「パリ協定6条実施パートナーシップ(A6IP) アドバイザリーグループ第2回会合」開催

2025年4月8日
プレスリリース

公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES=アイジェス)が事務局を務めるパリ協定6条実施パートナーシップ(Paris Agreement Article 6 Implementation Partnership: A6IP)センターは、「A6IPアドバイザリーグループ第2回会合」を2025年3月11日~12日に東京で開催しました。

A6IPアドバイザリーグループ会合は、パリ協定6条(市場メカニズムを通じた国際協力)に携わる主要な実務者とともに、6条の実施状況を共有し、実施強化に向けた課題や今後のA6IPの運営等について討議する場です。2024年11月の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第29回締約国会議(COP29)において6条の交渉が完了し、完全運用化が実現して以降初めてとなる今回の会合には、各国担当者のほか、国際機関、実施支援機関、民間企業等の関係者約90名が参加しました。

本会合では、6条の実施状況(温室効果ガスの削減・吸収プロジェクトおよびその可能性)、事業形成・実施における成功事例や事業経験などを共有しました。さらに、民間が独自に実施する排出削減クレジット認証制度を6条のルールに沿って活用するために必要な事項の検討を行ったほか、6条に基づく事業形成・実施における課題と今後の方向性について議論を深めました。その上で、A6IPの2025年度活動計画案および中長期活動計画案(2030年~2050年)について意見交換を行いました。

A6IPセンターでは、温室効果ガスの削減・吸収に関するプロジェクトのさらなる拡大・加速を重要課題と位置づけ、体制整備・能力構築を一層支援し、6条に基づく取り組みを世界各国へ展開していきます。

本会合の主な議論

(1)パリ協定6条におけるグローバルな取り組みと今後の可能性について共有
A6IPセンターより、COP29にて同センターが発表した「パリ協定6条実施状況報告書」に基づき、パリ協定6条のグローバルな実施状況について紹介し、今後の可能性や対処すべき課題等について議論を行いました。パリ協定6条の実施に向けた関心は高いものの、二国間での6条活用プロジェクトは286件に留まっており(2024年11月時点、「パリ協定6条実施状況報告書」より)、今後のクレジット需要に応えていくには、様々なアプローチ、基準、方法論、温室効果ガスの排出量およびその変化を定量的に計る一連のプロセスである測定・報告・検証(MRV)システムを調和させつつ、実際のプロジェクト経験を共有し、より多くの民間事業者の参加を促す必要があることを確認しました。

(2)プロジェクト開発の成功事例とビジネスマッチングの経験について共有
クレジット創出の具体例として、メタンや交通分野の排出削減等のプロジェクトを共有しました。クレジット創出に至る事業形成・実施の成功要因として、関係者のコミットメント、ガイドライン等を通じたルールの明確化、透明性の高いシステム、実践を通じた学習等について言及がありました。一方で、資金調達、ルールの複雑さ、政府間交渉の状況に影響を受けやすいことなどを課題として指摘しました。

(3)パリ協定6条に基づく信頼性の高い民間クレジット制度の利用促進について議論
A6IPセンターより、2023年4月のG7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合のコミュニケにて採択された「質の高い炭素市場原則」について発表を行いました。参加者からは、パリ協定6条の実施に向けて民間が実施する排出削減クレジット認証制度の活用やその報告支援等の促進が必要とのフィードバックがありました。

(4)パリ協定6条のプロジェクト形成促進、実施強化に向けた課題とアプローチについて討議
A6IPセンターより、パリ協定6条の実施促進に向けた能力構築活動および「パリ協定6条実施状況報告書」に関する重要事項について情報共有を行い、A6IP活動の潜在的な可能性に関する討議を通じて、今後検討すべき事項として以下を提示しました。

  • パリ協定6条に関する知識に加え、京都議定書に基づくクリーン開発メカニズム(CDM)や二国間クレジット制度(JCM)などから得た経験やノウハウの蓄積
  • ケーススタディや優良事例の集約・情報公開、ステークホルダーとの対話促進
  • パリ協定6条の実施に貢献する気候変動対策資金を通じた方策検討

(5)A6IPの2025年度活動計画と中長期活動計画について共有
A6IPセンターより、パリ協定6条に沿ったプロジェクト開発と実施を中心に据えた2025年度の活動計画案と中長期活動計画案について発表を行いました。参加国および機関からは、ネット・ゼロに向けてA6IPの各パートナーおよびA6IPセンターとして取り組むべき課題や活動目標のあり方について様々な意見が共有されました。

参加国等

英国、イタリア共和国、インド共和国、インドネシア共和国、オーストラリア連邦、カナダ、シンガポール共和国、スウェーデン王国、タイ王国、チリ共和国、ドイツ連邦共和国、ニュージーランド、ノルウェー王国、バハマ国、フランス共和国、アジア開発銀行(ADB)、欧州復興開発銀行(EBRD)、Climate Action Data Trust(CAD Trust)、グローバルグリーン成長機構(GGGI)、経済協力開発機構(OECD)、米州開発銀行(IDB)、国際排出量取引協会(IETA)、国連開発計画(UNDP)、国連環境計画コペンハーゲン気候センター(UNEP-CCC)、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)、世界銀行、The European Roundtable on Climate Change and Sustainable Transition(ERCST)、Integrity Council for Voluntary Carbon Market (ICVCM)、Voluntary Carbon Markets Integrity Initiative(VCMI)、公益財団法人地球環境センター(GEC)、一般財団法人日本エネルギー経済研究所、Gold Standard、日本国環境省、公益財団法人地球環境戦略研究機関、A6IPセンター

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パリ協定6条実施パートナーシップ(A6IP)センター
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公益財団法人地球環境戦略研究機関 (IGES)  広報担当: 坂本
Tel: 050-5473-6105 e-mail: [email protected] 


「パリ協定6条実施パートナーシップ(A6IP)センター」について

2022年のCOP27において、日本の環境省が主導してパリ協定6条に関する能力構築を支援するA6IPを立ち上げました。また、2023年4月のG7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合を機に、6条に基づく質の高い炭素市場の早期かつ着実な構築に向けて、各国政府関係者および関係事業者等の体制整備や能力構築の促進を目的としてA6IPセンターが設立され、IGESがその事務局を務めています。2025年3月現在、86カ国、200以上の機関がパートナーシップに参加しています。A6IPセンターでは今後、COP29/CMA6で採択された最新のルールに基づき、UNFCCC事務局や世界銀行といった国際機関等と連携し、各国のニーズに応じた能力構築支援をより強化していきます。