世界海洋デーの本日、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)によるeラーニングプログラム「Cities and Marine Plastic Pollution: Building a Circular Economy (仮訳 - 都市および海洋におけるプラスチック汚染:循環経済の構築)」の提供が開始されました。地球環境戦略研究機関(IGES)は、本プログラムのモジュール開発に貢献しています。
世界におけるプラスチック汚染の深刻な10の河川のうち、8つがアジアにあります。そして、世界のプラスチック汚染の6割近くが、成長が著しく、廃棄物管理システムが未発達であるアジアの都市に起因しているといわれています。海洋プラスチック汚染防止には、これらのシステムの隙間を埋めるような、都市主導のアプローチおよび戦略的な行動が不可欠です。
IGESとUNESCAPは、2016年4月の協力協定(MoU)締結以降、それぞれの強みを活かしてアジア太平洋地域の環境および持続可能な開発への協力を進めてきました。2020年4月からは、日本政府が主導する「Closing the Loop」プロジェクトの下、IGESはUNESCAPのパートナーエージェンシーとして、最新デジタル技術も活用しながらベトナム、インドネシア、マレーシア、タイの4カ国の対象都市にて、プラスチック廃棄物の海洋への流出を抑制し、海洋プラスチック汚染を軽減するための活動計画を策定しています。
今回のプログラムは、その一環として、都市におけるプラスチック廃棄物管理の技術的な側面を、解決策と行動に重きをおいて実践的に解説しています。国際協力に携わる地方自治体職員や、途上国の廃棄物管理に関心のある学生、次世代のために美しい海を残したいと考える方など、実務経験や関心領域に応じて柔軟に学べるよう構成されており、すべてのモジュールが無償です。
本件について、高橋康夫IGES所長は、「プラスチック汚染と海洋ごみは、複雑かつ分野横断的な問題で、単一の解決策がすでに存在するわけではありません。グローバルから地域まで多様な関係者による強力な協業と行動が求められます。国や地方自治体も、問題の把握やポジティブなインパクトをもたらす対策について科学的知識と能力を身につける必要があるでしょう。私どもが、ESCAPおよび他機関と協力して、こうした状況に一定の回答を示し、ASEAN諸国および都市への適用の手がかりとなりうるプラスチック汚染管理に関するe-learningを開発できたことを大変嬉しく存じます」と述べています。
UNESCAP環境開発部長のステファノス・フォシュー博士は、「海洋ごみ対策について、ASEAN地域が注目されています。海を守り、『持続可能な開発のための2030アジェンダ』の野望を達成するには、残された時間はわずかであり、皆で協力しなければなりません。私たちは、地方自治体にはこの課題に立ち向かう情熱と意欲があることを知っています。ESCAPがこのe-learningで目指すのは、科学的根拠に基づいた戦略を実行できるように、利用可能な最善の技術と実践方法についてトレーニングを行い、手遅れになる前に、アジア地域でプラスチックのない水路を実現することです」と述べています。
また、梨田和也在タイ日本国大使は、「海洋プラスチックごみは、今日の最も深刻な問題の一つです。何の対策も講じなければ、2050年には海洋中のプラスチックごみの重さは魚の重さを上回り、環境や私たちの生活にとって脅威となるでしょう。また、COVID-19の大流行により、マスクや手指消毒液のボトルなど、使い捨てプラスチック製品に由来する汚染が増加しているといわれています。プラスチックごみの発生源と海洋流出の経路を特定し、プラスチックごみの環境への影響を軽減するため、皆で協力することが不可欠です」と述べています。
eラーニングプログラムはこちらより登録ください。
https://sdghelpdesk-elearning.unescap.org/thematicarea/detail?id=24