「2050年脱炭素化社会の実現」を目指す所信表明に関するコメント

2020年10月29日
プレスリリース

2020 年10月 28日(水)、公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)は、10月26日に行われた、菅総理大臣の所信表明演説で「2050年脱炭素化社会の実現」を目指すとした方針について、コメントを発表しました。

脱炭素化の方向性と時間軸を明確に示すことは、企業や投資家の長期的視点に立った経営・投資判断を支えることにつながります。また、2050年脱炭素化は、パリ協定が目指す1.5℃目標にも整合する非常に野心的な目標であるとし、総理大臣自らが2050年脱炭素化社会の実現を宣言したことを大いに歓迎するとしました。

また、IGESは今年6月に発表した報告書「ネット・ゼロという世界:2050年日本(試案)」の中で、脱炭素化社会の構築には、「あらゆる部門で、制度や慣行など必要な変革を進めていくことが求められる。これは一つの組織が単独でできるものではなく、国家的な戦略として位置づけられ、日本のすべての関係者が足並みを揃えて推進していく必要がある」 と指摘しました。これは「行政の縦割り、既得権益、そして、あしき前例主義を打破し、規制改革を全力で進める」とする、菅総理大臣の所信表明全体の方針に合致するものといえます。

一方で、新型コロナウイルスによって減速した日本経済の立て直しに向けた経済復興策は、欧州における「欧州グリーンディール」のような、経済刺激策を気候変動やその他の環境課題への対策と結び付ける対策が乏しく、令和3年度予算編成におけるグリーンディールの作り込みが急務だとしました。また、所信表明演説で「石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換する」とした点について、今後30年で脱炭素化を実現するには、高効率であっても長期的に排出を固定化してしまう石炭火力は、二酸化炭素回収貯留技術など関連技術の普及の可能性とその課題をよく吟味する必要があるとしています。

その他にも、本コメントでは、より良い暮らしと脱炭素化を両立するための具体的なライフスタイルオプションや、再生可能エネルギー普及に向けた送電線の運用ルールの見直し、脱炭素化技術・インフラへの投資拡大、カーボンプライシングを筆頭とする横断的施策の導入、分散型社会を見据えた地域・市民レベルの取り組みの促進など、多くの提言を行っています。
IGESは、「2050年脱炭素化社会の実現」を目指すという方針を支持し、その達成に向け今後も貢献してまいります。

 

詳しくは、コメント全文をご参照ください。

「所信表明における『2050年脱炭素社会の実現宣言』に関するコメント」