地方自治体の気候災害に対する適応能力と感受性の評価―現在の防災対策レベルと将来の適応策の必要性 に基づく推定―

Discussion Paper
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温暖化に伴う水害の激甚化を受けて、地方自治体において防災・減災対策と適応策を統合し、適応能力と感受性により構成される脆弱性を低減させることが急務である。しかし、適応能力は多様な社会経済的な要素を含むため、政策上どの構成要素が重要であるかに関する包括的な検討は限定的である。そこで、本稿は、アンケート調査を実施し、地方自治体の現在の防災対策実施状況(ハード・ソフト・転換策の合計44対策)と各対策に関する将来の適応策の必要性認識に基づいて適応能力と感受性の構成要素の重要度を評価した。結果として、重要度が高く評価された適応能力要素は、地域コミュニティの「インフラ」(防災用)、「教育」(自主避難判断力、危険認知度)、「情報」(監視警戒力、情報伝達力)、「コミュニティガバナンス」(避難誘導力)、並びに、適応策の促進に不可欠な、「行政制度」における防災体制整備度(連携体制を含む)、気候変動対応学習能力、科学的予測能力であった。感受性に関して、居住地・避難所・遊水地・森林整備といった、まちの構造や自然環境に係る「土地利用」や災害リスク特性に係る「建物」の重要度が高く評価された。今後、こうした要素を適切にモニタリング・評価する指標を整備するとともに、各自治体・地域コミュニティの状況に応じて、重要度が低く評価された要素を強化する防災・適応策の実施拡大と関連指標の整備が望まれる。最後に、適応策の重要度の評価結果を候補指標に関するアンケート調査結果と比較検討し、上述の方法論の可能性と課題を考察した。

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