公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES=アイジェス)と国連気候変動枠組条約(UNFCCC)京都議定書およびパリ協定事務局(以下、UNFCCC事務局)は、パリ協定6条(以下、6条)の実施支援ならびに能力構築強化に向けた戦略的パートナーシップに関する覚書(MoU)を2024年11月13日に締結しました。
本MoUの下、両機関は、パリ協定6条実施パートナーシップ(A6IP)を通じて、質の高い炭素市場の発展を促進し、野心的な気候行動を推進していきます。特に、排出削減における国際的な協力を可能にする炭素市場メカニズムなど、6条実施に向けて、各国・関係者が必要な体制整備や能力構築を進めるための資源および専門知識の共有を図ります。
■主な協力分野
- 1. 能力構築と知識共有
両機関は、A6IP参加国や関係機関の技術的能力を強化するため、6条に関する能力構築プログラムを共同で実施します。これには、地域ワークショップ、ウェビナー、その他の能力構築イベントが含まれ、6条の報告と審査、追跡、6条4項の参加、方法論、その他関連分野に焦点を当てた知識やベストプラクティスの共有も行われます。 -
2. 資源の動員と技術支援
両機関は、A6IP運営のための金銭的・人的資源を動員し、技術支援を提供します。これには、会議やトレーニングセッションのための運営支援や、実施プロセスに関与するさまざまな関係者の調整が含まれます。 -
3. 協力的な取り組みの促進
本MoUに基づく共同地域活動は、UNFCCC地域協力センター(RCCs)との連携を通じて実施されます。こうした活動は、6条を実施する国々や関係者の地域的な課題とニーズに応じた広範かつ包摂的な能力構築の推進を目指しています。
■将来的な目標と成果
本MoUは、両機関において、堅固で透明性の高い炭素市場の確立、気候行動における国際的な協力の強化、A6IP参加国間の知識移転や能力構築の促進といった長期的な目標を達成するための基盤となります。また、6条の実施が最高水準の環境基準を満たし、地球規模での排出削減に確実に貢献することを目指しています。
武内和彦IGES理事長は、本MoUの締結について次のように述べました。 「この協力関係は、気候変動への国際的な取り組みを深める上で重要な一歩です。IGESは、これまでもUNFCCC事務局と密接に連携してきましたが、両者の連携をさらに強化し、各国が効果的な気候行動を実現し、高い環境基準を維持できるよう、互いの知識と専門性を共有することを目指します。このパートナーシップを通じて、UNFCCC事務局および他のパートナー機関と協力しながら、より包摂的で持続可能な解決策を探り、効果的で質の高い炭素市場の促進に貢献したいと考えています。」
UNFCCC事務局のサイモン・スティル事務局長は次のように述べています。「A6IPとの協力強化を通じて、6条実施に取り組む各国への支援をより効果的に実施していきます。これにより、ばらばらに実施されてきた能力構築支援の問題を解消し、コストを削減するとともに、質の高い炭素市場の発展を加速させます。そうして、各国が6条の機会を活用し、効果的に活かせる環境を整えていきます。」
パリ協定6条実施パートナーシップ(A6IP)センターについて
2022年のCOP27において、日本の環境省が主導してパリ協定6条に関する能力構築を支援するA6IPを立ち上げました。また、2023年4月のG7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合を機に、6条に基づく質の高い炭素市場の早期かつ着実な構築に向けて、各国政府関係者および関係事業者などの体制整備や能力構築の促進を目的としてA6IPセンターが設立され、IGESがその事務局を務めています。2024年12月現在、81カ国、100以上の機関がパートナーシップに参加しています。A6IPセンターでは今後COP29/CMA6で採択された最新のルールに基づき、UNFCCC事務局や世界銀行といった国際機関等と連携し、各国のニーズに応じた能力構築支援をより強化していきます。