世界初のVLR特化型情報ハブを開設 ~自治体主導のSDGs目標達成と「誰も取り残さない」世界の実現を支援~

2019年3月25日
プレスリリース

IGES VLR Lab

公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)は、世界の各自治体のSDGs(国連持続可能な開発目標)達成に向けた自発的な活動ならびにレビュー状況を簡単に一覧できる「VLR Lab」を本日開設いたしました。自治体による自発的なSDGsレビューに特化したオンラインでの情報提供は世界でも初めてのことです。 VLR(Voluntary Local Review)とは、自治体が自発的に自身のSDGsへの取り組み状況をレビューし、その結果を他自治体と比較可能なレポートとして公開する国際的なイニシアチブです。

2016年以降、日本を含め100カ国以上の政府がVNR(Voluntary National Review:自発的な国別レビュー)を通じて、自国におけるSDGsを含む2030年アジェンダの進捗状況を報告してきました。その過程で、目標達成にあたっては、より実地に即したボトムアップ型のアプローチを通じて補完する必要があり、国や企業、個人と地域をつなぐ自治体による取り組みや成果、課題の取りまとめが必要であることが国際的に認識されました。

これを受けて2018年7月のHLPF(国連ハイレベル政治フォーラム)にて、IGESならびにニューヨーク市がそれぞれ北九州市、富山市、下川町、ニューヨーク市の4自治体のVLRレポートを発表したところ多くの賛同が得られ、「誰も取り残さない」世界の実現に向けた新たな自治体報告書のモデルとして、現在、VLRに対する国際社会での関心が高まりつつあります。

すでに自治体間でSDGs関連の情報収集や共有は活発化しつつありますが、VLR Labは、先行自治体による事例や実際のレポートに加え、立地や規模、重点目標といった関連情報をオンラインで一元的に紹介することで、他自治体の情報収集ならびに自らの活動や知見のグローバルへの発信をよりスムーズに行えるよう支援するものです。いわば自治体間でのオープンな学びの場としてお使いいただけます。

今回のVLR Lab開設に際し、海外の有識者からも歓迎の声が寄せられました。

UCLG-ASPAC(都市・自治体連合アジア太平洋支部)ベルナディア・イラワティ・チャンドラデウィ事務局長は次のように語っています。

「VLRは地方自治体の持続可能な開発へのコミットメントを示すものです。私どもは、VLR Labがより多くの自治体がこのイニシアチブに取り組み、より理解を深めるきっかけとなることを望んでおります。UCLG-ASPAC としても、地方自治体がVLRにより本腰を入れられるよう、IGESを支援することを楽しみにしています」

包摂的で持続可能なコミュニティづくりに関する第68回国連市民社会会議でも議長を務めたマルーシャ・カルダマSLoCaT(持続可能な低炭素交通パートナーシップ)事務局長は、彼女の18年間にわたる地域や地方自治体との協業経験も踏まえて、次のように解説しています。

「地域や地方自治体との日々の業務は、志を同じくする仲間同士で安心して使えるやりとりや学びの場の提供が、人々や地球に有意義な政策を適用する力を伸ばす強力なツールであると教えてくれました。持続可能性に関する地域や自治体のポテンシャルを最大限に引き出すことは、SDGs達成のための前提条件です」

マレーシア工科大学 UTM低炭素社会研究センターで、低炭素都市のシナリオ策定に携わるホー・チン・シオン教授も以下のように言及しました。

「マレーシアの大半の都市は、持続可能な開発の実践を開発計画に取り入れています。クアラルンプールといった大都市やイスカンダル地区、ペタリンジャヤ、マラッカ、セベランプライの地域当局も同様に、緩和と適応のイニシアチブを組み込んだ気候行動計画や低炭素社会の青写真を描き、また実行しています。私はクアラルンプールや他の大都市が、国内外の専門家の支援のもとこのSDGsレポートの仕組みを使い始める用意はできていると強く信じています。VLR Labは同じ目的意識を持つ自治体間での学びに有益であり、クアラルンプールをはじめとするマレーシアの各都市がSDGsに関連した行動に関する知識を得て、貢献して、共有するうえで、優れたプラットフォームとなることでしょう」

今後IGESでは、VLR実施にあたり必要なレビューガイドラインや評価ツール、研修の提供も予定しています。

VLR Lab(英語)
https://www.iges.or.jp/en/sdgs/vlr/index.html