2019年11月29日
プレスリリース
公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)の持続可能性ガバナンスセンターは、内閣府と外務省が意見募集した「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針(改定版)(骨子)」に対して、パブリックコメントを提出しました。
安倍首相を本部長とするSDGs推進本部は、SDGs実施のための我が国政府としての実施指針を2016年12月に策定しており、今般、これまでの取り組みを踏まえて、実施指針の改定が行われます。このパブリックコメントでは、これまでの持続可能性に関する政策研究や事例調査などにおける知見をもとに、主に以下の提言を行いました。
- 安倍首相のリーダーシップのもとでSDGs実施指針が策定され、SDGsアクションプランにより取り組みが進められてきたことは大変意義深い。今回、最新動向を踏まえ、国内外の取り組みを加速させるために本実施指針を改定することを歓迎する。
- 日本がSDGsの取り組みを進める上で、日本としての2030年のあるべき姿(ゴール)、具体的に目指す目標(ターゲット)、進捗評価のための指標と、各ターゲットの達成に向けた政府の戦略がないことは、大きな問題と考える1。SDG Compassで言うところのアウトサイド・イン(あるいはバックキャスティング)の視点を踏まえ、日本としてのゴール、ターゲット、指標、戦略を実施指針(改定版)に含めるべきである。
- 日本としてのゴールおよびターゲットの進捗状況を評価する際には、過去からの積み上げ実績、各ゴールやターゲット達成までのギャップを含めて、分かりやすくレポートで示し、進捗を管理すべきである2。このような国レベルの仕組みがあれば、企業を含む各ステークホルダーは国レベルのゴールやターゲットへの貢献度に基づき目標設定や取り組みを推進でき、より大きなアクションを引き出せると考えられる3。
- こうした仕組みを確立する際には、2019年9月に開催されたステークホルダー会議4のような会議に加え、国連が実施するMYWorld2030なども参考に、日本のあるべき将来の姿について国民から幅広く意見を集めるべきである5。また、独立性のある形で、地球の限界(planetary boundaries)内に抑えるための科学的知見の議論の場を設定し6、複数のシナリオを構築の上、それらを検討材料とすべきである。
そのほか、骨子案に沿った詳細なコメントは、以下よりご覧ください。
「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針(改定版)の骨子に関する意見」
<補足>アウトサイド・インとは、これまでの既存の目標や達成度合い(インサイド)の延長線上に目標を設定するのではなく、世界的・社会的なニーズ(アウトサイド)を考慮して、目指すべき目標を設定することを指します。また、バックキャスティングは、将来の理想の姿から逆算して今すべきことを考えることを指します。
- 1. 2030アジェンダでは、第55項目において、各国はSDGsを踏まえつつ、置かれた状況も考慮して独自のターゲットを定めることを求めている。”Targets are defined as aspirational and global, with each Government setting its own national targets guided by the global level of ambition but taking into account national circumstances.”
- 2. 例えばドイツでは、2002年に初めて国家持続可能な開発戦略(NSDS)を策定後、2004年、2008年、2012年には進捗レポートを発行してきた。直近ではSDGsを取り込む形で2016年改訂版を策定している(2018年にも小型のアップデートを実施、次回の進捗レポートは2020年に発行予定)。また、連邦統計局が2年ごとに指標レポートを作成している(2006~2018年まで計7冊)。
- 3. 地域レベルでは、地域に根付く企業が地方自治体の目標を参照してSDGsに貢献する目標を掲げ、その取り組み状況を報告するといった動きもみられるようになってきた。例えば具体的事例として、IGESの以下のウェブページを参照のこと。「IGES、国家レベルの枠組みに準じた中小企業のSDGs進捗レビューを支援~国連ハイレベル政治フォーラムで発表~」
https://iges.or.jp/jp/news/20190717 - 4. https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_007795.html
- 5. 17のゴールのうち、最も重要と考える課題やその状況などを回答するオンライン上のアンケート。詳細は以下のリンクを参照のこと。
https://myworld2030.org/?lang=ja - 6. ドイツでは「2030年持続可能性のための科学プラットフォーム(Science Platform Sustainability 2030)」が科学的専門知識をSDGs実施のために提供している。本プラットフォームは学術界、社会、および政策の間のインターフェースとしても機能している。詳細は、The Federal Government (2018) ‘German Sustainable Development Strategy 2018 Updates’. Berlin: The Press and Information Office of the Federal Government, pp21. を参照のこと。