正処理率70%の達成を目標としているほか、プラスチック廃棄物や海洋汚染対策の重要性に鑑み、インドネシアは大統領規則第83/2018号と「海洋プラスチックごみ対策国家行動計画」を制定し、2025年までに海洋プラスチックごみの70%削減を目標としています。
IGESは、国連環境計画(UNEP)および日本国環境省の協力のもと、調査、研修、能力開発、セミナーやワークショップの開催、ナレッジプロダクトの制作など、技術面および資金面でパダン市を支援しました。本行動計画および調査報告書の作成にあたっては、パダン市長およびパダン市環境庁が主導的役割を果たしたほか、学術機関、民間セクター、NGO、そして数々のコミュニティグループなど、地元の主要なステークホルダーが積極的に参画し、パダン市における国家廃棄物政策の目標達成に向けた取り組みの実施を後押ししました。
メッセージ
パダン市 ヘンドリ・セプタ市長
全能の神アッラーが、本行動計画策定を促進くださったことに対し、その恵みと慈悲ゆえに、その存在に賛美と感謝を捧げます。この行動計画には、パダン市の2030年廃棄物30%削減という目標達成に向けて実施すべき活動・作業計画が示されています。パダン市とともに、パダン市の廃棄物管理に有益となる本行動計画策定に貢献くださったアンダラス大学、インドネシア環境フォーラム(WALHI)、国連環境計画国際環境技術センター、IGES-UNEP 環境技術連携センター (CCET) 、インドネシア・マレーシア・タイ成長トライアングル (IMT-GT)の関係各位にお礼を申し上げます。
IMT-GTサブリージョナル協力センター(CIMT)ディレクター フィルダウス・ダーラン氏
CIMTは、パダン市の廃棄物総合管理行動計画策定にあたり、IGES-UNEP 環境技術連携センター(CCET)と協力できたことを嬉しく思っています。このパイロットプロジェクトは、同市が 「スマートシティ 」になるためのアジェンダを促進するものです。このプロジェクトが成功すれば、IMT内の他の都市にも展開することができます。廃棄物総合管理は、2019-2036年のIMT-GTの持続可能な都市開発フレームワークで示されたIMT-GTサブリージョン協力における優先分野のひとつです。このプロジェクトは、IMT-GTのビジョン2036に沿った持続可能なサブリージョンとなるための強いコミットメントを意味するものです。このプロジェクトを成功に導いた、すべてのステークホルダー、特に技術支援および専門知識を提供したCCET、そしてパダン市のリーダーシップと効果的なコーディネートおよび実行に対するコミットメントに敬意を表し、称賛を送りたいと思います。
公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES) 高橋康夫所長
今日、世界が直面している気候、生物多様性、汚染という三重の危機を克服するためには、自治体における廃棄物の健全な管理が必達であり、インドネシアの都市も例外ではありません。この観点から、IGESはUNEP、日本国環境省、IMT-GT、そして国や地方のステークホルダーと連携の上、科学的根拠に基づいたパダン市における廃棄物総合管理行動計画の策定を支援してきました。これは、2030年までに持続可能な廃棄物管理ならびに資源効率化を達成するための政策の方向性と活動を示しています。また、この行動計画の実施は、廃棄物管理に係る国家政策で設定された目標の達成に貢献すると信じています。
今後、IGESは国内外の他のパートナーとの協力のもと、インフラ整備に必要な技術支援や廃棄物リサイクル・リカバリー・処理のための資金調達、制度設計・政策策定、啓発、教育に係る能力開発活動を行い、パダン市行動計画の実装への貢献を続けてまいります。さらにIGESは、パダン市およびIMT-GTと協力して、その経験や教訓をインドネシア国内の他都市やその他の国々にも共有する予定です。
行動計画および調査報告書は、以下のリンクからご覧いただけます。
Action Plan on Integrated Solid Waste Management in Padang City (2023-2030)
Rencana Aksi Pengelolaan Sampah Terpadu di Kota Padang (2023-2030)