公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES=アイジェス)の天沼伸恵サステイナビリティ統合センター副ディレクター、エリック・ザスマン同リサーチリーダー、デヴィ・ラングレ沖縄科学技術大学院大学(OIST)進化・細胞・共生の生物学ユニット研究員による学術論文「女性・若手議員と持続可能な開発目標(SDGs)に関するパフォーマンスの関係性(日本語仮題)」*¹で、国会における女性・若手議員の割合とSDGsの進捗に正の相関関係があるとする分析結果が明らかになりました。
SDGsの推進には政策立案が不可欠ですが、立法府における女性や若年層の議員の存在とSDGsのパフォーマンスとの関係に関する研究は、これまでほとんどありませんでした。日本の国会の女性議員の割合は146カ国中133位(世界経済フォーラム「グローバル・ジェンダーギャップ・レポート2022」)、閣僚の平均年齢の高さは62.4歳で30カ国中1位(OECD「Government at a Glance 2021『Average age of cabinet members, 2018』」)となっています。本論文が、日本の議会におけるダイバーシティの推進を後押しするものとなることを期待しています。
今回の分析では、なぜ議会において女性や若手の議員が多い国ほどSDGsのパフォーマンスが良い結果となるのかという因果関係は明らかになりませんでしたが、両者の間に正の相関関係が認められました。
また、ゴール1(貧困をなくそう)、ゴール2(飢餓をゼロに)、ゴール3(すべての人に健康と福祉を)などの社会経済分野のゴールは、ゴール13(気候変動に具体的な対策を)、ゴール14(海の豊かさを守ろう)、ゴール15(陸の豊かさも守ろう)などの環境分野のゴールとトレードオフ*²の関係にあることが多くなっています。本論文は、女性や若者の登用が、これらのトレードオフを軽減しシナジー(相乗効果)を強化するような制度・政策改革と組み合わせて進められる必要があることを指摘しています。
今後もさらなる研究を進め、これらの因果関係に加え、社会経済分野と環境分野のゴール間でシナジーを生み出すための政策や多様なステークホルダーの参画の可能性などについて明らかにしていく予定です。
*¹ 原題「The relationship between female and younger legislative representation and performance on the Sustainable Development Goals (SDGs)」 Environmental Research Lettersに掲載
*²トレードオフとは、一方のゴールへの取り組みが他方のゴールに負の影響を与えること。
注釈:本研究は、環境省・(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(JPMEERF20221M03)及びJSPS科研費(23K05942)により実施しました。