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電力需要・電源設備容量が2018年度実績値又は2030年度エネルギー需給見通し(以下、2030需給見通し)見込値と同量を想定するシナリオに対して、発電コスト検証ワーキンググループ(以下、発電コスト検証WG)が想定する燃料費用及びCO2対策費用を発電ユニットごとに課す条件を与えて、実潮流に基づく電力系統運用(1時間毎の価格シグナルを用いたメリットオーダー方式による広域電力系統運用)をシミュレーションすると、2018年度実績値や2030需給見通し見込値よりも石炭火力の発電電力量が小さくなる代わりに、ガス火力の発電電力量が大きくなることが確認された。
そのため、2030年度までに再稼働できる原発の基数が2030需給見通しの見込値よりも小さくなっても(本分析では、2030需給見通しの3割の原発が再稼働するシナリオと原発が再稼働しないシナリオを想定)、次の条件の下で実潮流に基づく電力系統運用がなされると、2030需給見通しが見込む電力部門からのCO2排出量(219MtCO2)以下に抑えられることが示された。
〇再エネの導入量を太陽光発電協会や風力発電協会が示す目標値(2030需給見通し見込比、太陽光は6.2%増、陸上風力は45%増、洋上風力は40%増)まで促進させる。
〇発電コスト検証WGが想定するCO2対策費用を発電ユニットごとに課す。
〇電力需要を2030需給見通しの見込値より5%減少させる。
実潮流に基づく電力系統運用の下で、再エネの導入量を太陽光発電協会や風力発電協会が示す目標値まで促進させても、2030年度までに整備予定の地域間連系線や地内基幹送電線を含む送電設備の運用容量の制約が、風力・太陽光発電の出力抑制に与える影響は限定的であることが確認された。今後再エネ導入拡大に向けて、少なくとも地内基幹送電線の設備容量は2030年度までは大きな制約にならないことが示唆される。
実潮流に基づく電力系統運用の下で、電力部門からのCO2排出量を2030需給見通しで見込まれる219MtCO2以下に抑える場合、既存の熱効率が低い石炭火力のみならず、2030年度までにリプレース・新設される石炭発電ユニットの8割が発電事業の経済性を失う可能性があることが示唆された。
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