仏シンクタンク、日本関係者と連携した 日本の株式市場と2℃目標の整合性に関する報告書を公開 -パリ合意に向けた日本の上場企業の対応遅れ、鮮明に-

2018年2月28日
お知らせ

2018年2月28日(水)、フランスのシンクタンクである2℃投資イニシアティブ(2° ii : 2° investing initiative=トゥー ディグリー インベスティング イニシアティブ)は、研究報告書「日本の上場株式市場と気候変動2℃目標との整合性検証」を公開しました。 
本報告書では、東証株価指数(TOPIX)構成銘柄と国際エネルギー機関(IEA)の2℃シナリオとの比較分析の結果、東証株価指数(TOPIX)の構成銘柄のなかで炭素排出量が高い3部門(電力、自動車、化石燃料生産)の多くは、そのエネルギー生産および利用技術において、2℃目標達成に向けたシナリオに整合していないことを明らかにしています。
報告書で使われた方法論は、欧米において200以上の機関投資家などによって試されてきた方法で、今回初めて日本を対象に分析を実施しました。 
本報告書は、藤井良広 一般社団法人環境金融研究機構 代表理事、明日香壽川 東北大学東北アジア研究センター教授、森澤充世CDP事務局ジャパンディレクター・PRIジャパンヘッド、および地球環境戦略研究機関(IGES)とのパートナーシップにより出版されました。

 

【レポートサマリー】

2016年~2021年の5年間で、電力、自動車、化石燃料生産の3部門のうちTOPIX構成銘柄である企業が生産・利用を計画しているエネルギーと技術が、2℃目標に対して不足または超過していることが示された。

  • 電力部門:TOPIX構成銘柄の電力部門における再生可能エネルギーの設備容量は、2℃目標を達成するために必要な設備容量を下回る。一方、ガス、石炭の設備容量は2℃目標を達成するために必要な設備容量を超過する。従って、2021年のTOPIX構成銘柄による設備容量は、2℃ベンチマークと整合しない。
  • 自動車部門:TOPIX構成銘柄の自動車部門が生産を予定している車種はガソリン/ディーゼル車などの内燃機関車(ICE)に比重を置いており、2℃目標と整合する生産量を超過している。一方、ハイブリッド、電気自動車といった低炭素車種の生産は2°C目標と整合する生産量を下回る。したがって、TOPIX構成銘柄による自動車生産は、2℃ベンチマークと整合しない。
  • 化石燃料生産部門*:TOPIX構成銘柄の化石燃料生産部門は、ガス及び石油製品生産(石炭生産は含まれない)の比重が大きく、2021年時点でのガス及び石油製品の生産は2℃目標と整合する生産量を超過している。したがって、TOPIX構成銘柄による化石燃料生産は、2℃ベンチマークと整合しない。

電力、自動車、石油・石炭化石燃料生産*の3部門は時価総額の点ではTOPIX構成銘柄全体の25%を占めるのみですが、炭素排出量の点では大部分(約70-90%)を占めており、気候変動の文脈で、最も対策が必要と懸念される部門です。そのため、2℃ベンチマークとの不整合は、TOPIXインデックスが全体として気候変動2℃目標に整合していないことを示唆しています。結果として、日本の上場株式市場を通じて日本経済に投資する金融機関の投資行動は気候変動2℃目標と合致せず、将来、気候変動における2°C 目標の閾値を超えることによるリスクがあることを示しています。

 

「日本の上場株式市場と気候変動2℃目標との整合性検証」

(1.7MB 日本語翻訳概要版)

「日本の上場株式市場と気候変動2℃目標との整合性検証」

(8.6MB 日本語翻訳版)

「日本の上場株式市場と気候変動2℃目標との整合性検証」

(3.1MB 英語版)

* 化石燃料生産部門は、TOPIX上の分類ではなくレポートで独自に分類したものです。

 

【2° 投資イニシアティブについて】

2° 投資イニシアティブ(2° ii/2° investing initiative=トゥー ディグリー インベスティング イニシアティブ)は、金融セクターを2℃目標と整合させるために、複数のステークホルダー・シンクタンクと共同している機関です。2° iiの研究は、金融機関の投資プロセスを気候目標と整合させることを目指しています。金融機関がいかに気候変動に配慮しているかを測定するための指標とツールを開発し、また、金融資本をエネルギー移行にシフトさせるための規制と政策インセンティブを促進しています。2° iiは2012年に設立され、パリ、ロンドンおよびニューヨークにオフィスを構えています。2° iiの研究は無料で提供されており、研究の直接的または間接的な財政支援を求めるものではありません。