2020年7月7日
お知らせ
2020 年7月7 日(火)、公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)は、7月3日(金)に経済産業省が明らかにした、「石炭火力発電所の発電量の段階的な削減に向け具体的な検討を始める」という方針について分析を行い、その結果、本方針はパリ協定とは整合していないことが明らかになったとする、コメント(コメンタリー)を発表しました。
本稿は、休廃止が見込まれる設備と、建設中・計画中の大規模な設備について2030年時点の稼働数から発電量、CO2排出量を推計し、統合評価モデル/エネルギーモデルによる結果と比較してパリ協定が目指す2℃/1.5℃目標と整合的であるかどうかを具体的にとりまとめたものです。非効率石炭火力の休廃止を具体的に促すことは歓迎すべきですが、今回の方針は、大型で高効率な石炭火力設備へのリプレースを進めるという従来のエネルギー政策の抜本的な転換を意味するものではなく、パリ協定の長期気温目標に向けても不十分といえるとし、非効率石炭火力の廃止を促すだけではなく、発電部門全体での排出ネットゼロ化を目指した措置が必要となるとしています。
【「非効率石炭火力の段階的廃止」方針に対するコメント 主要メッセージ】
- 非効率石炭火力の休廃止を具体的に促すことは歓迎される。
- しかし、今回の方針は、大型で高効率な石炭火力設備へのリプレースを進めるという従来のエネルギー政策の抜本的な転換を意味するものではなく、パリ協定の長期気温目標に向けても不十分な内容である。
- 休廃止が見込まれる設備は小規模なものが多い一方で、建設中・計画中の大規模石炭火力が稼働することで、2030年時点では50基、3,328万kW程度の石炭火力が残ると推計される。これは、日本の2030年排出削減目標(NDC)が想定する石炭火力発電量よりも約44TWh~102TWh少なく、CO2排出量では約3,700万トン~8,700万トンの削減となる。しかし、パリ協定と整合性のある日本の削減目標についての統合評価モデル/エネルギーモデルシナリオにおける数値と比べると不十分である。
- 50基のうち21基は2030年時点での稼働年数が20年以下であり、2050年まで稼働する可能性がある。この21基(約1,452万kW)のうち、炭素回収技術と相性がよいとされる石炭ガス化複合発電(IGCC)は4基(約150万kW)であり、残りは炭素回収技術の追設を想定しておらず、電力部門から長期的にCO2が排出される状態(ロックイン)が懸念される。
- 今回の方針は、『パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略』に明記された、パリ協定の長期目標と整合的な火力発電からのCO2排出削減や非効率石炭火力のフェーズアウトに向けた取り組みとしては不十分である。非効率石炭火力の廃止を促すだけではなく、発電部門全体での排出ネットゼロ化を目指した措置が必要となる。
コメンタリー全文はこちらから
https://www.iges.or.jp/jp/pub/phase-out-inefficient-coal/ja